サッカー馬鹿

2017.5.31

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タイトル奪取へのこだわり。全キャリアをアルビレックスに捧げる上尾野辺めぐみの現在地。<アルビレックス新潟レディース 上尾野辺めぐみ選手インタビュー&取材後記>

タイトル奪取へのこだわり。全キャリアをアルビレックスに捧げる上尾野辺めぐみの現在地。<アルビレックス新潟レディース 上尾野辺めぐみ選手インタビュー>

通算276試合出場84得点。5度のベストイレブン選出。国際Aマッチ34試合出場(2016年時点)なでしこリーグで輝かしい実績を積み重ね、長きに渡り女子日本代表で活躍している一人の女子サッカー選手がいる。アルビレックス新潟レディース上尾野辺めぐみ選手だ。

様々なポジションを託される、ユーティリティ性溢れる稀代のレフティー上尾野辺選手は、1つのクラブに全キャリアを捧げてきた稀有なサッカー人生を歩む女子サッカー選手でもある。

出場機会を求める者もいれば、新たなる挑戦のため新天地でのキャリアを望むサッカー選手が多くいる中で、1つのクラブでプレーを続けることは却って難しい。その中で継続的にチームに貢献し12年目を迎えた2017シーズンは、彼女にとって大きな転機といっていいだろう。クラブとの間にプロ契約を締結したからである。

在籍12年目にして晴れてプロサッカー選手として歩み出した上尾野辺選手は、今後アルビレックスLのシンボルとして輝きを放ち続けるに違いない。新たなるキャリアをスタートさせた上尾野辺選手に決意のほどを伺ってみた。

プロ契約〜12年目の決意〜

(C)ALBIREX NIIGATA

――上尾野辺選手がこれまで辿ってきた12年のキャリアを振り返っていきたいのですが、まずはデビュー当時のことをお聞かせください。

(上尾野辺) 短期大学卒業後、新潟に来ました。当初はフル出勤をしてサッカーをする生活でした。休みもなく、自分の中ではサッカーをしにここに来たので、ちょっとイメージと違ったというか、そういうのがあって、当時の職場は辞めさせてもらいましたが、その後は体育館や医科学スポーツセンター、アルビレックスのスクールでも働かせていただきました。

 

――その当時と現在とでは、プレー環境は劇的に変わっていますよね。現状はいかがでしょうか。

(上尾野辺) 私が新潟に来た当時は、自分で職場を探す選手もいましたが、現在は、クラブから職場を紹介していただき、仕事をしながらサッカーをします。それでも当初に比べると、クラブの尽力もあり、少しずつサッカーに専念できる環境が整ってきています。

 

――その中で上尾野辺選手は、今年から選手の中で唯一のプロ契約を結びました。そういった中で心境の変化はありますか。

(上尾野辺) プロ契約になることで、周りの目が変わってくることは自覚しています。自分の中ではやる事は変わらないですが、やはりプロである以上結果にこだわって、もっとチームを勝利に導くようなプレーを出していかないといけないと思います。

 

――今季からFW登録に変わりました。これまで様々ポジションをこなしてきましたが、FWに対するこだわりはあるのでしょうか。

(上尾野辺) そういう訳ではないのですが、アルビレックスに加入するまでは、基本的にFWをやっていました。短大の時もワントップでしたし、高校時代もFWやサイド、攻撃的なポジションを任されていたので、改めてFW登録になったことには全く違和感はありませんね。

 

――ますます得点へのこだわりが強くなるのではないでしょうか。

(上尾野辺) そうですね、自分が得点を決めるというよりも、得点につながるプレーという意味合いが強いかもしれませんね。アシストであったり、起点になるプレーで、より多く得点に絡めればいいなと思います。

長きに渡る代表経験を糧に。

(C)ALBIREX NIIGATA

――代表ではサイドバックで起用されることが多かったですが、代表ではどのような役割を託されていたのでしょうか。

(上尾野辺) 初めの頃は、とにかく慣れないポジションでした。付いていくのがやっとでしたね。それでもやはり代表ですから、やるしかない!という覚悟で取り組みました。戸惑いもありましたし、なんでサイドバックなんだろうという気持ちもありましたけど、そこでの良さというか、楽しさを見つけることができましたし、徐々にDFの動きも掴めてきました。でもやはりその中でも攻撃が一番の持ち味ですので、攻撃に繋がるパスや、ビルドアップで攻撃のスイッチを入れるとか、そういうところで、こだわりを持ってやっていましたね。

 

――長きに渡り代表選手として活躍されていますが、やはり2011年ドイツW杯優勝の歓喜は思い出深いでしょうか。

(上尾野辺) そうですね。あの時の出来事はやはり印象深いですけど、正直なところ付いていくのがやっとというか、ワールドカップの重圧もそこまで感じていませんでした。どちらかというと、その重圧はカナダW杯の時の方が大きかったですね。年齢も4年経ったということもあるかもしれませんが、目の前に広がる景色も違いましたし、やはり代表に行くと常に悔しい思いの方が強いです。どの大会でもなかなか出場することが出来なかったので。

 

――多くの一流選手と共にした代表での経験において、影響された選手や、目指したい選手はいましたか。

(上尾野辺) 目指しているというか、プレースタイルは違いますが、やはり澤選手の存在は大きかったですね。ここ一番で力が発揮できる強さが違います。大事な時に決める、体を張って守る、それができる選手はなかなかいないと思います。上手さだけではなく、そういった能力はずば抜けていると感じましたね。

 

――2011年、優勝の歓喜から6年目を迎えますが、これまでロンドン五輪銀メダル、カナダW杯準優勝。そして、リオ五輪出場を逃すアジア最終予選の屈辱。全てを経験してきた上尾野辺選手は、日本の現在地をどのように捉えているのでしょうか。

(上尾野辺) 私は日本のレベルが落ちたわけではなくて、周りの国の成長スピードを実感します。最近はスペインなど、以前はまったく名前が挙がらなかった国の台頭ですね。以前対戦したことがある相手でも、その時とは比べてものにならないくらい成長を感じます。日本は技術があると言われますけど、他国の技術も向上しています。それ以上に上回る何かを日本はつけていかないといけない。難しいことですが。

 

――ここ6年ほどで、それほどまでに勢力図が変わっているのですね。W杯優勝から多くの日本人選手が海外挑戦をしていますが、上尾野辺選手にも海外志向はあるのでしょうか。

(上尾野辺) 私は海外よりも日本で。でも海外のチームとは試合したいという思いは強いですね。

悲願のタイトル獲得へ

(C)ALBIREX NIIGATA

――やはり在籍12年目。新潟に対するこだわりは強いのですね。

(上尾野辺) やはりタイトルを獲りたいですね。(笑)

 

――これまでタイトルの獲得はなく、皇后杯の準優勝が4回ありました。やはりタイトル奪取に賭ける想いは強いですか。

(上尾野辺) そうですね、皇后杯は優勝に一番近い大会ということは常に感じていましたし、そういう意味でも、昨年はあと一歩のところまできていたのに、なかなか優勝できなくて。やはりアルビレックスでタイトルを獲りたいという思いは強いですし、なんとしても優勝争いに食い込みたいところですが、今年はちょっと成績的に厳しくて、今は苦しい状態です。ですが、後半戦のところで、このチームは結構仕上がるという雰囲気があるので、もう一度皇后杯で優勝争いができるように、ゴールやアシストといった攻撃的なところで貢献したいと思っています。

 

――アルビレックスではキャプテンの経験もありますが、経験豊富な選手なだけにリーダーという自覚は強いのでしょうか。

(上尾野辺) 今はキャプテンを任されていた頃とは違って、最近は遠くから見守るというのも変ですが、いろんな選手が出てきて、引っ張れる選手も少しずつ出てきているので、みんなに気持ち良くプレーして欲しい。そういう雰囲気に持っていけるように振る舞いたいと思っています。年齢を重ねるごとにそんな風に感じていますね。(笑)

 

――年齢的にというと、ツートップを組んでいる大石沙弥香選手も同い年でしたよね。大石選手も上尾野辺選手同様な考えをお持ちなのでしょうか。

(上尾野辺) そうですね。大石選手もどちらかというと引っ張るタイプではありませんが、でも言う時は言ってくれますし、自分自身にも厳しいですし。そういう姿を見てチームメイトは気付いてくれているのではないかと思います。

 

――アルビレックス新潟レディースはどんな雰囲気のチームなのでしょうか。

(上尾野辺) 上から下まで仲が良いというか、それは毎年のことですし、そこがアルビレックスらしさだと思います。練習でもオフの時も、とにかく明るい。メンバーもスタッフも含めて、そこから生まれる一体感があります。だから、勝負強さが求められる皇后杯に強いのかもしれませんね。絶対に負けられない、負けたら終わり、追い込まれている状況に強いというか。(笑)リーグでもそういう勝負強さが出せればいいのですが。

 

――最盛期と呼ばれるムーブメントから6年が経とうとしています。その中で多くのクラブは観客動員に苦戦されていますが、第4節のホームゲームINAC神戸レオネッサ戦(デンカビッグスワンスタジアム)で5460人の観客を集めました。この試合は、男子チームとのダブル開催でしたが、やはり大勢の観客に囲まれる試合は特別ですね。

(上尾野辺) そうですね。やはりブームの頃と比べると、どんどん観客が減っているのを感じます。そんな中でのダブル開催でしたが、5000人も来てくれた。その中でやっている雰囲気は全然違いますし、そういう応援があってこその勝利だったと感じています。やはりサポーターの声は力になると改めて思いました。

私が新潟に来た時は、トップチームは3万、4万人近く入っていました。すごいなと感じました。新潟の方々にとってアルビレックスにいがたは文化なのだと思いました。でもやはり男女共に下がっているのが現実です。だからこそ、その頃を知っているからこそ、もう一度そういうところまで上げていきたい。それには、やはり結果ありきだと思います。勝って多くの人たちに楽しんで欲しいですね。それが私たちのできることですから。

 

――そのためにも、タイトルが欲しいですね。

(上尾野辺) 本当に。一度くらい獲らせて欲しいです。(笑)

 

――本日はお忙しい中ありがとうございました。

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上尾野辺めぐみ(かみおのべ めぐみ)
 1986年3月15日生まれ

出身地:神奈川県横浜市瀬谷区

在籍:アルビレックス新潟レディース

ポジション:FW MF / 背番号10

経歴:原FC→林間SCレモンズ→大和シルフィード→武蔵丘短期大→アルビレックス新潟レディース

日本代表34試合出場2得点

【取材後記】

新潟駅からクルマで40分、海風を感じながら向かったのは、新潟聖籠スポーツセンターアルビレッジ。アルビレックス新潟のクラブハウスを訪れた。

「アルビレッジ」の名で親しまれているこの敷地内には、天然芝のピッチが4面、人工芝のピッチが2面、屋根付きのフットサルコートにトレーニングマシンが完備されている。欧州ビッグクラブさながらのトレーニング設備を誇るアルビレッジを目の当たりにして、サッカーに託す新潟スポーツ文化の思い入れを感じずにはいられない。

ひと通りのインタビューを終え、アルビレックス新潟レディースのトレーニング風景を見学させてもらうことになった。上尾野辺選手が「このチームは明るさが取り柄」だと語っていた通り、笑い声が飛び交う一体感がそこにはあった。この日は火曜日だったこともあり、試合後のリカバリーに充てられているとのことだった。

選手たちは、各々の職場での勤務を終え、アルビレッジにやってくる。トレーニング後に敷地内にあるレストランで食事を摂り帰宅の途につく。関係者の説明を聞きながら、彼女たちのサッカーに対するひたむきさに感銘を受ける。

数年前と比べてプレー環境は飛躍的に向上している。各地での取材を経て、関係者は一様に口を揃える。その中でもアルビレックス新潟にまつわるプレー環境は群を抜いているのではないだろうか。

仕事しながらサッカーに勤しむ選手もいる、様々な形態を持つ各クラブがプレー環境の整備に尽力する。そういった女子サッカー界の現在地において、上尾野辺選手のプロ契約締結は非常に意義深い。

インタビュー内で、プロサッカーとしての気概を語ってくれた上尾野辺選手だが、今後の彼女の活躍が、多くの女子サッカー選手の希望となり、アルビレックス新潟レディースのシンボルとして輝きを放つに違いない。

<了>

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