サッカー馬鹿

2017.8.3

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東京オリンピックを見据えて。東京23区発!女子サッカークラブの未来像《スフィーダ世田谷FC 川邊健一監督インタビュー&取材後記》

東京オリンピックを見据えて。東京23区発!女子サッカークラブの未来像《スフィーダ世田谷FC 川邊健一監督インタビュー》

(C)SFIDA SETAGAYA FC

<スフィーダ世田谷FC 16年目の歩み>

東京オリンピック開幕まで残り3年に迫った。新国立競技場の建設が進む中、それと並行するように各種目とも競技力向上の気運が高まっている。2020年を到達点に掲げ、東京ブランドを声高に叫ぶ。女子サッカー界にもこのようなクラブがあることをご存知だろうか。なでしこリーグ2部、東京都世田谷区を本拠地に置くスフィーダ世田谷FCである。

「男女含めてトップリーグで戦う東京23区のクラブはスフィーダ世田谷FCだけ、我々には東京23区発のチームであるという誇りがある。」こう語るのはスフィーダ世田谷FC監督兼GMの川邊健一氏。

「女子中学生がサッカーを続けられる場所を提供したい。」2001年、女子単体のチームとして歩み始めたスフィーダ世田谷FCは、結果と景気に大きく左右され、浮き沈みを繰り返してきた女子サッカー界の稀有な歴史とは裏腹に、着実なステップを積み上げてきたクラブと言えよう。

今季16年目を迎えたスフィーダ世田谷FCは、現在なでしこリーグ2部を戦っている。「この足取りは決して軽やかだとは言い難いかもしれない、しかし、揺らぐことのない土台を築き上げてきた自負がある。」そしていよいよ飛躍の時が訪れた。

クラブ創設から携わってきた川邊健一の言葉を紡ぎあげることで見えてきたものがある。それは計り知れないポテンシャルであり、見落としてはならない礎である。不確かな未来を駆け抜けるためのヒントに耳を傾けてみたい。

(C)SFIDA SETAGAYA FC

 

――プロモーションの一環として川邊監督自ら、ほぼ毎日のようにブログを配信されていますが、どれくらい続けているのでしょうか。

(川邊) もう6年になります。チャレンジリーグに上がってからなので、丁度、2011年からですね。チームをなんとか宣伝したい、それならばブログがいいのではと知り合いから勧められたのがきっかけでしたね。

 

――監督業の傍、GMとして積極的にチームのプロモーションに関わっているようにお見受けしますが、ブログの活用は実際にどのような効果をもたらしてくれるのでしょうか。

(川邊) スフィーダ世田谷FCは、ブログにより認知度を高めたクラブであるという実感はあります。閲覧者の声もよく耳にしますしね。たとえば、ブログで飲食店などを紹介すると、サポーターがそこに行ってくれたりしてお店の方に喜ばれます。ブログを楽しみにしているという方々はかなり多いので、少なからず宣伝効果はあるのかなと思いますね。今でこそ、いろんなチームでも取り組まれていますが、Twitter上で試合中継もしています。これはおそらくスフィーダが先駆けではないでしょうか。SNSを活用して広報活動に役立てたい。試行錯誤は果てしなく続いていますが。

 

――数人の選手を中心に活発にブログを更新されていますが、選手個人のSNS活用はそれと比べると消極的な印象があるようですが、それはやはり女性発信者への配慮があるからでしょうか。

(川邊) はい。選手たちには規制をかけていますね。アカウントは持っていても公開範囲を限定してもらっています。やはりSNSの普及と共に、不特定多数の人と気軽に繋がれてしまうので、便利な反面、危険性も高い。そういった意味からも選手たちを守らなければならないですし、発信者としてのリテラシーなど、教育も必要だと考えています。

 

――女子の世界の中で立ち回るために、川邊監督はどのようなことを心がけていますか。

(川邊) 女性の世界は一般的には難しいと言われているかもしれませんが、僕は女子サッカー界にいるので、女子的な心理をよく理解しているつもりです。一度関係を築ければ、どこまででもついてきてくれますし、その反面、不信感を抱かれてしまうと男性以上敬遠されてしまうこともあると思います。100か0かみたいなところはありますね。選手の力を引き出すためには、男子も女子も変わらないと思いますが男子以上にまずは人間関係ありきですね。

東京オリンピックを見据えて

(C)SFIDA SETAGAYA FC

――川邊監督は、2001年のクラブ創設期からクラブ運営に携わってこられましたが、これまでの歩みをどう捉えていますか。

(川邊) 今年で16年目、現在はなでしこ2部ですが、これまでに1部に上がれるチャンスもあったので、個人的にはスピード感というところに関しては、あまり納得していません。

 

――では、GMというお立場で、現在の認知度ならびに、観客動員数などの運営面に関してはいかがでしょうか。

(川邊) おらが街のサッカークラブというフレーズを耳にする方も多いと思いますが、遠征の際にも、お年寄りの方々が熱心に応援されている場面をよく目にします。しかし、東京は地方都市とは違って娯楽が溢れているという現状があります。集客に関しては苦戦しているという状況が続いていますが、潜在的なポテンシャルはどこのクラブよりもあると自覚しています。

一つの要素を上げるとしたら、やはり3年後に迫っている東京五輪に他なりません。現時点で掲げている我々の目的は、東京五輪開幕までに1部に所属していること。そして願わくばスフィーダ世田谷FCから“なでしこジャパン”の選手を輩出したい。女子サッカーで世田谷を、もっと大きく言えば東京を盛り上げる一つの材料になりたい。

それにクラブ事務所の近くに大蔵運動公園陸上競技場があります。そこにアメリカ代表がキャンプ張る予定ですが、実は我々もそこのスタジアムを使いたいと考えています。現状は老朽化が著しいですが、全面改修になり、屋根付きの2000人規模のスタンドが設置され、更衣室などの内側も含めてフル整備される予定です。やはりホームスタジアムがなければ動員は難しい。それは首都圏のクラブ共通の悩みでもありますから。

 

――女子サッカーの魅力を高めるために、多くの人たちを巻き込むために必要なことは何でしょうか。

(川邊) エンターテイメント的な要素が必要だと思います。がむしゃらだとか、ひたむきさとか、それも必要かもしれませんが、競技力では男子には敵いません。確かにお客様によっては女子の方が観やすいという人もいますけどね。プロモーションの戦略を練り上げて、もっと選手個人の魅力を発信してファンを獲得すること。女子スポーツならではの魅力を高めることが大切ではないかと思います。

育成なきクラブに未来はない。

(C)SFIDA SETAGAYA FC

――なでしこリーグには、様々な形態のクラブが混在しています。Jリーグクラブの下部組織もあれば、実業団のクラブもある。学校法人やNPOなどの非営利団体のクラブも所属しています。現在、スフィーダ世田谷FCはNPO団体として活動していますが、川邊監督は今後どのような理想像を思い描いているのでしょうか。

(川邊) 強いチームと対戦したい、そのためになでしこリーグ1部を目指したい。スフィーダ世田谷FCにとって、競技力の向上がそもそものリーグ参戦の目的でした。しかし、上位リーグに上がるに連れて、リーグの価値を高めるための一助になっていかなければなりません。1部を目指す上で、しっかりとした収益構造をつくらなければいけないですし、そのためには今後、NPO団体という構造に限界が見えてくるかもしれませんね。

 

――歴史的に見ても、女子単体クラブとして存続し続けることは難しいと囁かれていますが、16年目を迎えても尚、力強い足取りで歩み続けているスフィーダ世田谷FCの強みは何でしょうか。

(川邊) 運にも恵まれていると思いますが、やはりトップチームだけではなく、長きにわたり培ってきた育成にあると思います。ピラミッドでいう土台がしっかりしているのが大きな理由ですね。トップチームを主体に下部組織を細々とやるのではなく、まずは土台をしっかり築いて徐々に尖らせていく。土台がしっかりしているので、もし仮に選手が抜けてしまっても下部組織から補充できる。一気にチーム力が低くなることはありません。そこがスフィーダ世田谷FCの強みですね。

 

――育成に対するこだわり、川邊監督の持論をお聞かせください。

(川邊) 選手を育てることは最重要課題だと考えています。スフィーダ世田谷FCには独自のサッカー観があります。それを全カテゴリーに浸透させようという狙いがあります。下部組織の育成がこのクラブの未来に繋がることは間違いないですし、やはりベレーザさんのような形は一つの理想像だと思います。外からの補強で強化することも大事ですが、まずは内側も含む両面から強化したい。そのために一貫した指導を心掛けていますね。

 

――スフィーダの一貫性とは、どのような形なのでしょうか。

(川邊) 全カテゴリー共通して取り組んでいるのは攻守の切り替えのところ。守備から攻撃、攻撃から守備、攻守の切り替えをとにかく速くすること、ボール保持率を高める、ポゼッションサッカーというよりは、ゴールに直結するようなダイレクトプレイを意識するということ。走る、戦う、戦術理解この3つを重視していますね。そこだけは絶対に相手に負けない。ここをベースとして下部組織から徹底しています。チーム力を保つためには一貫性ありき育成が必須です。

 

――今後の目標をお聞かせください。

(川邊) 今、クラブ的には現実問題として1部に上がることで、支援を増やしていくことが必要です。それと同時に様々な取り組みを実現させていくために人員を増やしていかなければいけない。そのためにもやはり勝つことが先決です。

やるからには上を目指したい。上を目指さなかったら競技としてのスポーツをやっている意味が薄れると考えています。これが僕のスタンスです。ピラミッドの土台からスタートした当時中学1年生の子たちが、少しずつ積み上げていって大人になりチャレンジリーグに入った。そして今、2部リーグを戦っている。彼女たちをより高いステージに羽ばたかせることは僕の使命ですから。

そして、男女含めて東京23区のクラブの中で、トップリーグを戦っているのはスフィーダ世田谷FCだけですから。そこのこだわりは強いですね。

 

――本日はお忙しい中ありがとうございました。

川邊健一(かわべ けんいち)
 1980年12月25日生まれ

経歴:スフィーダ世田谷FC監督兼GM(2001年〜)

 

【取材後記】

以前にもお伝えしたが、なでしこリーグは様々な形態のクラブが参戦している。Jクラブの下部組織や実業団、そして学校法人や非営利団体など。今回取材させていただいたスフィーダ世田谷は非営利団体にあたる。

ブロリーグを掲げる以上、サッカーは興行であるべき。ボクにはこのような自論がある。お金を支払った観客にはサッカー観戦を楽しむ権利があるからである。頑張っている私たちを応援してくださいだけでは運動会の領域を出ることはない。そんな問題提起を含み敢えて提唱している。

各クラブは競技力を高めるだけでなく、満員のスタジアムを作り出すことが必要である。コレはファン、サポーターならびに関係者一同の願いでもあるはず。であれば先ずは興行で然るべきという共通の画を掲げるべきではないだろうか。

その点に集約すると非営利団体という冠にはいささか合点がいかない。実のところボクはそう感じていた。しかしである。ではなぜ、なでしこジャパンが世界一を成し遂げたのだろうか。この答えが当インタビューで川邊氏が語っていた育成の重要性にあたるのではないだろうか。

育成の積み重ねこそが日本女子サッカーの強味である。改めてそれを実感した。そのためにどんな運営方法を選択すべきか、その一つが非営利団体という道筋なのだ。しっかりとした土台が必要、だからこそ次のステップへ挑戦できる。2020年、スフィーダ世田谷がどのような進化を遂げるのか楽しみで仕方がない。

〈了〉

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