若き侍のチャレンジが終わった。
攻めても攻めても好機を決め切れない。逆に一瞬の隙を突かれまさかの失点。悔いしか残らない敗戦だった。
U-20W杯ノックアウトステージに駒を進めた日本はベスト8を賭け韓国と対戦した。アジア勢同士の早々の対戦に「当たるのならもっと上で」そんな雰囲気は少なからずあったはず。なぜなら互いに世界の列強国を退けてのノックアウトステージ進出だったからだ。「同じアジア勢にだけは負けたくない」その熱い想いとは裏腹にピッチ上ではクールな戦術戦が繰り広げられた。
韓国はアルゼンチン戦のメンバーをそのままに[5-3-2]を採用。自陣深くにディフェンスラインを形成しゴール前にブロックを敷く。相手を引き出しておいて、ボール奪取から一気にカウンターを仕掛ける。テクニシャンのイ・ガンインにボールを預け、長身のオ・セフンがフィニッシュ。韓国の狙いは明快だ。
対する日本はベストメンバーを組むことができなかった。システムは[4-2-3-1]イタリア戦で負傷した田川亨介と斉藤光毅は既に帰国の途へ着いており、数名の選手はコンディション調整に問題を抱えていた。中3日の韓国に対して中5日で試合に臨んだ日本だがアドバンテージを生かすことはできなかった。
しかし前半はボール支配率72%を記録した日本が一方的に主導権を握った。引いた相手にボールを持たされる格好になった日本だが、郷家友太と西川潤が頻繁にポジションチェンジを行うなど相手守備網をかく乱、多種多様のアイデアで相手ゴールに襲いかかる。ボールロストにも齊藤未月が持ち前のアグレッシブなコンタクトでカバー、コンパクトな陣形を保つディフェンス陣と挟み込むような形で効率よくボールを回収し前線の2人に仕事をさせない。
劣勢の韓国が先に動く。後半開始からディフェンダーを一枚削り前線の選手(11番)を投入。システムを[4-4-2]へ変更し攻勢に打って出る。ドリブルを武器に右サイドを陥れる11番の存在に日本は手を焼いた。
それでも後半5分、FKからのセカンドボールを齊藤未月が後ろ向きのままルーズにゴール前に放り込むと、そのボールを宮代大聖合わせる。そのボールがこぼれた所に郷家が押し込みゴールネットを揺らす。しかしこのシーンはVARの介入によりオフサイド判定、ゴールは取り消されてしまう。
11番の投入から息を吹き返した韓国は63分、18番に代えて7番を投入。今度は左サイドを活性化させる。対する日本は68分、郷家に代わり中村敬斗をピッチに送り込む。攻勢を仕掛けた韓国だがそれでも日本は優勢は揺らがない。 CKからの流れから中村が決定機を迎えれば、宮代の決定機はゴールポストに弾かれてしまう。あと一歩のところまでゴールに迫った日本だがそれでも得点には至らない。
こうして迎えた84分、それは何でもないシーンだった。「一生頭から離れることのない場面」こう振り返った菅原由勢は自陣深い右サイドでボール奪取、そのボールをつなごうとショートパスを選択。このボールが相手に渡ってしまいゴール前にクロスを放り込まれるとオ・セフンがヘディングシュート。たった一度のミスが決勝ゴールを招いてしまった。
土壇場でゴールを献上してしまった日本は88分に原大智と東俊希を同時投入、打開を試みるも万事休す。試合はそのまま0-1で韓国に敗戦、若き日本の世界の舞台でのチャレンジは終わった。
菅原のミスを咎めるつもりはない、決め切れなかった攻撃陣にも不満はない、ただそれもサッカーだということ。菅原は間違いなくグループリーグ突破の立役者の一人だったし、攻撃の柱田川、斉藤の離脱にもかかわらず前線の選手たちは華々しく躍動した。
サッカーにたらればは存在しないが、もし久保建英や安倍裕葵がいれば、もし橋岡大樹がいたらと、つい思いを巡らせてしまう。本大会がA代表の活動期間と被ってしまったこと、一年後に東京オリンピックが控えていること。さまざまな条件下でこの大会に臨んだU-20日本代表だが、できればベストメンバーで臨む今大会を見たかった。
しかしそれは来年の東京オリンピックの舞台まで取っておこう。各カテゴリーで各々の舞台で活躍する選手たちが結集した時、日本は世界の頂に立つ。それが現実となる可能性を今大会で感じた。
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