サッカー馬鹿

2019.4.8

勝ちたいという気迫に満ちていた磐田 3つの想定外に湘南敗戦〈明治安田生命J1 第6節 湘南0-2磐田〉

ピッチに倒れこむ鈴木 冬一

明治安田生命J1 第6節 湘南ベルマーレ0-2ジュビロ磐田(BMWスタジアム/13282人)
72分 オウンゴール
90+6分ロドリゲス
 
77分、1点ビハインドの状況の中、湘南 曹貴裁監督は残り二枚の交代カードを使い切る。
 
センターバックの小野田 将人に代えてシャドーの大橋 祐紀を投入。もう一枚はシャドーの武富 孝介から攻撃的MFの新外国人レレウを投入。レレウはリーグ戦初出場となる。
 
この交代により湘南はデフォルトの3バックから4バックにシステム変更、右WBの鈴木 冬一左SBへ、山根 視来が右SBサイドバックに、杉岡 大暉がCBに入れ替わる。
 
ところがそのわずか3分後、左の鈴木冬を再び右サイドへ戻し、杉岡のポジションを左へスライドさせる。
 
さらにその4分後には、右のレレウを左サイドへ。長身CBフレイレを前線にとどめ、指宿 洋史とともにパワープレーを狙う。
 
二転三転の指示にピッチ内は混沌としていた。
 
結局、湘南の猛攻は報われず、逆にCKからのクロスを相手GKカミンスキーにキャッチされ磐田が高速カウンターを発動。ゴール前まで上がっていたGK秋元 陽太のスプリントも虚しく、ロドリゲスが無人のゴールに流し込みジ・エンド。
 
湘南にとって明治安田生命J1第6節 磐田戦は相次ぐ想定外の出来事に見舞われた。
 
はじめの想定外はピッチに送り出されたスタメンだった。
 
湘南のスタメンはほぼ前節と変わらない陣容。しかしトップには、予定していた山崎 凌吾が負傷の影響でメンバー外となり、代わりに指宿が起用された。指宿は山崎と同じく長身でポストプレーに向いているセンターフォワードと目されていた。
 
ところがボールが収まらない。楔(くさび)のパスがことごとくボールロストを生み、湘南は思うように前線にボールを運ぶことができない。
 
指宿は山崎の代役を託されていたのだろうか。あるいは彼本来の持ち味の発揮を促されていたのだろうか。少なくともこの試合、指宿がヘディングシュートを放ったシーンは記憶にない。
 
二つ目の想定外は敵にあった。
 
前線から果敢にプレスを仕掛ける、ボールを奪った瞬間、すべての選手が相手ゴールに矢印を向け素早くボールを運ぶ。これまで湘南は一貫してアグレッシブな戦いを繰り広げている。
 
圧倒的な走力で相手のミスを誘発し試合のペースを握りたい湘南、テクニックに優れた選手を揃える磐田は素早いパス交換と流動的なポジショニングで相手のプレスを交わす。そんな展開が予想された。
 
ところが、走力に優る相手に対し走力で挑む。この一戦を浮上のきっかけにしたい磐田はこれまで以上にアグレッシブな姿勢をみせた。
 
印象的なシーンがふたつある。
 
16分、CKの流れからふわりとゴール前に放り込まれる。このボールに山田 大記とアダイウトンがつづけざまに飛び込むがGK秋元が必死にボールを抱え込む。この秋元に対して大久保 嘉人がプレーとは関係のないところで蹴ったように映った。
 
もうひとつは19分、大久保とマッチアップした鈴木冬がファウルの判定でイエローカードを提示されたシーンだ。一見、鈴木冬のプレスがアフターチャージになってしまったように映るこのシーンだが、見方を変えれば大久保が誘い出したようにも見える。これまで何度かやり合っていた両者だけに、若い鈴木をベテランの大久保がいなす格好となった。
 
すべてが褒められるシーンではない、しかし自らが先頭に立ちチームを鼓舞する、クレバーな判断で相手を陥れる。高い経験値を持つ大久保ならではの振る舞いにサポーターを含め湘南の選手たちは憤慨したに違いない。
 
3つ目の想定外は72分、磐田の先制シーンにある。右サイドでボールを保持した大久保がタメを作りライン側を回り込むように駆け上がる松本は昌也にスルーパス。松本のキックは杉岡の足に当たり、その後ろにいま小野田の足を弾く。コースが変わりGK秋元は反応しきれずボールはゴールに吸い込まれた。
 
アクシデントさながらの得点シーンだが、奇しくも大久保 嘉人が起点となっていた。
 
敢え無く敗戦を喫した湘南だが、この敗戦は今後の戦いを見据えた大きな問題提起になったのではないだろうか。これまで湘南は「誰が出ても変わらない」層の厚さに加え戦術の浸透が持ち味のチームだったが、今後は相手にとってどれだけの想定外を突き付けることができるのか。新たなオプションを模索することだろう。

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