J1昇格プレーオフ 松本山雅vsファジアーノ岡山
J1昇格を賭けた戦い。プレーオフ準決勝はあまりに残酷な結末だった。
42試合という長丁場を勝ち点84、自動昇格を果たした2位清水エスパルスとは同勝ち点で全日程が終了。得失点差で敢え無く3位に転じてしまった松本山雅にとって、どんなモチベーションを持ってプレーオフに臨んだのだろうか。
プレーオフ準決勝、松本山雅と対戦したのリーグ戦を6位で終えたファジアーノ岡山だった。ファジアーノ岡山の勝ち点は65、奇しくも7位町田ゼルビアとは同勝ち点で並ぶも、得失点差で辛くもプレーオフに滑り込んだ、いわばラッキーなチームと言ってもいい。
勝ち点差19。そんな両者が対戦した松本山雅の本拠地アルウィンでの一戦。同点ならば順位が上の松本山雅が決勝進出、引き分けでも後がないファジアーノ岡山。ファジアーノ岡山の捨て身の反撃が始まった。
試合開始から、高いボール保持率で試合を優位に進める松本山雅、対するファジアーノ岡山は防戦一方。力の差は歴然、松本山雅の先制は時間の問題だと、誰もが感じていたのではないだろうか。
ファジアーノ岡山にとって、この試合展開は想定の範囲内だったのかもしれない。幾度となく訪れる決定機を凌ぎ、虎視眈々とカウンターを狙う。その目論見通りに先制点が生まれる。
23分、前線に大きく蹴り出されたボールを中央で待ち構える赤嶺がヘッドで落とす、押谷がそのまま持ち込み、前に出過ぎていたGKシュミット・ダニエルの脇を突いた見事なシュートが突き刺さりファジアーノ岡山がリードを奪う。一瞬の隙という言葉しか見つからない。ファジアーノ岡山の作戦が見事にハマった瞬間だった。
その後、負ければ後がない松本山雅の猛攻が始まる。74分のCKがそのままゴールへ吸い込まれる、パウリーニョのラッキーなゴールが決まるまでの松本山雅は、明らかに焦燥感が漂っていた。その証拠に、同点に追いついてからのアルウィンは安堵感に包まれていた。
ファジアーノ岡山にとって、スタジアムに蔓延する安堵感こそが、自らのペースを取り戻す絶好の機会なのだ。
後半ロスタイム、松本山雅にとっては絶望的な、ファジアーノ岡山にとっては待ちに待った歓喜の瞬間が訪れる。中央に上がったボールをヘッドで落とし、走り込んだ赤嶺が放ったシュートがゴールに突き刺さる。2点とも同じ形だ。競り合いで、味方が勝つのを信じて、前線に駆け上がる。いずれもフリーで抜け出した選手が決めたゴールだった。
捨て身の戦いを挑む者と、盤石の勝利を伺う者。勢いの差は歴然だった。
はっきり言おう。シーズン3位で、下位に圧倒的な勝ち点差をつけてリーグ戦を駆け抜けた松本山雅こそがJ1昇格に相応しいチームであることに疑いの余地はない。下克上と騒ぐマスコミもどうかしてる。6位のチームがJ1に上がっても勝てっこないからだ。一昨年のモンテディオ山形が良い例だ。もし昇格プレーオフが存在するのであれば、J1を16位で終えた名古屋グランパスと争えばいい。
とはいえルールはルールだ。素晴らしい戦いを演じたファジアーノ岡山、雨の中遠方まで駆けつけたサポーターにおめでとうと言いたい。そして、余りにも残酷な結末を迎えてしまった松本山雅には、来シーズンの圧倒劇を期待したい。
もう1つの山、4位C大阪と5位京都サンガの対戦は辛くも4位C大阪か逃げ切った。何が起こるかわからない、一発勝負のトーナメントは確かに観ていて面白い。強いから勝つのではない。勝ったチームが強いのだ。最後までサッカーの醍醐味を味わい尽くしたい。