我々のミッションはスタジアムにより多くの“歓喜”をもたらすこと。新しい時代を拓く〜Create a New History〜<インタビュー FC岐阜 宮田 博之社長、花房 信輔事業企画チームリーダー>
再び岐阜にやってきた。目的地は岐阜メモリアルセンター長良川競技場から徒歩5分ほどの距離にあるFC岐阜事務所。ちょうど昨年と同じ頃にこの場所を訪れ、『J2参入10周年〜挑戦challenge〜FC岐阜の集客アップ大作戦の全容に迫る』を執筆した。
前回とは異なり、今回はFC岐阜側からオファーが届いた。その内容は前記事の取材後記でお届けした『女子サポミーティング』で挙がった女子サポーターからの要望が着実に実現しているとのこと、それに加え新たな企画・イベントが続々と生まれ、昨年以上の盛り上がりを見せているというのだ。それらをぜひ取り上げて欲しいという要望だった。
昨年のFC岐阜はJ2参入10周年という節目に相応しい成果を達成した。各種イベントの盛況に加え、初の隣県対決『名岐ダービー』では史上最高の観客動員を実現。年間観客動員も史上2番目という数字を残した。
今シーズンは現在、リーグ終盤戦を迎えようとしているが、チームは第30節を終えた時点で18位(22チーム中)クラブワースト記録に並ぶ7連敗、苦境に立たされている。しかしながらチームの戦績不振とは裏腹に昨年と同様に観客動員は好調のようだ。
今回の訪問の目的はFC岐阜のホームスタジアム『長良川競技場』でナニが起きているのかを徹底取材することである。対談の席について頂いたのは、FC岐阜宮田社長と事業企画チームリーダー花房氏。彼らが繰り出す”企画力”と”実現力”についてたっぷりとお話を伺ってきた。
さらに今回の取材にはもう1つの目的があった。それはなんと、あの元イタリア代表のファンタジスタ、アレッサンドロ・デルピエロ氏が岐阜を訪れるという企画だ。さらにあの伝説のサッカー漫画『キャプテン翼』の作者である高橋陽一先生も岐阜を訪れる予定だそうだ。どういった経緯でこの驚きの企画が生まれたのか、今後どのような展開が待ち受けているのか。こちらも合わせて話を伺ってきた。
観客動員数を増やすために、スタジアムにより多くの”歓び”を創り出す。これはサッカーに限らず、あらゆるビジネスに置き換えることができる考え方である。新しい時代を拓く〜Create a New History〜FC岐阜の新たなる挑戦から目が離せない。
【新生マスコットギッフィーも大活躍!?FC岐阜エンタメ追求型集客術の全容】
――ちょうど今から一年前に取材させていただいて、これまでにない斬新なエンタメ追及型の集客をされているということを記事にさせていただきましたが、今回はその後のお話を伺おうと考えています。さらなる活動の成果を数字的なものも含めておきかせください。
(花房) 前回の取材時に開催した『FC岐阜スタジアム女子会』の際に挙がった女子サポーターからの意見を受け止めて、宮田社長の方からナガラジェンヌ(FC岐阜女子サポの通称)にもっとスタジアムで楽しんでもらおうと、ほぼ毎試合、何かしらのナガラジェンヌ企画を打ち立てています。
例えば女性限定にTシャツをプレゼントとか、エスコートキッズを女性にやって頂いたり、選手との写真撮影会など、あとは年に2回『ガールズフェス』というイベントを開催しています。最近では、『パン作り教室』を選手と一緒に実施しました。
――スタジアム内でですか?
(花房) はい。スタジアムで。(笑)それに女子会で挙がった意見で「託児所があると嬉しい」という声にお応えして、スタジアムのそばにある県の施設にご協力いただき託児所をスタートしました。グッズ展開も、推しメン選挙で好きな選手を投票していただいて、そのベスト5にノミネートされた選手を描いた抱き枕や、その選手の顔が描かれたハンガー(ユニフォームとかけると選手が着ているように見えるもの)を作るなど、一過性にとどまることなく継続的にイベントを開催しています。
――それに当時、意見にも挙がっていたインスタグラムも積極的に活用されていますよね。
(花房) はい。すぐにスタートしました。#ギフジェニック というハッシュタグで投稿していただき、そこから毎月ピックアップして公式インスタグラムに月間優秀賞として掲載させていただいています。インスタグラムをはじめ、SNSそれぞれの活動に数値目標をたてていますが順調に伸ばしているという状況ですね。
(宮田) 女性にフォーカスしたイベントやファミリー向けなど、イベントの種類、企画の多さはおそらく一番多いのではないでしょうか。現在は連敗が続いていますが、一時は4連勝があり、7位になったり、昨年は新しいFC岐阜を観たいという声が、今年は強くなったFC岐阜を観たいという想いで来場してくださっているお客様が多いように感じています。
もちろんチームが勝ったり負けたりと、試合に一喜一憂していただく醍醐味はありますが、それとは別にスタジアムで過ごす4、5時間を楽しんでほしい。その楽しさを追求することが観客動員アップにつながるのではないかと考えています。
(花房) まず初めてスタジアムに訪れてもらうには何をしたらいいのか、来ていただいた方にどう楽しんでいただくか。この二つに重点を置いています。そのために広報計画の見直しとして、ホームページをリニューアルしたり、無料情報誌の強化をしたり、それに先ほど説明させていただいたSNS、マッチプログラムの見直し。そして新しいマスコットの『ギッフィー』の誕生ですね。
――昨年伺ったタイミングではまだ誕生していませんでしたね。
(花房) はい。10月(2017年)にマスコットが生まれまして、それからギッフィーのLINEスタンプやバス、自販機、ぬいぐるみもでき活発に動いています
(宮田) ギッフィー人気は上々です。スケートボードにも乗りますし、それにダンスも上手い。今年から『GGG』(トリプルジー)というプロのチアガールズが誕生しました。FC岐阜では、グリーンエンジェルズというチアダンススクールを運営していまして、幼稚園から高等学校までの女の子100人位の集団で、練習した成果をスタジアムでお客さんに見てもらう。ただ高校以上の子からプロとしてやりたいという声が挙がっていて、それならばということで、エイベックスさんの協力で選考オーディションから振り付け、衣装まで全部、コーディネーションをお願いしました。そこで選ばれたダンサーですので大変人気が高い。このダンサーたちとギッフィーが一緒にダンスをするわけです。
――ギッフィー活躍していますね!
(花房) アンバサダーも増えました。これまで同様、元乃木坂48の伊藤寧々さんにはFC岐阜応援マネージャー、SKE48の町音葉さんにはアンバサダーとして継続してもらっています。2018シーズンからは、東海発でオリコン1位になるなど全国で活躍中のエンターテイメントグループ『祭nine.』さんにもアンバサダーとしてスタジアムライブや各種イベントを通じてFC岐阜のPRをしていただいています。またFC岐阜のオフィシャルソングを岐阜出身のアーティスト“シネマスタッフ”さんに作っていただきました。
――ますます派手な演出になってきていますね。
(花房) そうですね。マッチデイプログラムのイベントスケジュールを見ていただくと分かると思いますが、昨年と比べて格段にイベントが増えました。あとは毎試合、ホームゲームの際に、スポンサー様の協力によりステージカーを出せることになりました。これまではスタジアム内のイベントや屋台村、芝生広場のみでしたが、そこに加えて場外ステージが増えましたので新たに楽しんでいただけるポイントがまた一つ増えました。
――イベントはキックオフの何時間前から始まるのでしょうか。
(花房) 3時間前からですね。
――早めにお越しになるお客様も増えてきているのでしょうね。
(宮田) 多くなりましたね。これまでは1時間くらい前に入場が一般的でしたが、今ではもう2時間前には到着していただいている感じですね。
――これまでに実施してきた様々なイベントもさらにパワーアップしているとお聞きしていますが。
(宮田) 岐阜県内の全42市町村の多くに手を上げていただき、一試合につき1~3市町村がホームゲームを盛り上げてくれていますが、毎年、充実度が高まってきているなど段々ボルテージが上がってきています。さらに、舞鶴の海上自衛隊から音楽隊が来てくれたり、川崎重工さんがヘリコプターからボールを落とす空中始球式をやってくださったりと、ユニークな企画が目白押しです。
(花房) 派手に見えるかもしれませんが、基本的にどのイベントも各企業・行政・団体様にご協力頂いたり、企画にご協賛頂くなどのご支援を頂き実現できていまして、本当に感謝しております。
――それに他チームとのコラボ企画も相変わらず充実していますよね。
(花房) 今シーズンは新たに、京都(サンガS.C.)さんとお互い“三大祭り“という共通点があるので、”祭り“というイベントでいろいろなコラボ企画を実施したり、(ロアッソ)熊本さんとは”J同期対決“というコラボをしたり、カマタマーレ讃岐さんとは岐阜の”岐”と讃岐の“岐“が一緒だよねということで”岐が被ってるぞダービー“とかですね、今シーズンも昨シーズンより各クラブとのタイアップというのも増えています。
――クラブ間コラボは、もはやJ2独自の名物企画になっていますよね。
(宮田) このようなコラボはお互いの観客動員に貢献しています。実際、私どもの方でも一つのダービーで、ホームで2000人位は増えています。相手チームも増えている。お互いにプラス効果が出ていますから、推奨する価値はあると実感しています。
――どの企画をおいても、宮田社長の寛容さが伺えますね。
(宮田) もう全く寛容です。もうジャンジャンやれと言っていますから。(笑)
(花房) 社長の方針ですから。僕はダメと言われたことないかもしれないですね。
(宮田) 思い切ってやってみる、悪ければ次は辞めておけばいい、良いことはどんどん続ける。全てはお客さんに楽しんでいただくため、せっかく試合を観に来てくれたのに、それだけで帰るのではなくて、いろんなイベントを楽しんでもらう。そうすると親子の会話も増えるし、みんなで行こうとなりますから。もちろんいろんなタイプのお客さんがいらっしゃいますけど、グループで来る、家族で来る、友達と来る、そういうことがどんどん増えていけば、岐阜の固定的な一大イベントとして成長するのではないかと思っています。
【好調の観客動員数〜昨季と今季の違いは?〜】
――観客動員の方に話を移しますが、まずは昨年の振りと、今シーズンの現時点での手応えをお聞かせください。
(宮田) 昨年は1万人超えるホームゲームが三度ありました。一つは横浜FCを迎えた日、この日はカズ(三浦 知良)選手の“50歳での出場“がギネス記録になるという話題の試合です。二つ目は、毎年、岐阜市にやっていただいている『岐阜市民総力戦』という岐阜市民を無料で招待しますというイベントを開催した日。三つ目は、名古屋グランパスを迎えた『名岐ダービー木曽川の合戦』。初めての隣県同士のダービーマッチということで非常高い関心を向けていただき、このスタジアムとして史上最高の観客動員数を記録しました。年間に置き換えると約14万6000人、史上2番目の来場者になりました。
そして何よりも昨年は大木監督の初年度でした。大木監督のサッカーは、パスを主体に緻密に組み立てられ、スピード感溢れるサッカーで今までとガラッと変わりました。このサッカーが観たいというお客様が増えたことが底上げになっていると感じています。
一方、今年は残念ながら、少しアンラッキーな部分があります。昨年と同じような条件の試合で悪天候が続いてしまいました。そしてやはり7月の集中豪雨の影響が大きかった。しかしながら現在(第30節時点)で昨年を上回っています。
――そういう意味では今年に関しては本物の数字ですね。
(花房) 今シーズンは昨年の倍くらい悪天候で苦しんでいますが、とはいえベースができてきている感覚はあります。
昨年は最終的には1試合平均の来場者が6977人で8番目、チーム成績は18位でした。現在は少しもたついてしまっていますが、ベスト10に入っているチームはほぼJ1経験チーム、2チームだけがJ1を経験してないチームです。そういう意味では健闘しているのかなと思っていますが、目標はやはりJ1に行くことに他なりません。
【192社から250社を超えた!?FC岐阜 スポンサー激増の理由】
――三度の大入りが総数を引き上げた印象が残った昨年度と比べ、今シーズンは積み上がったベースが底力になっている。この底力の背景にはスポンサー企業の増加も影響しているのではないかと想像できますが、今年のスポンサー企業は、昨年と比べてかなり増えていますよね。
(宮田) 増えましたね。昨年の法人のスポンサーは192社でしたが、現在は250社を超えました。ここ近年で急激に増えていますが、特徴的なのはBtoB企業(企業がお客様の会社)の参入です。コマーシャリズムに乗るのは、通常BtoC企業(消費者がお客様の企業)がほとんどです。これまでは消費者向けの企業でなければ広告掲載の意味がないと思われていましたが、ここ最近、大学との提携が増えてきたことをきっかけに、求人活動にも効果的ではないかと気づきました。
岐阜は製造業が多いんです。しかし何を製造しているのかも、どんな特長のある企業なのかも知ってもらえてはいない。ところがその多くの企業さんはもう50年も70年も続いている立派な企業なんですよ。就職活動中の学生に知ってもらえる、その親御さんたちにも知ってもらえる。それに看板に書かれている企業名を見て「あ、お父ちゃんの会社の看板アレだ」と。
――すごく意味ありますよね。
(宮田) ありがたいことにそういう企業がどんどん増えています。それに伴い、サンクスマッチのスポンサーを希望してくださる企業さんも増えています。社員や社員の家族の皆さんがスタジアムを訪れて、郷土岐阜のために自分の会社もこうやって頑張っていると言える。非常に意義があったと喜んでいただいています。
岐阜にデル・ピエロがやってくる!?
――全緑宣言?これはどんな企画なのでしょうか。
(宮田) 全力で頑張るぞという全力を緑にかけて“全緑”と。
(花房) 残り5試合も全力でスタジアムを盛り上げていくイベント企画を実施していきますというものになります。
――追い込みかけますね〜(笑)その企画の第1弾がこちらですよね。
(宮田) はい。デル・ピエロさんが岐阜に来ます。
――なぜデル・ピエロさんが来日することになったのでしょうか。
(宮田) 実はこの企画はキャプテン翼が紡いだご縁なんですよ。
――先ほどからユニフォーム袖にキャプテン翼が描かれているのをみて気になっていたのですが、スポンサーということでしょうか。
(花房) そうですね。野田クレーンさんという会社が岐阜にありまして、その野田クレーンさんが『キャプテン翼スタジアム垂井』を垂井町に作ることになりまして、ここから広がってデル・ピエロさんに来ていただけることになりました。
――そういう経緯があったのですね。
(宮田) 彼がキャプテン翼のファンだと聞いています。それを知った上で、袖にキャプテン翼が描かれたウチ(FC岐阜)のユニフォームを、彼のネームと背番号をつけて、ギッフィーがプレゼントしました。そうしたら「ギッフィーって誰だ?」から始まり、「FC岐阜ってどこだ?」とつづき、来日していただける運びになりました。
――このポスターに書かれている9月23日(日)第34節 東京ヴェルディとのホームゲームの際に、岐阜にデル・ピエロがやってくるということですね。
(宮田) その暁には、サッカ―教室を開催して観客のみなさんの前で子供たちにサッカーを教えてくださる。そして原博実副理事長とタレントの平畠啓史さんを交えてトークショーをします。またデルピエロゾーンからのシュートを披露していただきます。
(花房) ギッフィーと対決をするわけです。各種、グッズやデザインチケットも用意していましたがスーパーシートは発表した8時間後に完売。県外からのかなりの数の問い合わせがありました。当日はおそらく全国各地からいらっしゃるのでしょうね。
――そもそもの話を伺ってもよろしいでしょうか。野田クレーンさんとキャプテン翼にはどのような関係があるのでしょうか。
(宮田) そもそも野田クレーンさんが社有で土地を持っておられ、その活用方法を考えていました。お孫さんがサッカー好きであることをきっかけに、垂井の町をサッカーの町にしたいという想いに発展し、サッカースタジアムを建設することになりました。このスタジアムをメモリアルな場所にするために、この企画をキャプテン翼と関係のあるフロムワンという会社に設計をお願いし、『キャプテン翼スタジアム垂井(10/1完成予定)』というネーミングになったわけです。それをお互い岐阜同士、この名前をもっと社会一般に知ってもらおうとFC岐阜のユニフォームの袖につけることになりました。
(花房) 元々、野田クレーンさんのスタジアムに『キャプテン翼スタジアム』という名前がつくということに根底があって、それをユニフォームの袖にスポンサーとしてつけていただくことになったというところから始まって、デル・ピエロさんの来日につながりました。それからもう一つ、キャプテン翼の作者 高橋陽一先生にも来ていただけることになりました。
高橋陽一先生も!葵新伍も来る!?
(宮田) デル・ピエロは9月23日(日)、10月13日(土)に高橋先生が来られます。
(花房) 高橋先生関連ですと、キャプテン翼に“葵 新伍”というキャラクターがいまして、彼が岐阜出身ということで、9/1にFC岐阜のドリームプレイヤーとしてFC岐阜に入団しました。今後は“葵 新伍”くんが活躍するという展開もどんどん広がっていくということですね。
(宮田) 高橋先生にはFC岐阜用に一枚、特別に絵を描いていただいて、それを私どもが使用できるということ形になります。
(花房) 発表当日は、無事に葵新伍くんのパネルを出す事ができましたが、今後さらに各種バナーや、グッズなどの展開も計画しています。
――相変わらずFC岐阜のスタッフさんたちは楽しそうですね。
(宮田) そうですね!ファン・サポーターの皆さんに喜んでいただけるスタジアムを目指して、これからも社員と一緒に新しく拓いていきます。
――本日はお忙しい中ありがとうございました。
当日のインタビューの模様はこちらでも視聴できます。
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