サッカー馬鹿

2017.5.11

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東京都・城北地域からJリーグを目指す!スペリオ城北が貫く3つの説得力を紐解く。<スペリオ城北 宮坂GMインタビュー&取材後記>

東京都・城北地域からJリーグを目指す!スペリオ城北が貫く3つの説得力を紐解く。

「おらが街にJリーグを!」全国各地にはJリーグを目指すサッカークラブが幾つも存在する。2014年、Jリーグの新たなカテゴリーJ3の発足を契機に更にこの現象は加速の一途を辿っている。しかしながら、この現象に異論を唱える者も少なくない。Jリーグを目指すこととサッカーの発展は同義ではない。彼らの主張も実に的を得ている。

選手のサラリー問題をはじめ、スポンサーの支援、地域との関係性、そして観客動員数という現実。Jリーグを目指すという理想を掲げるのであれば、そのカテゴリーに相応しい説得力が必要である。こう語ってくれたのは、都リーグ2部に所属するスペリオ城北宮坂GMだ。

Jリーグに置き換えると8部にあたる地域リーグ(東京都リーグ)2部に在籍するスペリオ城北は、北区、板橋区、豊島区、荒川区、足立区、この五区を合わせる城北地区をホームタウンに活動する本年で創設13年目を迎えるサッカークラブである。

スペリオ城北もまたJリーグを目指すサッカークラブである。東京23区からJリーグへ。宮坂GMの先導のもと、スペリオ城北は力強くその道を歩み続けている。その力強さこそが彼らの独自性であり、その取り組みは観客動員にも反映されている。最高1200人、平均4、500人という驚きの動員力は、アマチュアの最高峰JFLを凌駕する勢いだ。

なぜ地域リーグに所属する小さなサッカークラブが、地域の関心を集め、多くの熱狂的なサポーターを生み出すことができるのか。本インタビューより宮坂GMの戦略を紐解いていきたい。

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宮坂一朗(みやさか いちろう)

まちづくり北株式会社代表取締役/スペリオ城北ゼネラルマネージャー/株式会社城北スポーツ&コミュニティー代表取締役/株式会社新興グランド社代表取締役

――宮坂さんがスペリオ城北のGMになったキッカケを教えてください。

(宮坂) キッカケは高校スポーツの面白さを知ったことでした。あるサッカー部の先生が「実は宮坂さんオレにはこういう夢があるんだ。ほとんどの子たちはプロになれないだろうけど、彼からが納得してスパイクを脱ぐ環境を作れないか。」と言ってきました。「それ面白いね。」というわけでチームのGMを引き受けることになりました。で、「何をしたらいいのか?」と尋ねたら、「金集めをして下さいと言われました」(笑)

スポーツは特にお金がかかるので、選手も大したサラリーを貰えるわけではありません。これまでに取り組んできた街づくり事業をヒントに経済的な支援を作ることになりました。そして掲げたのがこの「この街からJリーグを目指す!」というキャッチでした。

 

――いきなりJリーグですか?

(宮坂) 賛否両論ありましたね。(笑)サッカーもやったことない奴が何がJリーグを目指そうだのと。だからまずは形から入りました。カッコいいユニフォームを作って、チームの試合をお客さんで埋めようと考えました。

風通しの良いコミュニティーを育む

――どんな方法でしょうか。

(宮坂) まずは幼稚園に声を掛けました。子供たちが来てくれると両親も来てくれる。そうするとお爺ちゃんお婆ちゃんも付いて来てくれる。1人の園児が4、5人連れて来てくれるのです。その中で、一過性ではなく断続的に来場してくれる工夫を繰り返してきました。

人が集まるようになり、チームも都リーグ4部からスタートして全勝で勝ち上がり、少しずつ地域の人たちに興味を持って貰えるようになりました。そうすると、チームに入りたいという選手が集まってきて、応援してもいいですかと言ってくれるサポーターも現れました。

「ボクたちの仲間は、それぞれJ1、J2で応援しているクラブは違うけど、ランシールズ(現スペリオ城北)はボクたちの共通点なんです。」という彼らサポーターが中心となって、チャントを作ったり横断幕を作って、ミニJリーグのような雰囲気が生まれました。

スペリオの試合は、ほとんどが日曜日の夜なので、その後にみんなで一杯飲みに行こうかという具合になって、その飲食店がフラッグを掲げてくれるようになって。色々な方々の協力があってクラブのスローガンでもある『希望の大河』のCDといも焼酎まで販売するようになり、ポスターの絵を描いてくれたりして、皆がスペリオを楽しんでくれている。だったら皆にスペリオを利用して欲しいと思うようになりました。

 

――サポーターが主導になってチームを盛り上げているのですね。

(宮坂) スペリオのサポーターは高圧的でなく友好的です。「ボクたちは勝手連なんでチームの組織に入りたいわけではないんです。」と言ってくれて、ユーストリームで試合を実況中継までしてくれるサポーターがいたり、マッチデイプログラムを自作で作成してお客さんに配ってくれるサポーターがいたりします。印刷くらいは協力させてよとこっちが言うと、「これはボクたちが勝手にやっていることなので。」と断られたこともありました。彼らの想いに応えるためにクラブは常にオープンの姿勢を貫いています。

クラブ運営は健全な経営ありき

――街づくり事業の経験を生かして地域に根ざすコミュニティーを築いてきた。その一方で組織としてどのような方向性を目指しているのでしょうか。

(宮坂) まずは育成ですね。現在はジュニアがチーム、スクール合わせて120名います。やはり上を目指すには育成は欠かせないと考えています。そしてそこに従事するスタッフを充実させていかなければならないと思っています。ジュニアにはビジネスという側面もあります。逆を言うとトップチームは広告塔でもある。

クラブを株式会社に組織した理由は、スタッフが安心して働ける環境であるべきだという考え方があり、ただ単に強いチームを作るだけではなく、地に足が着いて、心身ともに健全でなければ継続的な運営はないと考えているからです。仕事に見合ったサラリーがなければ続けられないんですよ。情熱だけでは続けられない。これこそがスポーツ文化が育たない原点だと思う。目指すところは、まずは飯を食っていけるということ。

 

――クラブ運営には健全な経営ありきということはよく分かりました。宮坂GMが考える今後の展開を教えてください。

(宮坂) ここ(赤羽)は南北線が通っていますが、浦和レッズの試合になると南北線が真っ赤に染まるんですよ。当然通過して埼玉スタジアムがある浦和美園駅まで行っちゃうのだけれど、この人たちをここで止めたい(笑)おらが街にもサッカーがあることを知って欲しい。そのためにはマーケットありきだと考えています。

北区は34万人、板橋区、豊島区、荒川区、足立区、この五区を合わせた城北地区には144万人います。これは浦和レッズのマーケットに匹敵します。ですのでこの地区にもスタジアム建設も可能だと考えています。それにはまずは市民権を得なければいけない、戦力が充実したチームがなくてはならない、そして経済効果が見込めるという3つの説得力がなければいけない。それにはやはりマーケットが必要なのです。

スポーツを事業と捉えるか、それとも興行と捉えるか。僕はやはり興行であるべきだと思っています。そうでなければ文化を育むことは出来ない。その中に勝敗があって、そこに一喜一憂する人たちが出て来て、その人たちの心の中にスペリオ城北が染み付いていく。街づくりは興行でなければダメ。そこに寄付なのか広告宣伝費なのかの違いが生まれる。寄付は長くは続かないですから。

 

――宮坂GMがスペリオに託す想いを聞かせてください。

(宮坂) 東京23区がホームタウンのチームを作りたい。地域のサッカーファンはそれぞれ別のカテゴリーにご贔屓のクラブがありますが、彼らにとってスペリオ城北はかすがいであり、一つの止まり木であって欲しい。そのためにも益々楽しめるスタンドを作っていきたい。

 

――宮坂GM本日はお忙しいところありがとうございました。

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Jリーグ参入を成し遂げるために、クラブは様々な条件を満たし、高水準を継続することが義務付けられている。そのために必要な3つの説得力があると宮坂GMは語ってくれた。市民権を得ること。充実の戦力と育成環境の整備。圧倒的な経済効果。そして何よりもスペリオを楽しんでくれるサポーターに感謝したい。宮坂GMはこう続けます。

彼らサポーターが作り出す風通しの良いコミュニティー。その居心地の良さに惹きつけられ、多くの人がスタジアムに足を運びサッカーを楽しむ。城北地区からJリーグクラブが誕生する日もそう遠い日ではないかもしれない。

スペリオ城北

2005年設立。当初は城北ランシールズとしてスタートしたが、現在は、スペリオ城北と改称し、東京都の城北地区(北区、豊島区、足立区、荒川区、板橋区)をホームタウンに活動する。東京都社会人サッカーリーグ2部に所属、Jリーグ加盟を目指している。エンブレムの五輪の桜は城北5区、タスキは城北地区を流れる荒川、キツネは北区王子が舞台の古典落語「王子の狐」がそれぞれモチーフになっている。

【取材後記】

池袋駅東口から2分ほど歩いたビルの地下一階にバッカスという老舗居酒屋がある。ひと通りの取材を終えたボクは、宮坂GMにお願いしてこのお店のご主人である樋口昌純さんを紹介して頂いた。

どうして樋口さんと会いたかったのかというと理由は2つある。彼がスペリオ城北の熱狂的なサポーターであること、そして店内にアーセナルの写真がたくさん飾ってあることをSNSを通じて予め知っていたからだ。

横浜F・マリノスのサポーターであり、ガナーズ好きである。そんな彼がどうして都リーグのスペリオ城北を応援するようになったのか。その経緯はやはり地元意識でありコミュニティーの心地良さではないだろうかと勝手に推測する。

好きな仲間と好きなサッカーを楽しむ。楽しさの源は実にシンプルなのだ。勝利を渇望するというよりは、勝敗の一喜一憂を楽しむ。応援するチームが地元にあることが何よりの喜びである。そこから感じ取るのは羨ましさであった。

緩やなな繋がりが、風通しの良いコミュニティーが生む。そこにある居心地の良さを後押ししてくれるのは、やはりクラブとの良好な関係性ではないかと思う。

コミュニティーづくりは意図するものではない。ましてやそこに属す人を囲い込む鉄の掟など必要としない。むしろ、コミュニティーは自然発生するものである。サポーターという特異なコミュニティーだからこそある種の緩さが必要なのではないだろうか。

この日は生ビールを嗜む程度でお店を後にする事になりましたが、次回は是非とも、いも焼酎希望の大河』をいただいてみたい。スペリオ城北のテーマソングを唱和しながらスペリオカラーのボトルを傾けてみる。それは次の機会までとって置こう。

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