天皇杯4回戦 FC東京vsHONDA FC
序盤から攻勢に出たFC東京相手に防戦一方のHONDA FCだったが、ワンチャンスをものし先制に成功する。
1点のビハインドから迎えた後半、FC東京は梶山に代えて小川を投入して攻撃を活性化。HONDAのストロングポイント右サイドの制圧に打って出る。
その左サイドからチャンスが生まれる。左サイド深くに果敢に進入を試みる小川を起点に、51分、中島がゴールを決めFC東京が後半早々に同点に追いつく。
「やはり後半の立ち上がりの失点というところが、チームの勢いがなくなる失点だったかなと感じます。」そう語ったHONDA FC 井幡監督の言葉通り、試合の流れは完全にFC東京に傾く。
そして迎えた80分、中島の突破から室屋がゴールを決めて万事休す。好ゲームを演じたHONDA FCが大会を去った。
【プロとアマの差は何か?】
プロアマ混合の日本最大のトーナメント『天皇杯』では、度々ジャイアントキリング(番狂わせ)が起こる。〜弱者が強者を覆す〜サッカーではよくあることだ。好試合を演じたこの日のHONDAにも十分にその可能性はあった。
でも起きなかった・・・。その理由は”プロとアマの違い”その一言に尽きる。FC東京が見せつけた違いは2つ。(1)変幻自在の組織力(2)圧倒的な個のチカラ
自分たちのサッカーに徹するHONDAに対して、FC東京 篠田監督は、戦術変更や選手交代など的確な采配で応戦した。見所はやはり後半開始、小川を投入した場面ではないだろうか。相手のストロングポイントを消し、ピンポイントで相手の急所をつく。同点に追いついてからも林の投入で更に相手の弱点に漬け込んでいき逆転ゴールを引き出す。そして最後の交代カードをロスタイムの時間稼ぎにとっておく。一度崩れかけたプランをきちんと修正し、速やかに新しいプランを遂行する。
それが可能な組織であること。一戦一戦を勝ち抜くことが目標のHONDAに対して、あくまでも優勝が目的のFC東京。どんな試合でも勝ち続ける。それがプロの宿命なのだ。
【プロはスペシャリストである。】
天皇杯という大舞台で戦っている選手ですから、どのチームに所属していようと、彼らが一流のサッカー選手であることに疑いはない。しかし、もしそこに”差”があるのだとしたら、スペシャリストという言葉が当てはまるのではないだろうか。
スペシャリストとは、”その専門家の中で右に出る者はいない。”という存在であること。他の選手が真似のできない”際立った特徴”があること。
この日、圧倒的な存在感を示していた中島翔哉は、まさにスペシャリストだった。
すべてのポジションに、スペシャリトを配しているJ1所属のクラブがJFLのチームに負けるはずはないのです。いかなる戦術を用いても、それを覆すだけの対応力があり、それを遂行できるチーム力があるのだから負けるはずなんてないのです。
プロとアマの違いを見せつければ、ジャイアントキリンなど起こるはずはない。あってはいけないのだ。
とはいえ、天皇杯4回戦、ベスト8を賭けた一戦という大舞台に臨んだHONDA FCの健闘は本当に素晴らしかった。アマチュアという立ち位置ながら、J1屈指の強豪に挑んだ彼らの戦いは、目が離せないほどの好試合を演じた。
”日本サッカーのレベルを知りたければJFLを見ろ”ある識者がこう言っていたのを思い出した。そう考えた時、HONDA FCの台頭が意味することは、果たして、日本サッカーの明るい未来なのだろうか。アジアの舞台で苦戦が続く日本代表に思いを馳せてみた。
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