新年明けましておめでとうございます。
元旦に、由緒正しき大会の一戦を観戦する。毎年恒例の天皇杯元旦決勝。96回目を迎えた決勝戦の舞台は大阪へ。建設中の新国立競技場の代替え地として昨年新設された吹田スタジアムで行われた。大阪での開催は実に56大会ぶりらしい。収容人数4万人を越える、しかもサッカー専用スタジアムでの開催はとても意義深いものがある。
近年、サッカー専用スタジアムの必要性を叫ぶ声をよく聞くようになった。日本には埼玉スタジアムや豊田スタジアム、県立カシマサッカースタジアムなど、まだまだ少数ながらも大型のサッカー専用スタジアムがいくつか存在する。しかし、吹田スタジアムにはそれらをはるかに凌駕する臨場感がある。スタンドとピッチとの距離の近さ、観戦し易いスタンドの傾斜、そして歓声を効果的に反響させる大型の屋根。サッカー観戦の魅力を最大限に体感できる素晴らしいスタジアムは必ずや日本サッカーの発展には欠かせない。今回の決勝戦で、会場のみならずTV観戦からでも観戦者はその迫力を目の当たりにすることができたのではないだろうか。
さて、決勝のカードは鹿島アントラーズ対川崎フロンターレ。昨年11月23日以来の対戦である。当時は年間勝ち点2位の川崎が、3位鹿島を迎え撃つ格好となるはずの対戦だったが、一瞬の隙を見逃さない金崎のゴールで鹿島が下剋上を果たした。以来、好調を維持し続ける鹿島は、チャンピオンシップ決勝で浦和を破り、その後に行われたCWC(クラブ・ワールドカップ)でも各大陸王者を次々と倒し、決勝戦ではあのレアルマドリードを慌てさせた。
そして迎えた天皇杯決勝戦。川崎にとって悲願のタイトル奪取の相手は奇しくもチャンピオンシップのリベンジマッチとなった。対する鹿島はクラブ創立以来19個目のタイトル奪取に燃える。美しいパスサッカーを貫く川崎相手に、堅守速攻でしたたかに勝利をもぎ取る鹿島。両者の対決は戦前の予想通りに展開する。
“鹿島る”という言葉をご存知だろうか。リードする試合終盤にボールキープにより時間を稼ぐ。ある意味卑怯なプレーと罵られるこの”鹿島る”は、鹿島に対して敵意剥き出しの言葉とも受け止められる。しかし、この”鹿島る”という勝負へのこだわりこそが今の日本代表に求められることかもしれない。
一方、あくまでも華麗なパスサッカーを披露する川崎。小林悠が決めた同点ゴール、そこに至るまでの展開もまた美しかった。絶対的エースの大久保とJリーグMVPの中村憲剛を中心とする川崎のサッカーは、その依存度がかえって足かせになってしまうという側面がある。登里に代えて三好を投入するまでは、おそらく風間監督のプラン通りであることは想像できる。しかし、劣勢を覆す手立てが川崎には欠けていた。効果的な打開策が見当たらないまま、鹿島の術中にハマってしまったのだ。
延長戦の末、第96回天皇杯の王者に輝いた鹿島アントラーズ。日本サッカー最高峰の舞台で浮き彫りになったのは、今年、ロシアW杯出場を賭けて戦おうとしている日本代表の問題点、そして今後向かうべき方向性ではないだろうか。
鹿島の勝負強さが際立った今回の決勝戦。そして満員のスタジアム。日本サッカーの躍進にはやはりJリーグが盛り上がるべきだ。遠方から大阪へ元乗り込んできた鹿島、川崎、両ゴール裏に駆けつけた多くのサポーターたち。元旦決勝を盛り上げたのは紛れもなく彼らが放つ熱狂だったのではないだろうか。
日本サッカーにとって2017年は勝負の年である。微力ながらも少しでも日本サッカーが盛り上がるために、記事を通して、サポーターの熱狂をお届けできたら、そしてその熱狂が日本中に伝播することを願い、今年も頑張って執筆をしていこうと思う。お付き合い頂けたら幸いです。
本年もどうぞよろしくお願い致します。