ロシアW杯アジア2次予選 シリアvs日本
▼本田の先制PK
2次予選最大の山場。世間ではこの一戦をあたかも大一番のように騒いでいるようだが、所詮、相手は格下に過ぎない。完勝という結果を持って世間の批評を黙らせたい、ハリルホジッチの表情から並々ならぬ闘志を感じたのはきっと気のせいではないであろう。
この日の先発は、前節アフガニスタン戦とほぼ同じ。負傷明けの槙野が復帰し、前節大活躍の原口はそのまま左サイドハーフに入った。
前半、日本は苦戦を強いられたかに見えた。シリアの果敢なプレスに苦しみ、長く伸びた芝の上ではボールは走らない。持ち前のパスワークは、アウェイの洗礼により封じ込められた。
パスコースを探すディフェンダーの姿や、ボランチのパスミスが目立つ。停滞気味の前半戦のように映ってだが、動き出しのタイミングを計り、相手の隙を窺う、冷静に勝機を見極める、格上ならではの試合展開だったのではないだろうか。
その証拠に、後半の日本は的確に相手の急所を狙い続けた。54分、先制ゴールを生み出したシーンは流石の一言に尽きる。
吉田のカットからボールを受けた長谷部が、右オープンスペースに走り込む岡崎にロングフィード、相手ディフェンダーが堪らず倒しPK獲得。
最短距離でゴールを陥し入れる、狙い通りの展開、そして岡崎のPKを誘う動き、相手ゴールキーパーの動きを冷静に見極めた本田のシュートも鮮やかだった。このシーン一つとっても日本は、力の違いを如何なく見せつけていた。
前半、影を潜めていた香川も後半は違った。この日、中央でのプレーを好む本田に合わせ、流動的にポジションを取っていた香川だが、交代出場した宇佐美が入ると更に効果的な動きを魅せる。2点目のシーンは、左サイドから崩した香川のドリブル突破から生まれたゴールだった。
これまでと現在の違い、それは、自分たちのサッカーに拘るのではなく、相手の出方を冷静に見極める。そして、相手の急所を効果的に突く。強者のサッカーが出来ている点ではないだろうか。
引いた相手にゴールが奪えない、あたかも得点力不足こそが問題かのように言われていたが、目的は得点ではない、勝利することなんだということを、この試合の勝利で改めて気づかされた。
そしてこの日、新たな期待を抱かせてくれる選手がいた。香川に代わり途中出場した清武だ。怪我明けから、ブンデスリーガでも活躍する清武は、この日も、短い時間ながら、3点目の起点となったプレーをはじめ随所に存在感を示していた。
前節の原口の台頭に続いた清武、宇佐美も途中出場ながら輝くプレーを魅せてくれた。これまで本田、香川の二枚看板に頼っていた日本の攻撃陣に厚みを増したこと。アウェイ2連戦を経て日本代表は更に逞しくなった。
挑戦の舞台はアジアではない、我らが目指すのはロシアでの飛躍なのだ。そのためにも日本は、アジア相手に圧倒しなければならない。二次予選でつまづいてる暇はないのだ。
勝村大輔