天皇杯4回戦 川崎フロンターレ3(4ー1)3浦和レッズ
まさに死闘だった。
突き放されては追いすがる。若手主体の川崎が驚異的な粘りを見せる。延長戦後半ロスタイム、土壇場のゴールでPK決着へ。立て続けにキックを失敗した浦和の三冠の夢が消えた。
日本代表戦との日程の兼ね合いから、守護神西川とチームリーダー槙野が不在の浦和。槙野の位置に宇賀神が下がり、第二GKの大谷が代わりを務める。誰が出ても遜色ない充実の戦力の浦和。
対する川崎は、負傷の小林悠に加え、キャプテン中村憲剛、大島僚太の主力3人を欠き、若手主体のメンバーで臨んだ。
この試合の明暗を分けたターニングポイントが幾つかある。一つ目は浦和ミシャ監督の荒治療だ。0ー0で折り返した前半で高木を下げたこと。そして、これまで不動だった攻撃の要、柏木を後半開始早々に守備的な青木と交代させたことだ。
その理由は、若手主体の川崎の果敢なチャレンジによる影響ではないだろうか。この日の川崎の中盤はいつも通りではなかった。主力が出場していた時の華麗なパスサッカーというよりは、取られたボールは何としても取り返す、この日キャプテンマークを巻いた大久保のファイトに引っ張られるように、走りまくっていた印象があった。
荒治療は功を奏す。守備的MF青木の投入がディフェンスの安定をもたらし、より前掛かりに押し寄せる川崎の背後を、浦和攻撃陣が虎視眈々と伺う。そして遂に待望の先制点が生まれる。71分、森脇のロングパスに反応した興梠が巧みなトラップでGKをかわし無人のゴールへ流し込む。
後がない川崎は三枚目のカードを切る。攻撃の切り札森本の投入で再び川崎は息を吹き返す。森本が前線をかき回すことで、三好がボールに触れる機会が増える。同点ゴールの起点は、この三好の突破によるものだった。
その後も一進一退の攻防が続く。88分、オウンゴールを献上してしまった川崎は再び窮地へと追い込まれるが、終了間際のロスタイムに森本が相手の動きを冷静に見て同点ゴールを叩き込む。森本投入というターニングポイントを好機に変えた川崎の粘りで試合は延長戦へ。
延長前半97分、またもや先手を打ったのは浦和の方だった。CKのこぼれ球から一気にカウンターを仕掛ける。途中出場の青木が長距離を駆け上がり、李とのパス交換から自らゴールに叩き込む。
これで万事休すかと思われた川崎だが、足をつる選手が続出する浦和とは対照的に、若手主体のチームのスタミナは無尽蔵だった。この後、疲れ知らずの若い川崎が果敢に攻撃を繰り出し続けるが、このままタイムアップかと思われた試合終了3分前、この日一番の輝きを放ったのは19歳の三好だった。この時間帯になっても精度の落ちない完璧な曲線のアーリークロスを放り込むと、それを板倉が折り返し、最後はエドゥアルドが頭で合わせて同点ゴール。川崎が三度追いすがる。
PK戦に突入した時点で、勝者は決まっていたかのような、そんな雰囲気がスタジアムにはあった。
それは後からわかったことだが、「自分で行きました。」という、2人目のキッカーを務めた三好のインタビューが物語る通り、最初のキッカー大久保をはじめ、この日の川崎からは「絶対に勝ちたい!」という気概が漂っていた。
この空気感はスタジアムにいる者にしか、120分間彼らのファイトを目の当たりにした者にしか分からない感覚かもしれない。
立て続けに失敗した浦和に対して、全てのキッカーが成功した川崎が死闘を制した。
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