J1 2nd 第13節 柏レイソvs名古屋グランパス(日立台)
▼初めての”柏熱地帯”
何故そのチームを応援するのか?その理由は、生まれ故郷のチームだということ、或いは居住地のチームであることが多い。自分と所縁のある地域のチームを応援したい。その想いが昂ぶると、やがてそれは”誇り”へと発展する。
日立台のホームゴール裏”柏熱地帯”の住人は皆、”誇り”を持った人ばかりだ。チームと共に勝利を追いかけ、どんな時でもチームと共に歩む覚悟がある。
その熱狂ぶりは当事者意識を高め、部外者を近寄らせない。柏熱地帯は独特の排他感を漂わせている。その雰囲気にボクは密かに憧れを感じていた。
▼ハンパない熱狂ぶりに初めは戸惑うも。
そして今回、ボクは意を決して初めて足ん踏み入れることにした。何故覚悟を持てたのかというと、入籍により本籍地を柏市に移したから。晴れて柏の市民権を得たボクは、黄色のレプリカを着て、タオルマフラーを巻き、”柏熱地帯”2階席の端に荷物を置いた。
とにかくピッチとスタンドの距離が近い。J随一の日立台の臨場感は、ゴール裏でも決して引けを取る事はない。むしろピッチサイドよりもより遥かにプレーの迫力を感じることができる。
そう感じた理由はおそらく、其処彼処から叫ばれるサポーターのチャント。そして、選手の意識は明らかにゴール裏に向いてるからではないだろうか。サポーターが繰り出す大声援は、間違いなく選手に届いている。柏熱地帯の住人は、まさしく選手と共に戦っていたのだ。
ボクは、うろ覚えではあるが、周りのサポーターに呼応するようにチャントを叫んでみた。初めこそ少し照れ臭さかったが、12分、工藤のファインゴールが決まると、その恥じらいは一気にぶっ飛んだ。
ゴール裏に巻き起こった歓喜は、瞬く間にゴール裏に一体感をもたらしてくれる。その一体感を共にした者だけが柏熱地帯の住人になれるのだ。ボクの恥じらいはいつの間にかなくなっていた。
▼サポーターはキャストなんだ!
柏熱地帯から見るアウェイスタンドの風景もまた楽しい。今節でJ1 600試合出場という前人未踏の記録を打ち出した楢崎へ大声援を贈る名古屋サポーター。対岸から聞こえてくる大音量のチャントもまた凄まじく、それは明らかにホームスタンドを意識したものだった。
互いを意識した両ゴール裏から沸き起こるチャント合戦。いざその当事者側に立ってみて改めて気づいたことがあった。
サポーターはゲストではない。サポーターにはキャストという側面があるのだ。
サポーターが創り出す熱狂は、スタジアムでの観戦価値を確実に高めているという事実、そして、サポーターは、チームにとってなくてはならない存在であること。そして、Jリーグを支えているのは紛れもない、彼らサポーターなんだということ。
だからもし、そのチームを後押ししていなかったとしても、もし、自分と所縁のある地域のチームがあるのならば、是非、そのチームのゴール裏に足を運んで欲しい。
愛するチームがあることが、どれだけ人生を豊かにしてくれるか。
試合展開に一喜一憂する柏熱地帯の住人たちの表情を目の当たりにして考えていたことは、概ねそんなことだった。
勝村大輔