明治安田生命J1第19節 湘南ベルマーレ3-1ヴィッセル神戸(BMWスタジアム/14246人)
20分 古橋亨梧(神戸)
69分 山崎凌吾(湘南)
74分 杉岡大暉(湘南)
78分 フレイレ(湘南)
90分間、止まることなく走る走る。”湘南らしさ”溢れる気持ちのこもったナイスゲームだった。
6試合ホームでの勝利から遠ざかっている湘南は前節、連敗脱出に成功した名古屋戦の勢いそのままにスタメンを入れ替えずに臨んだ。
フォーメーションはデフォルトの[3-4-2-1]。前節に引き続き、戦列復帰した梅崎司、サイド職人古林将太が連続スタメン。前線からのハイプレスでボール奪取を試みショートカウンターで相手ゴールに迫る。いつも通りの展開で上々の立ち上がりを見せた。
攻撃を牽引していたのはツーシャドーの2人、武富孝介と梅崎だろう。これまではボール奪取からワントップの山崎凌吾へくさびを入れる一辺倒の攻撃が目に付いていたが、この試合はマークが集中する山崎を囮に後ろの2人が巧みな動き出しでボールを引き出していた。一方が裏へ抜け出せばもう一方で後ろに下がりボールを受ける。つるべの動きで相手ディフェンスを手玉に取る、この形はいわゆる”湘南スタイル”の進化系だろう。
もうひとつ湘南の攻撃に勢いをもたらしたのはウイングバックの杉岡大暉と古林だろう。連敗中は縦への意識が強すぎて強引な中央突破が多くみられたが、名古屋戦での先制のシーン同様に長期離脱から復帰したボランチ金子大毅の好配給により両ワイドが活性化。特に右サイドの古林は序盤から数多くのクロスでチャンスを演出していた。
それでも先制したのは神戸の方だった。3バックの急所、前がかりなサイドバックの背後のスペースを伺う神戸は20分、自陣後方でボールを受けたイニエスタがそのスペースに走り込む古橋亨梧の足元にピタリと合わせるロングフィードを披露。このパスを古橋がカットインから強引に振り抜きゴールに突き刺す。神戸にとっては狙いどおり、湘南にとっては”分かっちゃいるのにやられてしまう”嫌なやられ方を喫し暗雲が立ち込める。
しかし、その後も湘南ペースは変わらなかった。前節は身体を張ったディフェンスで奮闘した3センターバックの3人、山根視来、フレイレ、大野和成だったが、この日の3人は隙あらば前線にボールを持ち出し積極的に攻撃に参加する。前半に放った大野の惜しいシュートシーンをはじめ山根もフレイレも。ディフェンダーの攻撃参加は湘南のひとつの特長であり、「なぜお前がここに!?」といったシーンが多く見られるのは好調の証に違いない。
ディフェンス陣の積極的な攻撃参加も影響してか、シュート23本(枠内13本)を放った湘南には確かな勝利への手応えがあった。
そして怒涛の9分間が始まった。
69分、金子からのパスを受けた古林が山根とのワンツーで右サイドを突破。緩急つけた鋭い飛び出しで神戸ディフェンスを翻弄。古林の高速クロスにファーサイドに流れた山崎がピタリと合わせ湘南が同点に追いつく。
72分、大仕事をやってのけた古林に代わり、タイプの異なる鈴木冬一がピッチに立つと、その2分後、金子からのパスを右サイドで受けた鈴木冬が今度は縦ではなく中央に持ち出しサイドチェンジ。逆サイドでボールを収めた杉岡が迷いなく右足を振り抜きゴラッソ。鮮やかな弾道がゴールネットに突き刺さり湘南が逆転に成功。
78分、梅崎のFKをファーサイドからフレイレが飛び込みヘディングシュート。終始気迫溢れるプレーを見せていたフレイレの魂が宿る一撃で試合を決定づけた。
試合後、曹貴裁監督は「出来過ぎだった。」と振り返りつつも、勝利の要因に”原点回帰”を挙げていた。そして「戻ることは後退ではない。」とつづける。自分たちらしさを取り戻すために、選手とともに過去の試合をビデオで振り返ったことを明かした。
「選手が一番自信のあるものが、一番苦しい時に出せる、それが監督として一番大事なこと。」苦しみを糧にらしさを取り戻した湘南の反撃は止まらない。
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