サッカー馬鹿

2017.4.20

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未知へのチャレンジで変貌を遂げる。杉田亜未の挑戦<伊賀FCくノ一 杉田亜未インタビュー&編集後記>

未知へのチャレンジで変貌を遂げる。杉田亜未の挑戦<伊賀FCくノ一 杉田亜未インタビュー&編集後記>

高倉麻子新監督率いる新生なでしこジャパンは、4月9日(日)キリンチャレンジカップ2017~熊本地震復興支援マッチ がんばるばい熊本~でコスタリカ女子代表と対戦し3ー0で勝利。高倉ジャパン国内初陣を勝利で飾った。

この日得点を挙げた横山久美選手(AC長野パルセイロ・レディース)田中美南選手(日テレ・ベレーザ)長谷川唯選手(日テレ・ベレーザ)をはじめとする若手の活躍が際立ち、その一方で10番を継承した阪口夢穂選手(日テレ・ベレーザ)や宇津木瑠美選手(シアトル・レインFC/アメリカ)など、これまでなでしこジャパンを支え続けてきたベテラン勢は今もなお健在だ。

ベテランと若手が見事に融合し、コスタリカ女子代表相手に圧倒的な強さを見せつけた新生なでしこジャパンだが、この試合こそ出場はなかったが、今後、このチームの中核を担うであろう1人の選手の代表復帰があった。負傷により招集が見送られた鮫島彩選手(INAC神戸レオネッサ)に代わり追加招集された杉田亜未選手(伊賀フットボールクラブくノ一)である。

杉田亜未と聞いて、東アジア杯2015 北朝鮮戦で決めた弾丸ミドルを思い出すサポーターも多いのではないだろうか。なでしこリーグ1部、伊賀FCくノ一に所属する杉田亜未選手の持ち味はシュートだけではない。持ち前のパスセンスやドリブル突破に加え、無尽蔵の運動量でハードワークもこなす。所属チームでは、左サイドハーフをはじめ、ボランチ、FW、トップ下、あらゆるポジションを器用にこなすユーティリティ性に溢れ、今季から主将としてチームを牽引する。

今回のインタビューでは、熊本合宿での収穫や代表定着に賭ける思い。そして、今季から主将として牽引する伊賀くノ一の今季の展望などを聞いてみた。

新たな可能性にチャレンジした熊本合宿

――突然の追加招集を受けて、その瞬間どう思いましたか。

(杉田) 素直に嬉しかったです。2日前くらいに聞いて、結構急でした。怪我で辞退した鮫さん、(鮫島彩選手)の代わりにどうして私が。ポジションが違うじゃないですか。ビックリの方が大きかったですね。

 

――新監督の国内初戦、このタイミングでの招集は大きいですよね。

(杉田) 前回の招集はアメリカ戦でした。結構前のことでしたが、アメリカ合宿では自分のプレーが全然出せなくて。それ以降あまり代表に呼ばれなくなりましたが、それでも今回呼んでもらえたので、高倉さんの中に自分が入っている、まだ可能性があるなと感じたし、その時の悔しさもあったので、今回こそはアピールしたいという強い思いがありましたね。

 

――コスタリカ戦での出場はありませんでしたが、熊本合宿ではアピールできましたか?

(杉田) そうですね。普段の練習とは別に、個人のトレーニングも取り入れるようになって。今までの自分との違いを少しは見せられたかなというのはあります。これまで代表では左サイドハーフをやることが多かったのですが、今回の合宿では、もう一つのオプション、左サイドバックでの起用を考えていると監督に告げられました。

 

――戸惑いはありませんでしたか?

(杉田) もともと攻撃しかしてこなかった選手なので、守備で自分を生かせるのか疑問でした。でも逆に、サイドバックの新しいスタイルを出していけたらと前向きに捉えています。以前ならきっと、いや、守備なんて、となっていたと思いますが、代表で生き残っていくためには、プレーの幅を広げていくのもサッカー選手として一つかなという思いがすごくありました。

 

――現代表では、若手の台頭がクローズアップされています。そして彼女たちを導くベテラン勢がいる。その間の世代がポッカリ空いてしまっているように感じますが。

(杉田) そうですね。その間の世代がもっと前に出て来いっていうのは、すごく言われていて、もちろんそうだなと思う。その世代の選手はインパクトのある選手が少ない。インパクトがあれば必然的に選ばれるはずじゃないですか。それは率直に思うところで、自分の強みをもっと前面に押し出していくことが課題ですね。

 

――合宿最終日のコスタリカ女子代表とのトレーニングマッチでフル出場。得点も記録していますが、手応えを感じていますか?

(杉田) その試合はサイドバックで90分やりました。得点も獲れて、攻撃参加もできた。守備の部分ではまだまだ、奪い方であり、いろいろと細かい課題はありますが、運動量には自信があるので、そこは一つの強みだと認識できました。サイドバックというポジションで自分が今後どうしていきたいか、こうしたらもっと上手くいくのではないかという手応えは掴めたかなというのはあります。

 

――本職のサイドバックとは違う持ち味を発揮したい。

(杉田) ポジション的に、テクニックを見せる場面は少ないかもしれないけど、逆に細かいパスを繋いで剥がしていくとか、サイドバックから起点になれれば攻撃にも厚みができる。サイドを駆け上がっていくのも一つだし、左に行ってクロス上げるか、中央に切り込んでシュートとか。昨日の得点は、中央から入って決めることができました。そういうチャレンジもアピールできたらなとは思っています。

芽生えてきたリーダーの自覚

――昨シーズン途中から監督が変わり、今季からキャプテンとしてチームを引っ張る立場になったわけですが、自身のポジション変更も含めて、チームがどう変わり、どう進んでいくのかという今シーズンの意気込みを聞かせてください。

(杉田) 伊賀に入ってから、いろんなポジションをやりましたね。FWをやったり、左サイドハーフをやったり、ウイングもボランチもやりました。野田さんになってからはシャドーですね。自由にやらせてもらってます。裏に飛び出して一気にゴールを狙うのもありですし、くさびで受けてそのまま中央をドリブルで仕掛けるのもあり、もちろんパスでもチャンスを作ることもできる。今のポジションはすごく自分には合っていると思いますね。調子も悪くない。

 

――そして、今季からキャプテンになった。

(杉田) それも新しいチャレンジですね。自分がもう一皮剥けるために。監督もそういう考えで後押ししてくれたのだと思います。これまでは、決して自分から引っ張っていくようなタイプではなくて、どちらかというと後ろに付いていくタイプでした。そういった意味でもチャレンジですね。今年一年、代表にも定着したいし、チームを引っ張っていって、しっかり結果を残したい。まさにチャレンジの年といった感じです。

 

――後ろに付いていくタイプですか?

(杉田) 本当に、付いていくタイプでしたね。代表に呼んでもらえたことにも、どうして自分がという引け目がずっとありましたし、気持的に強い方でもなかった。今思えば、もっとこうしておけば良かった、もっと努力していたら、こういうトレーニングしていたらとか。後悔していることがたくさんあります。だから今は、これまで以上に一日一日を大切にしています。キャプテンとして、自分が成長するために何ができるのか。今一番考えていることです。

 

――でも、キャプテン経験は豊富ですよね?大学日本一になった吉備国際大時代も、キャプテンだったのでは。

(杉田) そうですね。キャプテンでしたね。その時もキャプテンキャラではなくて、どちらかというとプレーで引っ張るというか。本当に自分は引っ張るタイプではないんですよ。(笑)

 

――ラ・マンガ国際大会に出場したU-23代表の時もキャプテンでしたよね。

(杉田) はい。年功序列で任命されたと思っていました。(笑)

 

――理想のキャプテン像はありますか?

(杉田) やっぱりプレーで引っ張ることですかね。まずは自分が結果を残す。それが結果としてチームを引っ張っていくことになるのだと思います。

 

――今シーズンの意気込みを聞かせてください。

(杉田) 昨シーズンは1点差の試合が多くて、あと少しのところで勝ち切れない。引き分けで終わってしまう。その一つを勝っていたら、このチャンスを決めていたら、結果は違っていたはずだし、もう少し上の順位だったかもしれない。ですから、チャンスは十分にあると感じています。今シーズンもメンバーが変わって手応えはあります。チームの目標はリーグ優勝です。ただ、それを成し遂げるには、やっぱり一人一人がもっと意識を変えていかなきゃいけない。

昨シーズンは、リーグ2位の失点数でしたので、やっぱり何が足りないのかというと決定力だと思っています。そこを上げていくだけで結果は違ってくるし、チームとしてそこをどんどん上げていきたい。それが必然的にリーグ優勝に結びつくのではないかと考えています。昨シーズンは、個人的にも得点が少なく、悔しさもあったので、前の選手として今季は必ず結果を出したい。チームの雰囲気もすごく良いし、キャプテンとしての想いをチームにもっと伝えていけたらいいなと思います。

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未知へのチャレンジで変貌を遂げる。進化した杉田亜未選手の姿が見られる日はそう遠くはなさそうだ。新たな挑戦と引き換えに自身のスタイルを捨てることを厭わない。それどころか随所に潜在能力を発揮してしまう。

天性の器用さを持つ杉田亜未選手の強みはこれだけではない。小動物を彷彿させる愛くるしいルックス。そして絶やすことのない笑顔は多くの人を惹きつける。リーダーとして最も必要な人柄をも兼ね備える杉田亜未選手の挑戦から目が離せない。

杉田 亜未 (すぎた あみ)

神奈川県座間市出身

1992年3月14日生まれ(現在25歳)

ニックネーム:アミ、リン

伊賀FCくノ一所属/背番号17

経歴:相東SC→大和シルフィード→湘南学院高→吉備国際大→伊賀FCくノ一

吉備国際大学在籍中になでしこリーグへの昇格と残留を果たすとともに、主将として出場した全日本大学女子サッカー選手権大会で優勝。 2014年、伊賀FCくノ一に加入した。

取材後記

満開の桜の背後に腰を下ろす古びた校舎。長閑な田園風景に包まれる旧丸山中学校の校庭に整備の行き届いた天然芝が敷き詰められている。ミスマッチが醸し出すこの独創的な美しさに身を隠すように潜む秘密基地さながらのクラブハウスが在る。

くノ一のアジトに招かれたボクは、ひと気のない寂れた教室の真ん中でジャージ姿の小柄な女子と対峙することになる。白墨が霞む年季の入った黒板を背に杉田亜未選手のインタビューは執り行われた。

ひと通りのインタビューを終え、許される残り時間でサッカー選手との雑談を弾ませる。緊張から解放された選手との公私混同が織り成すこの場での会話は密かな楽しみに他ならない。

今回の取材後記は、この雑談の中の一部をお届けしたいと思う。奇しくも杉田選手とは同郷であるという御縁があり、学校の教室という不可抗力も幸いしたのか「懐かしいですね。」という一言を切り口に、杉田選手は自身のサッカー人生のルーツである少女時代を語ってくれた。

日本一を追い続けた学生時代

 

——サッカーを始めたきっかけを教えてください。

(杉田) そもそもは、野球を始めようとしていました。イチローが好きだったんです。イチローのグローブまで買って、もうガッツリ野球みたいな。

 

——やるぞ!って(笑)

(杉田) やるぞーって感じでしたね。(笑)ところが小2で引っ越すことになって小3から新しい小学校に変わりました。その時、仲良くなった男の子が「サッカーやってみない?」と誘ってくれたんです。「じゃあ行ってみようかな」って軽い気持ちで神奈川座間市の相武台東小学校の少年団(相東SC)に入団しました。なんとなく始めたサッカーでしたが、サッカーっておもしろいなって。そこからですね。

 

——その時は女子チームではなかったのですね。

(杉田) 男の子に混じってやっていました。でもこのまま中学校でサッカー部に入ったとしても女子は試合には出られないと聞いていて。それにお姉ちゃんがバレーボールをしていたということもあって、それなら一緒にバレーボールやろうかなって親に相談したら、もったいないからと言ってチームを探してくれて。それが大和シルフィードとの出会いでした。

 

——シルフィードは、どういう形態のクラブなんですか?

(杉田) シルフィードは神奈川県リーグ所属しているクラブチームです。そこではかなり練習がキツくて走り込みも多かった。チームには、本当に上手な選手が多くて、はじめはあまり試合に出場できなかったけど、チームが全国大会にも出るようになって、その時、本気で取り組もうと思いました。

でも中学時代に全国優勝はできなかった。だからもっとやりたいと思って、湘南学院高校に進学して全国優勝を目指したのですが、結局高校3年間でベスト8が最高でした。でもやっぱり日本一になれない悔しさが残っていて、吉備国際大学でサッカーを続けました。そしてようやく4年生の時に全国優勝できたんです!

 

——シルフィード入団をきっかけに、サッカー人生が大き動いたのですね。川澄選手や上尾野辺選手など女子サッカーを代表する選手と共に過ごされたのでしょうか。

(杉田) 入れ違いでしたね。とにかく監督が厳しかった。たぶん先輩たちの時代から変わらない厳しさだと思いますね。あとは、とにかく基礎練習をやり込みました。パス、トラップの繰り返しを結構な時間やるんですよ。ともかく毎日。選手からしたら「またこれか」ってなるくらいやりましたね。(笑)今思えばそれがよかったんだなぁと感じています。

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この他愛のない会話の中で気づかれることは、各々胸のうちにあるのではないかとは思いますが、ボクが個人的に感じたのは、成功に辿り着くためには2つの要素が欠かせないということ。それは努力を楽しむ覚悟であり、応援という推進力ではないだろうか。

それは決して歯をくいしばるような努力ではなく逆境に楽しみを見出すプロ意識であり、その楽しげな姿に多くの人は惹かれていく。もし一流と超一流の違いがあるとするならば、圧倒的な結果はもちろんのこと、声援を応援に変えてしまう魅力ではないかと思う。

休日はドライブに出掛けたり温泉巡りを楽しんでるんですよ。この辺にはたくさん良い温泉があるので。伊賀の里の生活を天真爛漫に語ってくれた杉田選手。雑談に快く応じてくれてありがとうございました。

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