それでもボクはロシアワールドカップへ駆けつけるvol.3
vol.2のつづきです。
<それでもボクはロシアワールドカップへ駆けつける vol.1>
<それでもボクはロシアワールドカップへ駆けつける vol.2>
と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
2010年 南アフリカワールドカップ
治安の悪さと情報不足を理由に、4回目のワールドカップは初めて観戦ツアーに申し込んだ。成田発香港経由でヨハネスブルグまで片道およそ20時間、費用は65万円ほどだった。観光目的では確実に行くことのない土地に足を踏み入れることができる。これもワールドカップ観戦の醍醐味の一つである。
南アフリカは想定内の情勢であった。万全の警備態勢で守られたホテルからボクたちツアー客は一歩も外に出ることが許されなかった。そんな中、もっとも驚いた出来事があった。それはスタジアムに向かう道中、道を間違えたバスの運転手が高速道路内でいきなりUターンをはじめたのだ。マジで死ぬかと思った。
今回のターゲットはグループリーグ第3戦、デンマークとの対戦だ。初戦のカメルーン戦に勝利した我らが日本代表は、つづくオランダ戦に惜敗。そして迎えたグループリーグ最終戦、勝てば確実に決勝トーナメント進出が決まる大一番であの男がやってくれた。
17分、右サイド遠目の位置からFKを得た日本は本田 圭佑がキッカーに名乗り出る。左足一閃、迷いなく振り抜かれた弾道は、GKの手元で鋭く変化し、右手をかすめるようにゴールに突き刺さった。ここ一番で得意のブレ球FKを決めてしまう本田 圭佑につづいて、30分、ペナルティーエリアのわずか外、絶好の位置で得たFKを今度は遠藤 保仁が右足一閃、美しい弧を描いた弾道がゴールネットを揺らし追加点を挙げる。
後半に入り一点を返されるも、本田 圭佑が華麗なフェイントで相手を置き去りにしフリーの岡崎 慎司へパス、これを岡崎が冷静に決め3-1。奇しくもワールドカップベストゲームを目の当たりにすることができた。
この後、日本代表は決勝トーナメント1回戦でパラグアイにPK戦の末、敗退が決まった。
2013年 東アジアカップ/ソウル
代表愛を募らせるのならばアウェーでの日韓戦を体験すべき。どこぞのスタジアムで出会った熱狂的なサポーターのひとりがボクにこう教えてくれた。思い返せば、はじめての代表戦で心を鷲掴みにされたのも日韓戦だった。以来、ボクは幾度となくホームで行われた日韓戦に駆けつけている。
敵意むき出しの両軍サポーターが創り上げる異様な熱気、闘志みなぎるピッチ上の選手たち。かつては”反日”と”嫌韓”が織り成す政治的背景が見え隠れする両者の対決だったが、昨今ではスタジアムの一歩外に出ると、互いに写真を撮り合う友好ムードが漂っている。
しかし、この時ばかりはそうではなかった。
2013年7月28日、韓国ソウル チャムシル・オリンピックスタジアムで行われたEAFF 東アジアカップ2013 アウェー韓国戦は、勝てば優勝が決まる事実上の決勝戦だった。
試合前の選手入場時、韓国サポーターが掲げたのは「歴史を忘れた民族に未来はない」という横断幕と、初代韓国統監だった伊藤 博文氏を暗殺した安 重根と、文禄・慶長の役で豊臣秀吉軍を破った李 舜臣を描いた巨大な肖像画だった。対するビジタースタンドを埋め尽くした日本代表サポーターは発煙筒を焚き、旭日旗を掲げる者まで現れた。
政治的メッセージを描いた横断幕の掲出、および、旭日旗掲出に同調の意思はない。しかし、スタンドから放たれる熱狂は確実に選手に伝播していた。
柿谷 曜一朗と尹 日録がともに得点、1-1のままタイムアップかと思われた試合終了間際、左サイド深くまで切り込み、原口 元気が強烈シュート、GKが弾いたボールを柿谷が冷静にゴールに流し込み土壇場で日本の優勝が決まった。
上手く言葉では言い表すことは難しいが、あの時のボクは、身体中に染み渡っていた”愛国心”が噴き上げる不思議な感覚があった。「俺たちがやらなければならない」熱狂的なサポーターが集うゴール裏は異常な使命感が蔓延していた。
https://youtu.be/ZZEfFY07SVQ
2014年 ブラジルワールドカップ
片道41時間、関空からパリ経由でサンパウロ入り、国内線を乗り継ぎブラジル北東部の湾岸都市レシフェに降り立った。ホテルにチェックインするなりお目当ての名物料理「シュラスコ」を堪能するも味の記憶はほとんどない。地球の裏側への旅路は想像以上に過酷なものだった。
ザッケローニ監督率いる我らが日本代表は出鼻をくじかれていた。グループリーグ初戦 コートジボワール戦に臨んだ日本は本田 圭佑が早い時間帯に先制ゴールを挙げ、幸先の良いスタートを切ったかと思われたが、62分、同国の英雄、ディディエ・ドログバがピッチに姿を現わした途端に状況は一変する。
攻撃が一気に活性化したコートジボワールは、その2分後、さらにその2分後に得点を重ね一気に形勢逆転。2006年ドイツで目の当たりにした”魔の6分間”を、まさか再び味わうことになるとは。
ボクたちは一足早く決戦の地”エスタディオ・ダス・ドゥナス”に降り立ち、チームの到着を待った。グループリーグ第2戦『日本vsギリシャ』ともに黒星スタートとなった両チームだが、グループ最有力のコロンビアに敗れたギリシャと、第3戦にそのコロンビアとの戦いが控えている日本とではその意味合いは大きく異なる。
互いに勝点3が欲しい、見応えのある攻防が繰り広げられる中、日本は思わぬ形でアドバンテージを得る格好となる。34分、FWミトログルが負傷離脱、その3分後にカツラニスが2枚目の警告で退治処分が下された。
俄然優位な展開に転じた日本だが、守りを固めるギリシャを最後まで攻略することができなかった。臨機応変な対応で結果にこだわるギリシャに対し、自らのサッカーへの執着が仇となった日本、つづくコロンビア戦でも巻き返すことなく大会を去った。
2016年 アジア最終予選 UAE戦/埼玉スタジアム2002
思い返せばロシアへの船出は当初から前途多難だった。日本サッカー協会は八百長疑惑を理由に解任したハビエル・アギーレ氏に代わり、ヴァイッド・ハリルホジッチ氏の代表監督就任を発表。目前に迫るアジアの戦いに向け大きく舵を切る。
短期間でのチーム編成を託されたハリルホジッチは既存のスタイルをベースに3ヶ月後に迫るロシアワールドカップ・アジア二次予選に挑む。初戦のシンガポール戦(ホーム)こそドロー決着となるが、その後順当に勝ち星を積み重ね難なく一位通過を決めた。新生日本代表はいよいよ激戦必至のアジア最終予選を迎える。
最終予選はやはり甘くはなかった。ホームに難敵UAEを迎えた初戦、本田 圭佑のゴールで先制した日本だが、その後、FKを直接叩き込まれ同点に追いつかれる。同点のまま迎えた後半9分、ペナルティーエリア内の混戦でファウルの判定、PKを与えてしまい逆点を喫してしまう。
ホームでの負けは許されない日本は攻勢を強め攻撃で相手ゴールに肉迫する。ゴールラインを割ったかに見えた浅野 拓磨のシュートがノーゴール判定になるなどの不運もつきまとい、日本は大切なホームでの初戦を落としてしまう。
アジア最終予選の初戦で負けたチームの予選突破率は「0%」我らが日本代表は最悪の窮地に陥った。
https://youtu.be/sFQ2htF_Fmo
〈つづく〉
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