「これが浦和。」なのか。
この日の埼スタは、6万人の大観衆で埋め尽くされた。
浦和レッズは、10年ぶりの日本一を賭けたチャンピオンシップ決勝戦、鹿島アントラーズとの2ndレグに臨んだ。
2ndステージ優勝、年間勝ち点首位。今シーズン圧倒的な強さを見せつけていた浦和。1stレグを1-0で先勝し、引き分け、あるいは1stレグ同等のスコアで終えても優勝が決まるという、浦和俄然優位な状況の中、2ndレグは始まった。
対する鹿島は、シーズンを3位で終えたものの、2位川崎とのチャンピオンシップ準決勝を制し下剋上を果たした。
「嫌な予感はあった。」川崎戦で値千金のゴールを決めた金崎の復調、負傷明けの柴崎が復帰、今シーズン湘南から加入し日本代表に選出されるなど活躍著しい永木、そして、”勝ち方”を熟知している小笠原、曽ヶ端ベテラン勢。1stステージ優勝後、主力のカイオが中東UAEの強豪アル・アインへ移籍してから低迷が続いていた鹿島だが、鈴木優磨ら若手の台頭で見事に息を吹き返した。
本来の姿を取り戻した彼らはまるで圧倒的劣勢を楽しんでるかのような不敵な雰囲気があった。
「先制さえすれば。」序盤から攻勢に打って出る浦和は、7分、右サイドの深い位置へ放り込まれた関根のスローインを受けた高木が中央へクロスを放つ。フリーで待ち構えてた興梠が豪快なボレーを叩き込む。この鮮やかな一発で、スタンド中の浦和サポーターは優勝を確信した。
幸先良く先制する浦和だが。
早い段階でスコアが動いた試合は、時として通常を普段を狂わせるものだ。「追加点を奪い早々に決着をつけたい。」更に前掛かりに攻めいる浦和は、鹿島にとって格好の餌食となってしまった。
40分、鹿島得意のカウンターが発動する。前線でもたつく浦和攻撃陣を囲い込みボールを奪うと、すぐさま右サイドを駆け上がる遠藤にロングボールが入る。宇賀神との競り合いに勝った遠藤は狙いを定めてクロスを上げる。ボールは、ニアに切り込んだ柴崎の頭上を越えてファーサイドに。戻りきれない浦和ディフェンス陣は金崎をフリーにしてしまう。金崎のダイビイングヘッドが決まり鹿島が同点に追いつく。
ゴール裏が熱狂が選手を後押しする。
59分、高木から青木へ。61分、関根からの駒井。71分には興梠からズラタンに。立て続けの選手交代に、ペトロヴィッチ監督はいったいどんなメッセージを込めたのだろうか。
対する鹿島は、58分、遠藤から鈴木優磨へ。73分には、小笠原を下げ守備的な伊東を投入。更に守備を固め、カウンターから相手の背後を伺う。石井監督には明確な意図があった。
こうして迎えた79分、またしても浦和ディフェンス陣の背後を狙ったパスが放り込まれる。走り込む金崎の更に前に、宇賀神を振り入り右サイドから駆け上がってきた鈴木優磨がボールを持つと、そのままペナルティーエリアに侵入する。後ろから追い掛ける槙野が堪らず倒してしまいPKを獲得。金崎のPKで遂に鹿島が逆転に成功する。
残り15分、得点を奪うほかなくなってしまった浦和だが、全てカードを使い切り、打つ手はなかった。試合巧者の鹿島がこのまま逃げ切り大逆転で2016年Jリーグ年間チャンピオンに輝いた。
勝利のコレオが見たっかた!!
1stレグを1ー0で勝利し、2ndレグを1ー2で落とした浦和。アウェイゴールの得点差により惜しくも優勝を逃してしまった。ルールだから仕方がないと言われれば、それまでだが、3位鹿島との勝ち点を15ポイント引き離したリーグ戦の34試合は、いったい何だったのだろうか。
浦和レッズにとって、この敗戦は悲劇の一言に尽きる。しかし不条理にも悲劇が似合ってしまうのも浦和レッズ。この負の歴史が更にチームとサポーターの結束を固めるだろう。誇り高き浦和がシャーレを掲げる日もそう遠くはなさそうだ。
~PRIDE OF URAWA~