麻生グラウンドで川崎フロンターレの練習見学
天皇杯準々決勝を控えている川崎フロンターレ
全体練習を終え、後片付けを終えた用具係がグラウンドを後にする。静まり返った麻生グラウンドの隅を走る3人の選手がいる。その中のひとりが大久保嘉人だ。
元日本代表選手、Jリーグ最多ゴール記録の保持者であり、三年連続得点王にも輝いたこともある大久保嘉人は、言わずと知れた超一流のサッカー選手である。
その大久保嘉人が、若手2人を引き連れて、誰もいないピッチで最後まで居残り練習をする。その姿に驚く者などいない。なぜなら彼のサインにはいつも”努力”という言葉を添えられるからだ。
全体練習後の風景
大久保嘉人という人間を現しているエピソードが幾つかある。病床の奥様を励ますために、息子3人と共に坊主頭に丸めた写真を自身のInstagramに投稿したことや、2010年の南アフリカW杯でPKを外した駒野選手を気遣い、「今度はオレがPKを取って駒ちゃんに蹴らせる」と言ったエピソードなど、悪童と呼ばれ、気性が荒いと評されるプレースタイルからは想像も出来ない優しさ溢れる男なのだ。
天皇杯を最後に川崎フロンターレを退団、FC東京への移籍が決まっている大久保嘉人だが、その理由を「一からのチャレンジ」と説明している。
「あぐらをかいている暇はない。あと何年やれるかも分からないし。もっと経験を積んで若手に伝えて、これからも得点を取り続けたい」その言葉に微塵の偽りも感じない。
快く撮影に応じてくれた大久保選手
練習後のファンサービスエリアに立ち寄った大久保嘉人選手と対峙することができた。まるで雲の上の人が現れたかのような、ユニフォームやグッズを握りしめて彼の登場を待っていたサポーターが一斉にどよめいた。そして、「はい。」「どうぞ。」と一人一人と真摯に向き合う彼の対応に驚いた。
一流の風格を感じた。オーラがあるという表現が相応しいかどうかは分からないい。なぜなら、オーラとは相手が勝手に感じるものだと思うから。けれど滲み出るものは隠しようがない。
一流とは圧倒的な実績を指している言葉ではない。そこに辿り着くまでの道のりであり、目の前の壁をどうやって乗り越えてきたのか、その壁に立ち向かう姿勢ではないだろうか。大久保嘉人に言わせればそれを”努力”と言うのだろう。
「10回のうち、パスが来るのは多分1回」「たった1回のために、9回を走ることを無駄だと思わない。」 (大久保嘉人)
たとえサッカーに興味がなかったとしても、もし何かしらの道のプロとして一流を目指しているのなら、是非とも一流選手と触れる機会に足を運んでみたらいかがでしょうか。一流を目指すのならば、一流に相応しい人間になることが先決なのかもしれない。彼の人柄に触れてそんなことを感じた。