経営者こそ“真摯たれ!”
――サッカー王国“静岡”には清水エスパルスやジュビロ磐田、昨今ではアスルクラロ沼津がJ3に参入し、JFLの強豪HONDA FCが浜松に拠点を置いています。藤枝はJ3で奮闘していますが、やはり高校サッカーの印象が強いですね。
(小山) そう思います。僕は高校サッカーの町だと感じていて、僕も卒業した藤枝東であり、藤枝明誠高校、藤枝順心は女子で強いですし。高校サッカーで発展してきた町なので思いっきり新しいトレンドに乗り遅れましたね。むやみやたらにJリーグ入りを目指すことに魅力を感じませんが、日本サッカーのトレンドはやはりJリーグだと思います。サッカーにおいて藤枝は歴史ある街でしたが、高校サッカーに固執するあまりに清水に抜かれ、浜松、磐田に負けて、ものすごい悔しさを感じました。高校サッカーを大いに尊重しながら、トップリーグで台頭できるチームをどう作っていくかというのは、10年前から考えていました。
――その高校サッカーの街において、どのようなプレゼンテーションをして、たくさんの企業の賛同を集めることができたのでしょうか。
(小山) 3、4千社は回りました。97%位の人たちから絶対無理だと言われました。ジュビロもエスパルスもあるし無理に決まってるだろみたいな感じでしたね。親身になってくださり、やめた方がいいと教えてくれた人もたくさんいました。「大人が無理と言って、子供たちに夢を描けと言えますか。」と5年ほど訴えつづけましたね。それでも何とか4億円ほど集めることができました。そのお蔭でJ3 に入れることができて、今年で5年目です。将来的には育成に力を入れて地域で活躍する、あるいは世界で活躍する人材を育てる。その過程でまずはJ2に上がりたいですね。
僕が考える勝手な持論ですが、サッカークラブをやる人は嘘をついてはいけない、ネガティブ思考はダメだとか、一言で言うと真摯さが必要だと思っていて、なぜなら、決して経済的に恵まれているとは言えない地方にもかかわらず、500社もの株主スポンサーにご協力いただいているのですから。責任と使命感なくして成長は難しいです。
今後の活動について
――小山さんの今後の展開についてお聞かせください。京都で事業を行うという話を耳にしましたが。
(小山) 京都はですね、元々、京都を中心にサッカースクールとサッカークラブをやったアミティエというクラブがあって、スクールは関西圏で生徒数が4000人ほど、ベトナムで2000人ほどいます。サッカークラブとしては関西で2位や3位という実績はあるものの、現在は、関西1部で停滞しているのが実情です。元々、理事長と知り合いだということもありますが、このタイミングで勝負に出たいというオファーを受けたという形です。
僕はスクール事業とクラブ経営を分けて考えています。僕はスクール事業は得意ではありませんので、経営パートナーに一括してもらい、クラブ経営に専念しています。ですので、アミティエも同様にスクール運営は任せて、昨年からクラブ経営に携わるようになりました。本格的な始動は今年からですね。
――小山さんの今後の展開、そして日本サッカーの発展に必要なことはどうお考えでしょうか。
(小山) 日本のサッカーの発展のために必要なことは、クラブ経営者を育てること。そして、指導者を育てることが大事。この2つがポイントだと思います。だから僕はここに力を入れていきたい。やはり日本と海外とは仕組みが違いますので、海外の真似ではなく、日本ならではのクラブ経営を模索していくべきだと思います。
――本日はお忙しい中ありがとうございました。
小山 淳(こやま じゅん) |
1976年10月25日生まれ |
出身地:静岡県藤枝市 |
藤枝東高校→早稲田大学中退 |
藤枝中時代、13歳以下の日本代表副キャプテンとして世界少年大会で優勝。U-15日本代表として中田英寿らとプレー。早大進学後に左足首の手術失敗により選手生命を絶たれる。世界33カ国放浪の後、25歳時IT業界へ転進、2002年に株式会社Jプレイヤーズを創業(現15期)。2009年に「株式会社藤枝MYFC」を創業、5年でJリーグへ昇格させ、2017年譲渡。現在様々なスポーツ企業への投資、支援、経営を行っている。 |
【取材後記】
「今ある常識の逆を行く、そうすればうまくいく。」ひと通りのインタビューを終え、しばらくの間、小山氏が語ったこのコトバが頭から離れなかった。
“革命家”にとって常識という既成概念は、違和感でしかないのだろう。彼らは常識人と呼ばれる人たちと異なる視点を持っているからだ。
革新を嫌う人たちは彼らを”破壊者”だと決めつけ、遠ざけるかもしれない。彼らのチャレンジは常に賛否両論を巻き起こすだろう。
しかし、彼らの言葉を無視することはできない。彼らは常識を覆すと同時に、新しい価値観を生み出してきたからだ。
スティーブ・ジョブズ氏自身がナレーションを務めたアップルのCM『Think Different』を思い出した。アルベルト・アインシュタイン、ボブ・ディラン、マーティン・ルーサー・キング、ジョン・レノンをはじめ世界を変えてきた発明家やアーティストたちの映像とともに下記の言葉がキャプションされている。
クレイジーな人たちがいる。
反逆者、厄介者と呼ばれる人たち
四角い穴に、丸い杭を打ち込むように、
物事をまるで違う目で見る人たち
彼らは規則を嫌う
彼らは現状を肯定しない
彼らの言葉に心をうたれる人がいる
反対する人も 称賛する人も けなす人もいる
しかし、彼らを無視することは誰にもできない
なぜなら、彼らは物事を変えたからだ。
彼らは人間を前進させた
彼らはクレイジーと言われるが
私たちは天才だと思う。
自分が世界を変えられると
本気で信じる人たちこそが
本当に世界を変えているのだから。
小山氏は”破壊者”か”革命家”か。今この時点で決めつけるのは余りに早計だ。しかし、チャレンジャーであることに疑いの余地はない。
今後も小山氏のチャレンジを追っていきたいと考えている。そして願わくば、先日新たに立ち上げたメディア『soccer-baka TV』に出演していただき、大いに語っていただきたい。
〈了〉
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