「俺がヒーローになってやる!」
劇的決勝ゴールを決めた李忠成のインタビューが印象的だった。
予感はあった。
それはどちらかというと嫌な方だった。
天皇杯準決勝 浦和レッズvs柏レイソル
▼リーグ戦の雪辱に燃える浦和レッズ
リーグ戦と同様の不動のスタメンを揃える柏に対して、対戦相手に応じて流動的にメンバーを入れ替える浦和は、ワントップに屈強な外国人ストライカー、ズラタンを起用した。
試合は序盤から終始浦和ペース。柏木がボールを散らし、関根が右サイドを駆け上がり、中央でズラタンが待ち構える、その背後を狙う武藤が果敢にペナルティーエリアに飛び込む。いつ得点が生まれてもおかしくない展開が続いた。
一方の柏は、大谷、茨田らが中央で体を張り、5バック気味に敷いたディフェンス陣が後方を固め、前線の工藤と武富が数少ない好機を伺う。そして、前戦からの好調を維持するクリスティアーノが果敢にドリブル突破で仕掛ける。
▼味スタをホーム化したレッズサポーター
幾度となく訪れる決定機を決めきれない浦和に、前半39分、アクシデントが起こる。司令塔の柏木の負傷退場だ。そんな日に限って…。数々の悪夢を共にしてきたレッズサポーターの多くは、きっとその再来を恐れていたに違いない。
結局、試合はそのままスコアレスでタイムアップ。試合は延長戦に突入した。ペトロヴィッチ監督は、このタイミングで、ズラタンを諦め、興梠と李、2人のセンターフォワードを同時投入する。
攻撃陣を増やし猛攻を仕掛ける浦和は、引き続き関根が右サイドを仕掛け、中央にクロスを放り込むも、一辺倒の攻撃では、柏ディフェンス陣を混乱に陥れることはできない。こうして迎えた試合終了3分前、ついに浦和が均衡を破る。左サイドに流れた梅崎が中央にクロス、そのクロスを李が頭で押し込み、これが決勝ゴールとなった。
▼李の劇的ヘッドが決勝点に
この劇的ゴールで今大会3試合連続得点を記録した李は、「この大会をボクの大会にしたい」と言い切る。試合後のインタビューで、強気の発言を繰り返す李忠成を見て、あのオーストラリア戦の決勝ボレーを思い出したサッカーファンも多いのではないか。
アジアカップのベスト8敗退、アギーレの解任、W杯アジア予選での苦戦。低迷期元年と囁かれる日本サッカーにおいて、今、一番必要なのは、Jリーグ得点王に輝いた大久保や、この日の決勝ゴールを挙げた李のようなエゴイストの台頭ではないか。若手の台頭を望む傾向が濃い日本サッカー界だが、来年は、Jリーグで奮闘するベテラン勢の更なる躍進に期待したい。