明治安田生命J1第8節 川崎フロンターレ2-0湘南ベルマーレ(等々力/19556人)
21分 阿部 浩之(川崎)
37分 知念 慶(川崎)
「あれだけ取ったボールを相手に渡しているようでは、とてもじゃないけど世界では戦えない。」試合後の会見の場で曹貴裁監督は東京オリンピック代表有力候補として期待されている杉岡 大暉と齊藤 未月を名指しで叱咤。
「戦い方自体は後悔はない。」曹監督はこうも言い切っている。相手がどうだろうが、あくまでも己のスタイルを貫くんだ。そんな強い意志を感じる。
しかし完敗だった・・・
アグレッシブにボールを追い回す湘南に対し、巧みなポジショニングとワンタッチパスであっさりとプレスをかいくぐる川崎。少しでもほころびを見せようものなら、一本の縦パスで一瞬で背後を突かれてしまう。この日失った2得点はいずれもこの”一本の縦パス”が起点となった。
問題はボールの出どころケアだった。掴み所がないポジショニングでボールを受けゲームメイクに奔走する家長 昭博、アイデアに富んだパスで打開を図る大島 僚太。劣勢を強いられた湘南はこの2人のプレーヤーに翻弄されていた。
湘南はこれまで通りの形(3-4-2-1)を敷き、それに対して川崎は従来の(4-2-3-1)から(4-4-2)にシステム変更。小林 悠と知念 慶を2トップに据えた。
システム変更で対峙する相手との間合いをずらし持ち前のパスワークを加速、2トップが代わり代わり果敢に相手ディフェンスラインの背後を伺う。湘南は完全に相手の術中にハマってしまった。
確かに曹監督の指摘どおり、ボール奪取からのファーストパスに精度を欠き自滅に陥ってしまった部分はある。しかし相手の奇策に対し戦術的な対応には踏み切らなかったのもまた事実だ。
2点ビハインドで迎えた後半、曹監督はシステム変更を決断、3バックの一角を担う小野田 将人に代えて秋野 央樹を投入。これにより両ウイングバックの岡本 拓也と杉岡のポジションをひとつ下げ4バックにスイッチ、秋野をアンカー気味のポジションに配置。中盤に厚みを持たせてボールの出どころをケア。
相手2トップへの対応に加え、5バック気味に引かざるを得なかったディフェンスラインを前へ押し上げる措置を行った。
秋野の投入によってセンターバックのフレイレが積極的に前線に駆け上がるシーンが見られ、さらに鈴木 冬一の投入によりサイド攻撃を活性化。前への推進力を高めた湘南が次第にペースを取り戻した。
残念ながら得点を挙げることはできなかったが、相手のストロングに対し対応策に打って出た曹貴裁監督の采配は奏功した。
王者川崎を前に圧倒された湘南だが、この試合こそ今後の戦い方に大きな影響を及ぼすターニングポイントになるかもしれない。それは個のレベルアップの必要性もさることながら、状況を打開する戦い方にあるのではないだろうか。
そういった意味において、ルヴァンカップGSで試運転した秋野のリベロ起用は川崎戦における打開策にもつながっている。
「誰が出ても遜色ない」規律性の高さに加えスタイルの浸透は湘南の大きな強みだが、戦術的なアイデアや個人の閃きもう一段高い強さが求められる。
湘南はこのあとミッドウィークにルヴァンカップGS横浜FM戦を挟み敵地で行われる鳥栖戦に臨む。
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