サッカー馬鹿

2017.7.27

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Jリーグ後援 東日本大震災復興支援 映画『MARCH』〜ちょんまげ隊長ツンさんの応援流儀〜<ツノダ ヒロカズ氏 インタビュー&取材後記>

Jリーグ後援 東日本大震災復興支援 映画『MARCH』〜ちょんまげ隊長ツンさんの応援流儀〜<ツノダ ヒロカズ氏 インタビュー>

映画『MARCH』より:ツンさん提供

「この映画を観て欲しいんだ」こう語るのは、ちょんまげのカツラを被り甲冑姿で世界を飛び回る「ちょんまげ隊長」でお馴染みの日本代表名物サポーター”ツンさん”ことツノダヒロカズさん。この映画とは、東日本大震災復興支援を目的に製作された短編ドキュメンタリー『MARCH』ツノダはこの作品の製作発起人でありプロデューサーなのだ。

MARCHとは震災と原発事故が起こった3月、マーチングバンドの「マーチ」、「前に進む」という3つの意。この映画は震災被害を乗り越えて福島県南相馬市で活動しているマーチングバンドSeeds+(シーズプラス)がJリーグクラブ愛媛FCの協力を経て、ニンジニアスタジアムでの前座演奏の成功をおさめるまでの奮闘を軸に描いている。

「福島の子供たちの笑顔を届けたい、福島の現状を知って欲しい。」東日本大震災の被災地をはじめ熊本、そしてネパールまで。6年間で200回を越えるボランティア活動を続けるツノダは『MARCH』に対する思い入れも深い。

この映画の目的は3つあります。1つは“観る支援”関心を持ってもらいたい、風化させたくない。2つ目は“直接支援”です。有料上映会で得た収益を南相馬の子どもたちへ届けていること。3つ目は“伝える支援”フクシマの現状を正しく世界に伝えること。

『MARCH』は世界各国の映画祭で上映され、英国ロンドンの映画祭「International Filmmaker Festival of Word Cinema LONDON」で、外国語ドキュメンタリー部門で20カ国170作品の中から最優秀作品賞に選ばれた。「現在は英語や中国語をはじめ世界各国語の字幕を制作中とのこと。これが僕たちの本気です。来年はワールドカップが行われるロシアで上映したい」とツノダはつづける。

2016年3月11日、あの日から5年の時を経て『MARCH』は完成した。しかし、ツノダの支援活動に終わりはない。現在は、ちょんまげ隊長自ら全国各地を行脚し、上映会の開催を推進し続けている。

『MARCH』はサッカー映画だ。

ツンさんは、全国各地で被災地支援報告を行っている。

杉並区の中学校でプレゼンテーションは行われた。スクリーンに映し出された被災地の光景を前に、ちょんまげ隊長は活動報告を発表、そして支援を訴えかける。「被災地に置かれた子供たちの現状を知って欲しい、その中でも夢を諦めずに活動している子供たちのたくましい姿を見て欲しい。」

『MARCH』に登場するSeeds+は、南相馬市立原町第一小学校のマーチングバンドであった。同校は、全国大会で優秀な成績を収め続けている強豪校だったが、震災被害に見舞われ離散を余儀なくされる。それでも「マーチングを続けたい」という情熱が結束を生み、中学生も加わり再結成される。

しかし、『MARCH』に描かれているのは、マーチングバンドSeeds+の奮闘記だけではない。上映後、映画の感想を聞かれたボクは、思わずこのような質問をしてしまったのだ。

映画『MARCH』より:ツンさん提供

――ツンさんは『MARCH』を復興支援映画だと紹介されていましたが、ボクのようなサッカー愛好家にとってみれば復興支援というよりは、純粋なサッカー映画として心動かされる作品だと感じました。応援のプロである一人のサポーターとして、ツンさんはこの映画にどんな想いを託したのでしょうか。

(ツノダ) 「そうだね、サッカー映画なんだよね。愛媛FCがあの子たちを招待してくれたことによって、生まれて初めて飛行機に乗ったという子がいたり、ピッチに立つことになったり、そしてみんながサッカーを好きになった。あの子たちは今でも愛媛FCを応援するため、福島から近い水戸とか山形のスタジアムにも駆け付けます。これほどまでに心を揺さぶり、こんなにも笑顔にさせてくれる。サッカーのチカラを改めて実感した。」

サポーターに見て欲しい映画

映画『MARCH』より:ツンさん提供

この映画は決して1つの答えを押し付ける作品ではない。当然、賛否両論あるだろう。作品に宿る想いをどう受け取るのか、それは、観手それぞれの価値観に委ねられる。『MARCH』はドラマではないドキュメンタリーなのである。

 

――観る人によって鳥肌が立つシーンが違う、嫉妬するほどサッカー愛に満ち溢れた作品であり、その背景にサッカーの可能性が垣間見られますね。

(ツノダ) 「現在、日本におけるJリーグクラブは54、地域リーグなどを含めると、全国各地の都道府県を網羅しています。これは行政にはないネットワークにも成り替わります。熊本地震の時も仙台も時も、サポーターが積極的に動いて全国各地からスタジアムに物資が届けられる。地域に根ざしているからこそ分かる情報を元に、きめ細やかな支援ができる。これはサッカーならではだと思う。

災害に見舞われた地域があれば、どのクラブも募金に走り回り、どの選手も支援に駆けつける。“おらが街”にサッカーがあるという好材がこの作品の背景になっていると感じています。だからこそ、この作品をチーム問わず多くのサポーターに観て欲しい。おらが街にサッカーがある喜びを噛み締めて欲しい。」

愛媛FCに嫉妬した!

映画『MARCH』より:ツンさん提供

ここで気になることを一つ整理しておきたい。福島県南相馬市で活動するマーチングバンドが、なぜ愛媛の地へ訪れるのだろうかということ。ちょんまげ隊長と愛媛FCとの関係性について触れておきたい。

(ツノダ) 「サッカーのネットワークを通じて、僕は被災地支援活動をしていますが、ある時、愛媛FCサポーターから協力したいと申し出がありました。それならば、支援が中々行き届かない宮城県の牡鹿半島に来てくれないかとお願いしたところ、山形でのアウェー戦の帰りにラッピングバスで駆け付けてくれました。これがご縁の始まりでした。僕は日本代表サポーターなので、J1は観たことはあっても、J2は観たことがありませんでしたが、来てくれと言われたら断る理由がありませんから、僕のJ2初観戦は愛媛FCのホームゲームでした。

初めて訪れたニンジニアスタジアムに驚愕しました。ガラガラなんですよ。2500人ほどしか入らない試合でした。僕はいつも50000人を越える観客の試合ばかり観ていたので、失礼な話、「今日本当に試合があるのか」と聞いてしまったほどでした。そんな状況を目の当たりにした僕は、また余計なお節介をしてしまうのですよ。「観客動員を倍にしましょう!」と掲げて3年間毎月のようにスタジアムに通いました。結果的に倍にはならなかったですけどね。

なぜ愛媛はこれほどまでに協力的で、余所者の僕を快く受け入れてくれるのか。この作品の制作費の半分くらいは愛媛のサポーターや企業の皆さんが支援してくれている。なぜここまでしてくれるのか、ある方面から聞くところによると、お遍路文化が根付いているからではないかという話を聞きました。四国八十八ヶ所を巡る人たちに、お茶を差し出したりご飯も出したり泊めてあげたり、そういった文化が脈々と受け継がれている。おもてなしという言葉が一番似合うのが四国の方々なのではないかなと思います。映画『MARCH』に、惜しみない協力をいただいた愛媛のみなさんには本当に感謝の気持ちで一杯です。」

ちょんまげ隊長ツンさんの応援流儀

写真:ツンさん提供

愛媛の愛が福島の笑顔を作り出す。そこには、当人たちの奮闘があり、その背景にあるサッカーのチカラを感じた。そしてサッカーのチカラを引き出したのは他でもない、ちょんまげ隊長ではないだろうか。復興支援という言葉にいささか重量感を感じる人も多いことだろう。しかし、それを応援という言葉に置き換えることで当事者意識が芽生えやすくなる。

応援の仕方は様々である。それは共闘でもあり支援でもある。背中を押す、参加する、支える、そして寄り添う。大切なのは手段ではない、根底にある想いではないだろうか。世界中を飛び回りスタンドで声を枯らす。はたまた、足繁く被災地を訪れ勇気を与え続ける。映画『MARCH』から受けた衝撃、それはちょんまげ隊長ツンさんの応援流儀だった。

(ツノダ) 「僕がやっている応援は“巻き込むこと”です。僕にそのことを教えてくれたのは、オリンピックのテレビ放送などで度々映像に写り込むことで有名な紋付袴姿の「オリンピックおじさん」でした。それは2008年の北京オリンピックで日本代表が戦う野球観戦にお共させてもらった時のことでした。

この時、驚愕の光景を目にしました。スタジアムに到着するなりオリンピックおじさんは、なんと中国の国旗を貼り始めたのです。そして周りにいた中国人たちに切手やシールなどのノベリティを配る。そうすると中国人たちは喜ぶんですよ。そうやって場を温めた後に、最後に日の丸の国旗を掲げて応援を始めるんです。そうすると周りの中国人たちも一緒になって拍手するんですよ。これは凄いなと思いましたね。これが巻き込むということなのかと実感しました。

応援には色んな形がありますが、僕はこの巻き込むことをやりたいなと思いました。それからの僕は先ずスタジアム中をちょんまげ甲冑姿で廻って前座のお笑い芸人さながらに観客を盛り上げます。もちろんホーム&アウェーでは通用しませんが、僕たちがやっているのはオリンピックやワールドカップなどの第三国開催の試合ですから、地元の人たちを如何に巻き込むかに全力を注ぐわけです。」

 

――今、ツンさんが取り組んでいる活動と同じですね。

(角田) 「結局、僕一人では何も出来ませんから。サポーターとボランティアは似ていると思います。無償の愛ですから。自己満足の世界ですけどね。でもその中で何か出来ることはないか、その答えが僕にとっては巻き込むことなのかなと。」

【上映会を開催してくださる方 募集中】

写真:ツンさん提供

現在でも、ドキュメンタリー映画『MARCH』の上映会は継続している。各種団体から学校関係まで、支援の輪は着々と全国各地へ広まっている。公式サイトをチェックしてお近くの上映会に参加するもよし、自らが発起人となり上映会を開催するもよし、この映画をきっかけに、もう一度被災地に思いを寄せる。そしてサッカーの魅力を今一度味わって欲しい。

東北復興支援 ドキュメンタリー映画『MARCH』公式サイト

ちょんまげ隊長ツンさん(ツノダ ヒロカズ)
ちょんまげ付て南ア/中東/ウズベキ/など世界で代表サポやってる一児の父w震災後ちょんまげ支援隊として140回以上被災地支援中。活動報告は  無料で被災地報告会承ります。北南米/欧州/アジア/豪州/大学260回以上実績有。映画MARCHプロデュース。

 

【取材後記】

写真:ツンさん提供

ワールドカップで躍動するサッカー日本代表の応援に駆けつけたことがあるサポーターならば、“ちょんまげ隊長ツンさん”の存在は、もはや説明不要かもしれない。ただ、なぜ彼がちょんまげ甲冑姿でスタジアムに現れるのか。その意味に謎を抱えている人も少ないくないだろう。今回の取材後記では、ツンさん自らが語った“ちょんまげ甲冑姿“のこだわり、そもそもなぜ彼が日本代表を応援するに至ったのか。その真意に迫ってみた。

(角田) 「元々僕はサッカーにはまるで興味はなかった。やるのはバスケットボール、観るのはプロ野球、阪神タイガースが大好きだった。どちらかと言うとサッカーはアンチの方でした。

そんな僕みたいにサッカーに興味ない人でも、”ドーハの悲劇”だけは違った。この試合に勝てば日本は初めてワールドカップに出場できる、結局、ヘディングシュートを決められて夢絶たれてしまったわけですが、当時、にわかファンの僕でも知っていたカズとか柱谷とか、有名選手たちが泣き崩れて、ピッチで倒れているのを見た時に、そんなにもワールドカップに出たいのか、大の男が泣くほどに悔しいのか。そんな彼らの姿を見て居ても立っても居られなくなってしまった。

一般的な日本代表サポーターは、地元に応援するクラブがあって、そのクラブの中から選ばれた代表選手を追いかける、それが王道ですが、僕の場合はそうではなく、イケメン代表選手を追いかけるミーハーと言われる女の子たちと似ていて、ワールドカップってそんなにスゲーのかというところから入りました。

こうして僕は、日本代表を追いかけて世界を旅するようになりました。はじめは代表ユニフォームを着てスタンドをブルーに染める。その一員としてずっと応援してきましたが、ある時気がついたことがありました。「ユニフォームを着る必要はないのかな」と。ノルウェーのサポーターはバイキングの格好をしているし、オランダのサポーターは全身オレンジ色のスーツを着たりして、オーストラリアのサポーターは巨大なカンガルーの縫いぐるみを持ち歩いてるし、みんな自由で楽しそうだなと思った。

そして、2008年北京オリンピックに初めてちょんまげを持っていきました。当時の中国は反日気運が高まっていて危険だと反対されましたが、オリンピックという祭典の最中でしたので、たくさんの中国人が僕と一緒に写真を撮ろうと列ができるくらいだった。

ところが、僕はオランダに負けました。試合で負けてコスプレでも負けた。僕を負かしたオランダサポーターのおじいちゃんは全身オレンジ一色でした。オレンジ色に塗られた木靴を履いて、オレンジ色の全身タイツを着て、オレンジ色のアフロのカツラを被って、さらにオレンジ色のチューリップを頭に挿して。このファンキーなおじいちゃんが現れた瞬間、僕の前から列が消えた。

これで完全に火が付きました。ちょんまげだけじゃダメだ、甲冑も必要だってね。ただ本物の甲冑は鉄製なので海外へは持っていけない、甲冑を手作りしようと、色んなところへお伺いを立てたのですが断られ、結局、全国各地でやっている時代祭に出向いて、実際に現物を見て、ようやく再現できました。こうしてちょんまげ甲冑隊が誕生したわけです。(笑)」

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本文でお届けした東日本大震災復興支援映画『MARCH』この作品の最大の説得力こそが、ちょんまげ隊長ツンさんのバックグラウンドではないか、そんな想いで追記させていただいた。人は楽しいことが好き、そして、人は楽しいところに集まる。だからどんな状況下でも“楽しさ”というエッセンスを盛り込んでいく。ちょんまげ隊長ツンさんの応援流儀の真意はここにあるのではないだろうか。

<了>

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