今そこにあるサッカーを愛せ!サッカー本大賞優秀作品賞受賞 KFG蹴球文化論 <錦糸町フットボール義勇軍 独占インタビュー vol.2〉
過激な論調でネット上を賑わしているレジスタンス集団がいる。彼らは自らを錦糸町フットボール義勇軍と名乗る。
錦糸町フットボール義勇軍を率いるのは、赤いヘルメットを被り、ティアドロップのサングラスと赤いタオルマフラーで顔を覆う、何とも怪しい風貌のロック総統。そしてロック総統が従えるのは、ライト曹長とオットナー参謀長である。
時にSNS上で、時にポッドキャストで、時に全国各地のサッカースタジアムに乗り込み、Jリーグ原理主義者と罵り、日本サッカー真の発展を声高に叫ぶ。一見突飛押しのない主張に受け止められがちだが、彼らの主義主張は実に的を得ている。
「今そこにあるサッカーを愛せ!」核心を突くメッセージをユーモアたっぷりに発信する蹴球革命は、瞬く間に全国を席巻し、全国各地に信奉者を生み出すことになる。そして遂に彼らの想いは結実した。
著書『KFG蹴球文化論』のサッカー本大賞優秀作品賞受賞を皮切りに、ラジオNIKKEIでレギュラー番組『蹴球革命ラヂヲ』を配信。そして『フットボール批評』で連載を開始。
今回のインタビューでは、彼らの軽快なトークを漏れなくお届けすべく、ほぼノーカット状態で2話に渡って配信する。
警告:Jリーグを目指すな!地域リーグこそ蹴球文化の原点がある。
(参謀長) ちょうど総統と出会った頃に、Jクラブの破綻が世間を賑わしてたんですよ。なんでこんなことが起こるんだろうって調べたら、Jリーグのシステム自体が構造的に疲弊してんだなってことがわかった。
東京に暮らしていたし、FC東京とヴェルディ以外にどんなクラブがあるんだろうと思って調べたら、当時、JFLに町田ゼルビアというクラブがあって「えー、町田市にサッカークラブあったんだー!」って恥ずかしながらその時初めて知ったんですよ。
ちょうどその頃、町田からJリーグ目指してますって掲げてたんだけど、スタジアムが作れないためにJリーグ行けませんといって署名活動を始めてね。で、3部リーグで三千人も入ってない町田ゼルビアがね、スゲー税金使って、メインスタンドを改装することでギリギリライセンスを取れてJリーグ行きますみたいな。
40万人が暮らしている町田市のクラブなのに、なんでJFLでも応援しようとしないの?って。5千人、6千人、とスタジアムを満杯にしてから、それで地元企業が「こんなにファンがいるなら」ってお金集めて立派なスタジアムを作ればいいのに、署名って。さらに調べていくと、JFLには横河武蔵野FCという実業団チームもあって、もっとカテゴリーを下げると、関東リーグがあって、東京都リーグがある。東京にもローカルなクラブがたくさんあって、7部、6部、5部も面白いなって気づくんだよね。
(総統) 東京って、そういう意味で言ったら、サッカーを観る人たちの目が肥えてるし、うちの地元宮崎の人は、ほぼほぼJリーグ見たことないですよ。だってJリーグの公式試合やったことないんだし。だけど、東京っていっぱいJリーグの試合やってるし、ちょっと浦和に行こう、横浜に行こうってやれるじゃない。
都リーグ2部とか3部とかの試合を観に行こうかなぁと思っている人たちが、数は少ないけど2、3百とか4、5百とか、スタンドがいっぱいになる光景を見ると、やっぱり首都ってすごいなって思うんですよ。
それが私の言う「今そこ」なんですよ。そのチームがJリーグ目指すってたって、どうやったって10年はかかるんだから。田舎のお題目にある3年でJリーグとか嘘言わない。Jリーグ目指してるなんて言わなくてもお客さん来るんだから。
(参謀長) もしかしたら日本各地にも、6部でも4部でも、盛り上がってるところがあるんじゃないかと調べたら、ぽこぽこ実存してたんですよ。
例えば、東海リーグのFC刈谷とかね。600人とか集めるわけですよ。地域リーグでも。都リーグのスペリオ城北だって300人、500人と。別にJリーグじゃなくても、サッカー好きな人に支えられてるクラブはたくさんあるし、そういうことももっと取り上げたい。
これは僕の原点にもなってるんだけど、やっぱり、ロンドンとか、ミュンヘンとか、リオデジャネイロとかサンパウロとか。どの国のどの首都にも、トップのクラブもあれば、4部、5部のクラブもたくさん成立していて、代表になったら一気にみんな熱狂するけど、普段はマイローカルクラブを応援してる。
どの首都にもカテゴリーの深さと、それぞれの規模の大きい小さいを問わずに、フットボールを愛する人たちが世界中にいるのに、東京は、J1のFC東京、J2のヴェルディしかないような感じになっちゃって。この国の首都がこの程度だったら絶対にW杯で優勝できっこないわみたいなものがあって。
だから敢えて、Jリーグ大好きなんだけど、もっと下のカテゴリーを掘り起こしていくこと、そこに目を向けさせて、ファンを増やすこと。下部からの隆盛を起こすことは、最終的にはその国の1部リーグ2部リーグが盛り上がることにつながるだろうという信念がある。それを義勇軍が笑いに変えながら表現したい。それが我々の目的なんですよ。
錦糸町フットボール義勇軍の軌跡
(曹長) 義勇軍は、我々が幹部みたいな感じになってますけど、全然違くて、総統が一番偉い方で、オットナー参謀長は幹部で、義勇軍の皆さんは全国にいらっしゃるけど、ボクは一番下ですからね。(笑)総統の近くで総統のお言葉を聞いてますけど、一番知らない人間ですからね。
総統を支える義勇軍は、JFLのどこかのチームが天皇杯を勝ち進んだら、そのチームをみんなで応援して。「革命なる!」とか言ってるのが義勇軍であって、だから、ユニフォームが違うから敵だとか、そういうのと違った目線を提示したいということを総統閣下はおっしゃられてるわけです。
(総統) そういうのもずっとやってきたんですよ。毎年天皇杯でJFLの最後まで残ったチームを義勇軍が応援しようってことをやったりしてたんだけど、最初は、「なんだ、他のチームの色が入ってるぞ」ってすごいネガティブに捉える人も居たんだけど、昨年もホンダFCとFC東京の試合で、義勇軍がばぁ〜と行ったんだけど、それを見てたJFLの人たちが「あれ良いねぇ〜」って。
(参謀長) JFLの偉い人たちが「あれは素晴らしい」って。ああいう文化は素晴らしいって。
(総統) それこそJリーグにはない文化だし、下部リーグでもできることだし、アマチュアっていう言葉は、競技を愛するという意味であって、競技を愛する奴らが集まってくること。
(曹長) そこに説得力があるんですよね。我々がやってる活動もひとつもお金になってないんですよ。(笑)
だから本を出すことも、それじゃ説得力がなくなっちゃうから、本を出してお金稼いでるみたいになっちゃうから止めましょうって言ってたんですけど、でもこの活動を広めるためには名刺がいるってことになって、それが受賞につながったんですけど、一番大事な、我々がアマチュアだってことを失ってしまってはいけないと。
革命家であり、最大の説得力。営利活動に移った瞬間終わりですよ。って。
(参謀長) それはね、大事にしなきゃいけない。あと、今後こうしたいなっていうのは、やっぱり、全国には、まだ一人サポとかいるわけですよ。ちっちゃいクラブを一人で一生懸命応援している人いて。ボクらからすれば、そういう人が同志な訳ですよ。そういう人たちをもっと引き上げたいんですよ。
だから、どうしてもローカルに住む、少人数のサポ集団は、周りにはもうJリーグの何千人とか何万人のサポーターに囲まれちゃってるから、自分たちなんて日陰者だし、目立たないように、ひっそりこっそり応援してますみたいな状態だから。
ボクは、そこは胸を張ってもいいんじゃないのって。Jリーグを目指してないクラブを応援してるからといって、全然卑下することもないでしょ。
(総統) 我々のところに入ってくる文化は、アーセナルのゴール裏だとか、バイエルンのゴール裏だとか、わぁーって、何万人もいるスタジアムばっかり見るけど、そうじゃないクラブの方が数は絶対多いし、そういう成り立ちがあることを報道しないもんね。
(参謀長) 最近、ユーチューブでドイツ7部リーグって検索したら、7部の最終戦がやってて、800人とか入ってるんですよ。どっちが勝ったって何にも起こらないですよ。(笑)どうせまた来年7部なんだし。
でも村対村ですごい盛り上がってるんですよ。全然殺伐してなくて。ドイツ人がビール飲みながらゲラゲラ笑って。でも日本人には、ある一定のバイアスかかった情報しか届かないから、ドイツではバイエルンだとか代表だとか、そういうところしか見えなくてね。
ドイツもそうだし、ブラジルもそうだし、日本だってそうなれればいいじゃんというだけで。
(総統) こういう活動をしていくと、やっぱりメディアの人とか、ライターとかは特にそうなんだけど、サッカーが縮小しちゃってるから、より売れるものをとか、より見栄えのいいものを書こうとするじゃないですか。
Jリーグに嫌われないようにしようとか、クラブに嫌われないようにしようとか、サポーターに嫌われないみたいな論調になってくると、ますます、おかしなことになっちゃって。ライターさんに聞くと、これオフレコなんですよとか、書きたいけど描けないとか、いっぱいあるんですよ。
(曹長) だから我々はプロになっちゃいけないんですよ。
(参謀長) サッカーのサポーターって、みんなそれぞれ仕事しながらサポーターやってるわけで、別にサッカーで飯食ってるわけじゃないでしょ。だからこそ表現できることがあるんですよ。
サポーターってこうだよね。っていうステレオタイプにしないで、つまりJリーグのサポーターがステレオタイプって感じになっちゃうんだけど、別にいいじゃんって。小さいクラブを応援するサポーターがいたって。そこを表現できる人がもっともっと増えて欲しいと思いますね。
(総統) このやり方がスマッシュしたのは偶然で、6年前、私が山雅のゴール裏に乱入したんですよ。それもまた偶然で。なんか面白いことができればいいなぁと思ってたんですけど、ホンダロックのサポーターがバスの到着が遅れちゃって、キックオフ前に自分しかいない。
相手は3千人くらいいて、それじゃ何もできないなと思って、とりあえず赤い格好してバァって入っていったら、Jリーグみたいに止められるかなぁ、二度とたすきは渡さねーぞみたいな茶番があればいいかなと思ってたら、スルスルスル〜って、「あ、どうぞこっちです。」みたいになってね。「あ、いいんすか」みたいな感じになって(笑)すんなりとゴール裏にきちゃったんですよ。
で、ゴール裏でアジテーションして。僕が頼んだわけでもなんでもないんだけど、それが動画で上がっちゃって、ブワッて拡散して、コイツなんなんだって感じになってね。その時に「こんなJFLなんて誰も宣伝しねーんだから、自分たちがもっと発信していかないとダメなんだよ!」と言ったのが、期せずしてそうなっちゃった。
やっぱり発信していくということが、良いも悪いも反響が増えてきますよね。反対も増えるけど、賛成って奴が増えていくことの方が大きんですよ。一人でやってた人間が、四人で戦える、10人で戦える、100人で戦える。しかも、相手チームがそうだそうだって彼の言う通りだって言ってもらったことが大きいですよね。このやり方でいいんだ。じゃあもっと際立ってやろうって。
――それでは最後に、活動の成果と展望をお聞かせください。
(総統) 総統がこう言ってるよっていうのが、良いも悪いも拡大解釈されて広がってきてるという実感はあります。それぞれのチームの、例えば不良みたいな奴が仕切ってるサポーターグループもいるかもしれないし、フロントが全く理解してないチームもあるかもしれないし、一人サポって言ってるけど、そのチーム自体とうまくいっていない人もいっぱいいるんですよ。
そういう人たちが、それぞれ自分のチームとアジャストして、広めてってくれればいいなと思っていて。手段はなんでもいいと思うんですよ。無償の愛。「今そこにあるサッカーを愛する。」自分の子供を愛するようなベージックなところに立ち返ってほしい。
良いも悪いも、鹿島とか浦和とかマリノスとか、もう出来上がっちゃってるクラブこそ変わっていかないと。地方のクラブは、Jリーグに毒される前に、しっかりそういうのが出来ていれば、Jリーグというバイアスがかかっていったとしても、多分伸びてくるだろうなと思っている。
――総統の思想を受け継ぐ、後継者は育ってきていますか?
(総統) JFLだけでいうと、名物サポーターもいっぱいいて、昔は自分が目立とうとする奴らが多かった。でも今は、自分が目立つことでクラブの利益になることを自覚して目立とうとする人が多くなってきた。
(参謀長) そこに影響された、目指せJFLみたいな地域リーグのクラブの中からも、ポツポツ出てくるんですよ。
この現象を違う側面から見ると、JFLがそういうことにすごく感謝して認めてるんですよ。リーグを盛り上げようとしている小さなローカルクラブの一生懸命応援するサポーターに感謝してるんですよ。JFLのお偉いさんたちは、こういう人たちをなんとか引き上げたいって言ってくれてるんです。でもこんなの5年前なら考えられなかった。
(総統) JFLと超喧嘩したことあるんですよ。
(曹長) もう止めてくれってね。
(参謀長)要注意人物だって言われていたのに、
(総統) 手配書回ってたしね。(笑)
錦糸町フットボール義勇軍 |
2014年春、日本のフットボールカルチャーに『革命』を起こすべく立ち上がった革命戦士。偉大なる伝道師『ロック総統』、その忠実なるしもべ『ライト曹長』、策士『オットナー参謀長』を中心とする、居住地域と支援蹴球団の枠に囚われない全国の同志義勇兵の総称。今夜も人知れず地下アジトで傷をなめあう非力なレジスタンス集団。その崇高なる理想は他ならぬ日本サッカー全体の『エンタメ的発展』。経費は録音用革命電池と革命飲料のみ。Podcast収録のために、都内の雑音なき録音可能スポットを求めて日夜さまよう。おじさん達。体力なし。 |
著書『KFG蹴球文化論』ラジオNIKKEIレギュラー番組『蹴球革命ラヂヲ』雑誌『フットボール批評』で連載。[ブログ]革命! 錦糸町フットボール義勇軍 |
Podcast:革命!錦糸町フットボール義勇軍
「結集せよ同志諸君!これは革命である!」我が国のフットボール文化を憂い立ち上がった2人の革命戦士。今宵も錦糸町アジトよりこっそり地下放送…
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<了>
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