サッカー馬鹿

2019.6.19

南米王者チリの老練した駆け引きに翻弄された。果たして若きサムライのチャレンジは無謀だったのだろうか。〈コパアメリカ2019 チリ代表4-0日本代表〉

これは惨敗なのか、それとも貴重な経験なのか。良い悪いにつけその両方であると言える。
 
前回、前々回王者チリの老練した駆け引きの前に日本代表は惨敗した。
 
序盤こそ拮抗した展開が見られたが、前半終了間際に先制点を献上。間の悪い時間帯に得点を奪われてしまった日本代表は後半早々に追加点を奪われてしまう。その後は完全にチリにペースを握られ、前がかりになった相手を手玉に取りダメ押しの2ゴールでとどめを刺す。本気の南米勢相手に日本は何も出来なかった、おそらくコレが一般的な総括だろう。
 
まず残念なのが、森保監督は本気でグループリーグ突破を目論んでいたのかという疑問だ。
 
まずは失点のリスクを回避する、その上で奇をてらいカウンターを仕掛ける。弱者が強者を覆す王道のシナリオはピッチ上に存在しなかった。今大会を臨むにあたり「経験とレベルアップ」と話していた森保監督はその言葉どおり、王者チリ相手に真っ向勝負を挑んだ。
 
システムはデフォルトの[4-2-3-1]。キリンチャレンジカップで試運転した3バックはあくまでもオプションという位置付けらしい。この辺りもいかにも攻撃的なサッカーを好む日本らしい。センターラインに強者が並ぶ相手に対し、3バックでガッチリとブロックを築く、両ワイドも下がり気味にポジションを取り5バック気味に対応する。もし日本がリードした展開になれば、おそらく試合終盤はこうした割り切った戦いを選択したのだろう。しかし、日本は失点のリスクを顧みずチャレンジを貫いた。ただしそれは中途半端な姿勢だったと言わざるを得ない。その理由は2つある。
 
ひとつは原輝綺と杉岡大暉の両ワイドの消極性である。その原因は球離れの悪い前線の停滞感であり、相手との駆け引きもあったのだろう。それでも相手の最終ラインの背後を突くようなサイドからの鋭い突破はほぼ見られることはなかった。
 
もうひとつは19分に原が、21分に中山雄大が、早い時間帯にイエローカードを受けてしまったことだ。奪われたボールをすぐさま奪い返しにいく。攻守を素早く切り替える意識は高かったのだろうが、その積極性が仇となり逆に付け入られる隙を作ってしまったのも事実だ。
 
それでも日本は中島翔哉や久保建英が果敢にドリブルを仕掛ける。はじめこそ相手の鋭いタックルに体を投げ飛ばされるシーンも見られたが、特に代表初スタメンながらフル出場を果たした久保は自らがドリブルを仕掛け相手を鮮やかに交わしシュートを放つなど存在感を示した。
 
試合をとおして両チームが放ったシュートはチリが「15」に対し日本は「13」、柴崎岳の鋭いクロスに大学生ストライカー上田綺世が飛び込むなど、ロシアW杯セネガル戦でのゴールシーンを彷彿させる柴崎のパスセンス、4度に及ぶ決定機を生み出した上田のポジショ二ングは秀逸だった。それでも一度もゴールラインを割ることはなかった。もしその中の一つでも得点につながっていれば試合展開は大きく変わっていたはず。しかし、これがチリとの差であり日本の現在地なのだ。
 
点が獲れないよりも、守れないことへの不安。
 
もし本気で東京オリンピックで金メダルを目標にしているのであれば、己のスタイルを貫く覚悟も大切だが、割り切った戦いへのシフトチェンジは必要になってくるはず。そのためにも強靭な守備のブロックは欠かせない。決定機を逸したことを嘆くよりも先ずは守備の安定を図るべき。強敵と対峙したからこそ得られた教訓を今こそ生かすべきだ。

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