サッカー馬鹿

2017.3.29

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全力応援で勝利を掴め!全力サポーターの流儀 <全力さんインタビュー&取材後記>

全力応援で勝利を掴め!全力サポーターの流儀

<KIRIN 日本代表応援ページより>

“全力さん”なる人物をご存知だろうか。 日本代表戦のゴール裏、サポーターゾーンの中、息絶え絶えになりながらも、全身全霊をかけて応援を続けるその姿がテレビカメラに抜かれ注目の的となった人物。人々は彼を全力さんと呼ぶ。

一躍時の人となった全力さんに、サッカー日本代表のオフィシャルパートナーであるキリンから出演オファーが届く。ロシアW杯アジア最終予選、UAE戦が行われた埼玉スタジアムの最寄り駅、浦和美園駅は全力さんのポスターでジャックされた。

全力さんを起用したキリン制作の「全力応援動画」は公開3日間で20万再生を突破。日本代表戦が行われる埼玉スタジアム2002内のキリンブース設置されている「全力応援顔コンテスト」も盛況を見せ、スタジアムに訪れた多くのサポーターのハートに火を付けている。

全力で応援する彼の姿に、冷やかしの眼差しを浮かべた人もいるかもしれない。初めこそ嘲笑っていたとしても、次第にその全力な姿に感動を覚えた人も多いのではないだろうか。サポーターの声援で選手を奮い立たせることができる。サポーターの応援でチームを勝たせることができる。そう信じてやまない全力さんに、彼が掲げる応援の流儀を聞いてみた。

本格的にサポーターとなるきっかけになる試合

<写真 全力さんより提供>

――全力さんは日本代表サポーターとしても有名ですが、東京ヴェルディと、なでしこリーグの日テレベレーザのサポーターでもあるとも伺っています。まず、その両クラブのサポーターになったきっかけを教えてください。

(全力さん) 最初にスタジアムに行ったのは2007年、リーグ開幕前のプレシーズンマッチ、味スタ(味の素スタジアム)での東京ダービーでした。無料だったので、ふらっと行ってみたんです。最初は座って観たいなぁ~と思って、メインスタンドに座りました。それで両サイドを見渡したら、ホーム側がFC東京、アウェー側がヴェルディだったんですけど、FC東京側は満席。ヴェルディー側は空いていた。じゃあ、ヴェルディの方に行ってみようか。そこからですね。

そしたらその試合、ヴェルディが負けちゃったんですよ。でもその時の応援が妙に印象に残っていて。それで、また行こうと思って、開幕後のGW、国立の水戸戦に行ったんです。バックスタンドに。やっぱりその試合も負けちゃったんですよ。でもその場の雰囲気が面白くて、それからちょこちょこと行くようになって、翌年の2008シーズンにヴェルディはJ1に上がりました。それをきっかけに、観戦から応援にシフトしようかなという気持ちになって、ユニフォームも買いました。それでも最初の方はバックスタンドとゴール裏の端っこを行ったり来たりして、初めの方は観戦の要素が強かったですね。

夏頃から、特に国立の浦和戦だったと思うんですけど、たまたま試合前に応援団体に所属していたサポーターの方と知り合いになって、応援しようということになって、それがまた楽しかったんですね。でも結局、ヴェルディは降格することになりました。そして迎えた2009年J2。当然応援に行きますよね?どのカテゴリーだろうが関係ないんで。そしたら応援団体の人が、もう誰も来なくなってて。観客動員も、J1の頃は1万人は入っていたと思うんですけど、その頃はもう3千人くらいに減っちゃってて。その状況にハッとしました。

そんな状況の中、対戦したのが、昨年までJFLだった栃木SCでした。その試合に大苦戦して、それでもPKの1点で辛うじて勝ったんですけど、その時、本気でヤバイと思ったんですよ。その試合を機に一生懸命に応援しようと思ったんです。本格的にサポーターになろうと思ったのは、そこからでしたね。

 

――それがヴェルディ・サポーターになるきっかけだったんですね。ベレーザ・サポーターになるきっかけになったのはいつ頃からでしょうか?

(全力さん) 最初に観戦したのが、2007年の7月でした。多摩市陸上競技場で行われたINAC神戸戦でした。ヴェルディと同じチームだし、行ってみようかなぁ~と思ってふらっと行きました。その時はまだ観戦でしたね。2008年の終わりころから、ヴェルディと同じように応援しようと思いました。

 

――ベレーザがヴェルディの姉妹チームということ以外に、ベレーザに惹かれるものはあったのでしょうか?

(全力さん) 当時、ベレーザには澤穂希さんがいて強かったんですけど、それはあまり関係なく、どうせ応援するのならば、ヴェルディの姉妹チームであるベレーザを応援したいと。当初は、ただそれだけだったんですね。

 

――全力さんにとってみて、男子も女子も分け隔てがなかった?

(全力さん) はい。そうですね。

 

――ベレーザ・サポーターをしている全力さんにとって、女子サッカーならではの魅力を教えてください。

(全力さん) 一般的には、ひたむきさとか言われていますが、ボクの解釈はちょっと違っていて、少ないサポーターの中でも、みんなで協力してやっていこうという雰囲気だったり、選手は厳しい環境の中でやっているので、より一層一緒にやっていこうという気持ちが強いですね。サポーターが少ない分、一人が手を抜いたら応援の勢いも下がっちゃうし。

選手を女性としてではなく、アスリートとしてみて欲しいんですよ。サポーターはもちろん、きちんとわきまえてるんですけどね。人気が出て欲しいという気持ちはありますが、あまり深く行き過ぎてはマズイし。そういう難しさはありますね。

チームとサポーターの理想の関係

<写真 全力さんより提供>

 

――全力で応援する全力さんは、なぜそこまでチームに対して忠誠を誓っているのですか?

(全力さん) 忠誠ではなくて、仲間意識ですね。クラブと一体になっていると思っています。どっちかが上とか下とではなく、一緒なんですよ、仲間なんですね。

 

――そういった仲間意識はどのようにして育んでいったのでしょうか?

(全力さん) 2010年のヴェルディ消滅危機(メインスポンサーの日テレの撤退が決定)。その当時は、本当に観客が少なかったので、サポーター同士でより一層協力しあって、動員を促進しました。ポスター貼ったり、チラシ配ったり、地域のイベントに参加したりして。スタジアムの中では、初めて来てくれた人に対して、「また一緒にやろうよ!」と誘ってみたりして。

 

――チームとサポーターの絆を深めるのと共に、サポーター同士の親交を深めていった。

(全力さん) 一人で応援してもつまらないですしね。そうやっていくうちに、徐々に人が集まるようになって、ボクがリーダーをしているサポーターグループ、加納組が生まれました。

 

――全力さんにとってのベストゲームを教えてください。

(全力さん) 直近でいうと、2015年のホームの岐阜戦。前半を折り返して、0−3で負けてました。それで、後半ラスト10分くらいから、一気に4点獲って逆転した試合です。

 

――その試合は、サポーターが勝たせた試合と言ってもいい?

(全力さん) はい。そんな雰囲気はありましたね。1点返して「チャンスあるぞ!」2点目が入って「追いつくぞ!」同点に追いついてからは「さあ、一気に逆転するぞ!」みたいな。チームとサポーターの結束が高まっていくような、そんな雰囲気が作れたと思います。

あとは、2010年の7月の下旬のアウェー甲府戦と、その翌週の8月上旬のアウェー柏戦。その当時はチーム消滅危機だったんですよ。その時、対戦した甲府は上位、柏は無敗でした。でも、勝ったんですよ。連勝したんです。その理由は、サポーターとしては、クラブが本当に苦しい、スポンサーも少ない、っていう時に、とにかく勝たないとスポンサーもつかないという気持ちがあったんです。そういうボクらの思いがピークに達していて、それが乗り移った。この連勝はサポーターが勝たせた試合だと自負しています。

 

――ベレーザのベストゲームは?

(全力さん) 2012年のNACK5でやったリーグカップ決勝のINAC戦ですね。実はその試合、熱が入りすぎて、試合内容はほとんど覚えてないんです。(笑)

 

――ていうか全力さん、どの試合も、ほとんど内容覚えてないじゃないですか?(笑)

(全力さん) スタジアムに行く目的の最優先は応援。試合を観るのは、テレビで観たり、もしくは観戦目的ならバックスタンドやメインスタンドの方がゆっくり出来て、尚且つしっかり観れます。ゴール裏にいるサポーターの役目は応援だし余裕を持って手を抜いてやってたら選手に悪いです。

 

――サポーターを増やしていこうという取り組みについて、もう少し詳しくお話をお聞かせください。

(全力さん) サポーター体験ゾーンというのをやっています。初めてゴール裏に来た人は、どうやって応援したらいいのか、右も左もわからないじゃないですか?そういう人たちに「一緒に応援しませんか?」って声かけます。タオルマフラーとか貸してあげたりして。そういうことを繰り返すうちに、ずっと来てくれる人が増えていくという実感はありますね。

あと、ヴェルディのゴール裏は怖いって雰囲気を作らないように心掛けています。子供でも気軽に来れるような、みんなで楽しもうっていう雰囲気。たからといって、ぬるく行こうというではなくて、しっかり熱く応援して、ヤジが飛んだ時には、コールでかき消してしまう。とにかく怖くないゴール裏というのを目指しています。

 

――今の話に通ずるものがあると思いますが、全力さんが率いる加納組ならではの応援ポリシーってありますか?

(全力さん) 加納組に関して言うと、一般的にゴール裏の光景は、中央に熱狂的な人が集まって、端っこにいる人は座って観ていることが多いんですけど、加納組は、敢えて端っこで応援するようにしています。端っこにいて自分たちがしっかり応援していれば、周りも感化されますよね。応援したいけど恥ずかしいって人が参加しやすいように、周りを巻き込んでいくことを意識しています。楽しんでもらって、思い出を作って欲しい。そうしたらまた来てくれるようになるから。

Jリーグが盛り上がるためにまずは参加してほしい

<写真 全力さんより提供>

――もっとサッカーが盛り上がって欲しい。もっとJリーグが盛り上がって欲しい。そのために必要なことはどんなことでしょうか?

(全力さん) 試合に参加してもらうことです。座っていてもいいし、立って応援するのもいいですけど、まずは参加の気持ちを出して行動を起こすこと。たとえ手拍子だけでも、代表戦の6万人の観客が一斉に手拍子したらスゴイじゃないですか?観戦だけではなく、参加の気持ちを持ってもらうこと。手拍子が恥ずかしかったら、選手入場時にタオルマフラーを掲げるだけでもいい。まずは参加してもらうことがファーストステップですね。

次に、応援の仕方を教えてあげること。たとえば、手拍子は頭の上でするとか。ここ(胸の前)で手拍子しちゃうと、手拍子の音が、前の人の背中に当たってしまうじゃないですか。そういうこととか。代表戦に来るミーハー的なと言われちゃう人だとしても、興味があってスタジアムに来てくれているのだからもちろん歓迎しますね。そういう人たちに、いかに応援の雰囲気を楽しんでもらうか、そっちの方が大切だと思います。

あとは、代表戦だけがサッカーではないということですかね。Jリーグもあるし、JFLもあるし、地域リーグもある。そして女子サッカーだってある。全部サッカーなんですよ。年に数回の代表戦だけじゃなくて、毎週どこかでやっているサッカーの試合に行ってみれば、もっとサッカーの楽しさがわかると思う。スタジアムに行くのが日常化すれば、どのカテゴリーの試合も活性化するし、その先の代表戦も「イベントに行く」から「試合に行く」に変わっていき、代表戦のスタジアムがもっと力強い空気感に包まれると思います。

 

――ていうか全力さん、毎週試合に行ってるんですか!?

(全力さん) ホームは全試合ですね。アウェーは7、8割くらい。夏場とか、遠方の日曜なんかは、かなりキツイですね。

 

――J2だとかなりの試合数になりますよね?

(全力さん) 去年(2016年)だと、トップ、ベレーザ、代表、下部組織、全部合わせると、確か91試合ですね。

 

――アウェー会場へは移動手段は?

(全力さん) 九州、北海道以外は、ほぼ車ですね。基本、当日入りの当日帰りなので、たまにハードですよ。たとえば、今度なんですけど、5月13日(土)に讃岐戦(香川県)、ここへは車で行こうと考えてるんですけど、翌日は、13時に、神奈川県大和でベレーザ戦があります。讃岐から東京に戻れるのが、多分夜中の3時くらいなので、結構キツいですね。(笑)もしくは、7月上旬のアウェー熊本戦。(ヴェルディ)翌日のアウェー新潟戦(ベレーザ)とか。

 

――男女ともに応援すると、そういうことが起きるんですね。

(全力さん) はい。ホーム同士だとしても、5/7(日)13時にベレーザが味スタ西でノジマステラ戦、16時にヴェルディが横浜戦なんて時もあります。休憩なしの連チャンなんでキツいっすね。夏場なんて特にヤバイ。

 

――全力さんが全力であるために心掛けてることありますか?

(全力さん) まずは食事制限ですね。前日は、揚げ物とか油物とかラーメン、そういう重いものは禁止。当日は、キックオフ4時間前を切ったら固形物は食べない。体が重たくなるので。それやってる関係で、アウェーがツラいです。ご当地のスタグル(スタジアムグルメ)が食べられないんで。(笑)あと、シューズも一足余分に持っていきますね。前半用と後半用で。前半用は少し重いシューズを履きます。後半用には軽い靴に履き替えます。動きが落ちないようにですね。睡眠時間にも気を使ってます。少なすぎず多すぎず6~7時間は寝るようにしてます。

 

――サポーターをしていて、嬉しかったエピソードはありますか?

(全力さん) 数年前なんですけど、元日本代表の秋田豊さんがコーチとして来た時に「なんでヴェルディ・サポーターは、人数が少ないのに、あんなに声が大きいんだ?」って言ってくれたこと。もう一つ、現在、沖縄SVに所属している飯尾選手から直接「いつもスゴイ応援してくれてるよね。力になっている。」って言ってもらえたことが嬉しかったですね。

あと2010年の消滅危機の時なんですけど、元ヴェルディの選手の河野選手とかんぺー選手(富澤選手)が横断幕を作ってくれたんですよ。この横断幕には「いつも応援してくれる緑サポさんたちを俺たちは誇りに思ってる。」と書いてありました。コレは本当に嬉しかった。

 

――河野選手といえば、現在はFC東京所属ですよね。ダービーマッチやりたいですか?全力さんにとっては、初観戦がダービーマッチということもあって原点ですからね。

(全力) やりたいっすね〜。本当にやりたいっす。そしてチームを勝たせたいです。

 

全力さんが全力である理由。その原点は、ヴェルディと共に歩んできた歴史、その中で育んできたチームとの一体感ではないだろうか。

「応援することは普通なんで、スタジアムに行くのは日常なんで。」そうサラッと言い切る全力さん。日常にサッカーがある喜びを、ボクらはもっと噛みしめるべきだと思うと同時に、全力さんのように、サッカーを愛する人が増えていくことが、日本サッカーの強化へ直結してるようでならない。

<了>

取材後記

熱狂が高まれば高まるほど、グループの結束力は固まり、その反動による排他的空気感が充満する。「立ち上がれ!応援しないものはこの場から去れ!」サポーターゾーンと呼ばれるゴール裏地帯で、このような貼り紙を目にすることがある。

ゴール裏は、観戦歴の浅いライト層の人たちにとって近寄りがたい場所になっているという現状がある。ゴール裏は応援する場、観戦が目的ならばピッチ全体を見渡せるメインスタンドかバックスタンドを訪れればいい。サポーターの主張もあながち的外れではない。かといって、ライト層に対して”にわかファン”と、うかつに揶揄してしまえば、ますますファンとサポーターとの溝を深め、サッカー界の衰退を招きかねない。

応援の楽しさを実感してもらいたい。観戦の思い出を作って欲しい。ライト層への積極的な呼び掛けにより、1人でも多くの観客をサポーター化へと繋げたい。そういった意味でも、全力さんが本インタビューで語っていた、サポーター体験ゾーンという取り組みは意義深い。

好きな選手がいることや、ひいきのチームがあるだけで、サッカーがもっと好きになる。そのためには、まずは参加の気持ちを持つこと。そして、歓喜や悔しさを共有することで、サポーター同士の、そしてクラブとの仲間意識が育まれる。

このインタビューを通じて全力さんから教わったこと、それは応援の醍醐味である。人は誰しも応援されるのは好き、けれども応援するのは苦手。だからこそ全力で応援する姿は美しいのだ。

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