明治安田生命J1第11節 湘南ベルマーレ0-1大分トリニータ(BMWスタジアム/11550人)
52分 藤本 憲明(大分)
52分 藤本 憲明(大分)
相手がどうあれ己のスタイルを貫く、あるいは相手の出方をみて臨機応変に戦い方を変える。
どちらが正解かどうかは結果次第。ただし、この一戦に関して言えば、後者が勝利を収めた。
明治安田J1第11節 湘南ベルマーレと大分トリニータの一戦は、ともに[3-4-2-1]のフォーメーションを敷くミラーゲームとなった。
湘南のスタメンは先日お届けしたプレビューどおり杉岡 大暉が3バック左に入り、左ウイングバックに鈴木 冬一が入った。
対する大分は前節からの変更は一枚。これまで主力を担っていた前田 凌佑が外れ、ルーキー長谷川 雄志を抜擢。島川 俊郎とダブルボランチを組む。
湘南にとってココが一つの狙いどころとなった。「自分にボールが来た時は自分の良さを出そうと思っていたが、今日は全然出せていない。」と長谷川が語ったとおり、前線から激しくプレスを仕掛ける湘南に対し後手を踏むシーンが目立つ。長谷川に倒されFKを獲得した湘南だが梅崎 司のキックがクロスバーを弾くなどチャンスを逸してしまう。
ボール奪取からショートカウンターを狙う湘南に対し、大分は中央にブロックを固め混戦に持ち込み湘南のスピードを制御。湘南持ち前のテンポの良いパス回しが見られない。それでも鈴木冬が内に入りミドルシュートを放つなどあくまでも中央をこじ開けゴールに迫る。
逆に大分はポゼッションで相手を圧倒する本来のやり方を捨て、前がかりな湘南ディフェンスラインの背後を伺い続ける。この日唯一の得点シーンはまさにこの形から生まれた。
52分、島川のロングフィードに山根 視来と坂 圭祐の間をすり抜けるように走り込んだ藤本 憲明がボールを収め、坂、山根と交わしゴールネットに突き刺した。
この得点が生まれた背景には片野坂監督のハーフタイムでのアドバイスが影響していた。
「自陣でのミスはしたくなかった。見えているところをシンプルに使うということ、ボールを動かすことによって湘南さんのプレスも回避できたりスペースができたり、我々が先手をとって動かすことが必要」(片野坂監督)
後半の大分はロングフィード一辺倒の攻撃から、小塚 和季、オナイウ阿道の2シャドーを経由するパスが増え攻撃の厚みが生まれた。前線にも頻繁に顔を出すオナイウ阿道は確実に湘南の脅威となっていた。
ビハインドで迎えた終盤、長身の指宿洋史、テンポアップを狙い中川 寛斗を、右サイドからのクロスを狙い古林 将太を立て続けに投入し打開を試みた曹貴裁監督だったが、パワープレーのシーンも少なく交代は奏功したとは言い難い。
「サッカーというのは不思議なもので、やっぱり少し全体が隙を一瞬作った所で失点し、そこから少し時間を使われて、結局1点も取れずに終わってしまったということは、僕の力不足だなと思う所もあります。」こう語った曹監督の言葉からは、自分たちのやり方への自信を感じ取ることができる。
しかし、果たして打開策はなかったのだろうかと考えてしまう。この日のベンチには先のルヴァンカップで結果を残した選手を揃えていた。正確無比なロングフィードで数多くのチャンスを作り出していた秋野央樹、155センチと小柄ながらもトップに入り、長身の山崎 凌吾や指宿とは異なるプレースタイルで存在感を示した山口 和樹。あくまでも個人的な願望だが、彼らを投入する大胆な采配が見たかった。
それにしてもこの日の大分の戦いぶりは見事だった。湘南は堅守速攻が持ち味のはずが、終わってみれば五分五分のボール保持率を記録。湘南はボールを持たされていた印象が強い。逆にポゼッションが持ち味の大分はボール保持率を下げながらも相手の持ち味をきっちりと消し 一瞬の隙を伺いつづけた。
己のやり方を貫く。これもポリシーだが、スタイルを捨ててでも勝利にこだわる。それもポリシーなのだ。
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