手綱を握る、手綱を緩める。新戦力を躍動させたキャプテンシー
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ロシアW杯アジア二次予選 日本代表vsアフガニスタン代表の一戦は、岡崎の先制点を皮切りに、日本の攻撃陣が爆発。5-0の圧勝でアフガニスタンを下し、最終予選進出を手中に収めた。
ロシアW杯アジア2次予選 日本vsアフガニスタン
▼スタメンを大幅に入れ替えて臨んだハリル日本
この試合が、2016年初の代表戦ということもあってか、公式戦とはいえ、相手が格下のアフガニスタンだったこともあってか、サポーターの関心は、試合の勝敗というよりは、ハリルホジッチ監督が送り出す先発メンバー、そして監督の采配にあるような気がしてならない。
その理由は、監督、戦術は違えど、2010年の主力メンバーからさほど変化のない現メンバーに、そろそろ世代交代を促す気運も高まっているからであろう。本田、香川、両エースを中心としたこれまでの戦術から、いかにして脱却するか。
ハリルホジッチが出した答えは、GKに代表初先発の東口を起用したこと、そして、攻撃陣を4枚のうち3名の新戦力を登用したことだった。
▲日本代表は、先発を大幅に入れ替えた臨んだ。
これまで通りを変える、その上、新戦力を登用する。サッカーに限らず、組織に変化を加えるというチャレンジには、それ相応のリスクが伴うものだ。
ハリルホジッチが行ったリスクマネージメントは3つ。
・相手が格下であること。
・守備陣を固めたこと。
・キャプテンをフルタイム出場させたこと。
この3つには、新戦力が躍動し易くなる要素が含まれている。
まずは、相手が弱いという点だ。勝てる確率が高い中での登用は、精神的リスクの軽減につながる。先制点さえものにできれば、比較的楽に展開できる。おそらくハリルホジッチにはこのような公算があったに違いない。
そして守備陣をこれまで通りに配置することで、コンビネーションを高め、失点のリスクを最小限に抑える。守備陣が安定することで、攻撃にリズムをもたらすという狙いだ。
そして最も重要なのが、試合を通してキャプテンに権限を委ねたことだ。
手綱を握る、そして手綱を緩める。キャプテン自らが後方からの指示、サポートすることで、新戦力は一気に躍動した。
それを象徴する印象的なシーンがあった。前半28分、相手選手の治療にあたる時間を利用して、キャプテン長谷部を中心に全員がグラウンド真ん中にに集まり、即興ミーティングが行われたシーンだ。
▲長谷部を中心に試合の合間に行われたミーティング
このミーティングを皮切りに攻撃陣が一気に爆発した。トップ下に入った清武が、前線でボールを受けるシーンが加速度的に増え、それにつられるかのように、岡崎、金崎、原口が、自由にポジションチェンジを繰り返し、相手ディフェンスを混乱に陥れる。その後方を見事に柏木がリカバリーする。
バランスを保つために手綱を引き、機を伺い一気に手綱を離す。
途中から加わった、香川、ハーフナー・マイク、小林悠も、それぞれを見事に躍動させたのは、長谷部のキャプテンシーだったのではないだろうか。
▲この日、大活躍した清武
組織に変化を与える際に必要なこと、それは、思い切りの良さではない。細部にまで行き届くリスクマネージメントがあってこそ。そして現場責任者に権限を委ねることである。
チームに必要なのは、絶対的エースではない、絶対的リーダーの存在なのだ。