カタールW杯アジア二次予選、ミャンマーとのアウエー戦に勝利した日本は第二戦、ホーム初戦となるモンゴル戦で攻撃陣の爆発。伊東純也(ゲンク/ベルギー)の3アシストや代表120試合出場となる節目の試合に臨んだ長友佑都(ガラタサライ/トルコ)が10年ぶりとなるゴールを決めるなど格下相手に6得点、盤石の勝利を収めた。
この試合最大の注目ポイントはやはり森保監督の采配だろう。
これまで森保ジャパンの攻撃を牽引してきた「三銃士」の一角として右サイドに君臨していた堂安律(PSV/オランダ)がベンチスタート、代わりにスタメンに抜擢されたのはベルギー・ゲンクで活躍する伊東純也だった。
この日MOM級の活躍を披露した伊東は持ち味の俊足を生かし右サイドを切り裂き好クロスから3アシストを記録。1点目は自ら切り込み南野拓実(ザルツブルク/オーストリア)のヘッドをお膳立て、2点目は南野とのワンツーで中央に切り込み、3点目は酒井宏樹(マルセイユ/フランス)とのコンビネーションからアーリークロスを選択。カットインから積極的にゴールを狙う堂安とは異なり、バリエーション溢れるプレーでモンゴル守備陣を翻弄。試合後「ぶっつけ本番だった」と語っていた伊東だが、その順応力と攻撃センスを見せつけた。
注目采配はこれだけではない、大方の予想と反し、この日森保監督がトップに起用したのは永井謙佑(FC東京)だった。負傷により絶対的エース大迫勇也を欠いた森保ジャパンは永井の他に2人のCF候補を招集。鎌田大地(フランクフルト/ドイツ)、浅野琢磨(パルチザン/セルビア)だ。共に海外でレギュラークラスの活躍を見せている2人を差し置きスタメンに名を連ねた永井。彼に期待を寄せたのはやはり爆発的な快足と持ち前の得点感覚だろう。
圧倒的なボール保持力を武器に中島翔哉(ポルト/ポルトガル)、南野、堂安ら2列目の攻撃力を引き立てていた大迫とは異なり、前線を縦横無尽に駆け回り攻撃の起点をつくり、自らがタイミングよくゴール前に飛び出しゴールを狙う永井は既にエルサルバドル戦で代表初ゴールを挙げており、周囲との好連携を披露するなどチームとのフィットを証明。この日も1ゴールを挙げる活躍を披露した。
そしてもう一人は、こちらも1ゴールと結果を残した遠藤航(VfBシュトゥットガルト/ドイツ)だ。今夏、シント・トロイデン(ベルギー)からドイツ二部に戦いの舞台を移した遠藤は、未だ出場機会に恵まれず試合感覚が不安視されていた。代表でも板倉滉(フローニンゲン/オランダ)や橋本拳人(FC東京)の台頭により出場機会が激減、久しぶりのスタメン起用に期するものがあったのだろう。
ダブルボランチを組む柴崎岳(デポルティーボ/スペイン)が後方からゲームを組み立てる一方で、積極的に前線に駆け上がる一方、サイドの選手を巧みに引き立てるなど、ミャンマー戦でフル出場を果たした橋本とは異なるプレーを披露。ゲームメイク能力に長けた2人のボランチは森保ジャパンに新たな可能性を感じさせた。
当然のことながら、戦前のスカウティングによる選手起用を実践したであろう森保監督。これまで起用しつづけてきたメンバーに固執せず新たな可能性を引き出した手腕は絶賛に値する。さらには、格下相手に交代選手の起用に工夫を見せる場面は少なかったものの、注目の鎌田をトップ下とCFの2つのポジションで起用するなど、新たなオプションを模索する姿勢が見られた。
そして最後に、アクシデントに見舞われた酒井宏樹に代わりピッチに立った安西幸輝(ポルティモネンセ/ポルトガル)の存在感も目を見張るものがあった。これまで左サイドでの起用が多かった安西だが、右サイドでも遜色なく安定したプレーを披露。改めて両サイドで機能する順応性の高さを示した安西だが、欲を言えばもう少し長い時間見てみたい選手の一人だろう。
残念ながら、この日は出場がお預けとなった久保建英。一日も早く彼の代表初ゴールを観たいというファン、サポーターも多いだろう。けれどもこの日ピッチに立った新たな選手たち、加えて新たなオプションを見る限り、たとえ久保だろうとそう易々ピッチに立つことが許されない辺りが森保ジャパンの頼もしさの裏返しでもある。次戦、タジキスタン戦で名を連ねる者はもはや誰にも予想出来ないかもしれない。
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