サッカー馬鹿

2017.12.23

ロック総統が語る”Jリーグ論” 〜プロ風実業団”と“実業団風プロ〜錦糸町フットボール義勇軍 最新刊『KFG蹴球文化論(参)〜革命行脚編〜』

ロック総統が今後期待しているクラブとは?

”知る人ぞ知る、知らない人は全く知らない”ロック総統

――そういった意味を踏まえて、ロック総統から見て今後期待できるクラブはあるのでしょうか。

(ロック総統) 頑張って欲しいなぁというクラブは大宮と今度J1に上がる長崎ですかね。

 

――長崎は今シーズン、高田社長の就任が話題になりましたね。

(ロック総統) そうですね。ただサッカーはそんなに甘くないので。高田さんも何億も何十億も投資始めたら、本業が傾いちゃいますよ。Jリーグは利益還元祭もなく金利手数料も払ってくれるほど気前も良くないので(笑)

 

――大宮はなぜでしょうか?

(ロック総統) 大宮は単純に石井(忠正元鹿島監督)が行ったからです。大宮も本当にもったいないクラブですよ。ブレちゃうんです。お金があるのに。いや、お金があるからブレちゃうんだよな。お金はあるのに使いきれていない。浦和と対照的なクラブの色が出ているのに。NTTグループが、湯水のようにお金を使いながら儲からない事業を何とかいろいろ工夫していて、浦和にはできないような海外戦略みたいなことをやっているのに。いまいち成績も人気もイケてない。でも、僕はどちらかというとイケてないクラブが好きなんですよ。隙のないチームはあんまり面白くない。頑張ってほしいのは、隙のあるチームですよ。

“プロ風実業団”と“実業団風プロ”

インタビューが行われた神奈川県大和市の美容室『ガナーズ』

――レイソルなんかは隙の無いクラブに入るんですかね。

(ロック総統) レイソルこそが日立の実業団ですからね。だって「世界ふしぎ発見」の最後のエンドロールで日立グループは“柏レイソルを応援しています”って出るじゃないですか。アレ、めちゃくちゃ違和感ありますよ。ほらね実業団って感じ。日本には、実業団なのにプロクラブと名乗る“プロ風実業団”、“実業団風プロ”が多すぎる。ガンバもそうですし、セレッソもそうだし、名古屋も大宮も磐田もそうでしょう。プロクラブっぽいプロクラブは鹿島と浦和だけだと思いますね。

僕は鹿島が出てきた頃からずっと定点観測しているので、鹿島の良さも悪さも限界も何となく見えていますが、他のチームのことは、鹿島ほどあんまりよく知らないんですが、長年見てきた勘が働きます。個々の補強はダメだなと・・。まぁヴィッセルがポドルスキー連れてきたよ、それで動員がめちゃくちゃ増えているのかというとそんなことはないですよね。ただあそこは楽天さんがサッカーをコンテンツにして儲けようとしているところがあるのでそれはそれでいいとは思うけど、まあ、サッカーは儲かんないですよ。

 

――楽天はバルサの胸スポンサーにもなりましたしね。

(ロック総統) そういった意味では、サッカーをコンテンツにして儲けようするベンチャー企業ならおもしろいですよね。楽天さんがベンチャー企業かどうかは別として、そういう右から左へ億単位の金を自由に動かすことが出来る金持ちがいない。日本のクラブは一人の大金持ちが私有財産の様にクラブを持つということができないんですよ。

日本では個人ではなく会社が一番金を持っている。だから実業団のような子会社みたいになってしまうのはある意味しょうがない。イタリアとかイングランドもそうですけど、富豪が自分のサッカーチームを持っているんですよね。それをやっているのがおそらくヴィッセルだけなので、そういう意味ではちょっと毛色が変わってて面白いですよね。

80年代後半から90年代初頭のいわゆる実業団というリーグでやっていた頃、クラブは広告塔であり福利厚生でした。実業団と聞くとちょっと古臭いじゃないですか。だけど日本のスポーツの多くはほぼ実業団ですよ。終身雇用のシステムの中で実業団という形態はスポーツを振興させる意味では悪くない選択肢だと思うんです。日本ならでは良いシステムですよ。

 

――特有なんですね。

(ロック総統) 日本特有ですよ。日本がメキシコ五輪で銅メダルを獲ったことをよく賛美するじゃないですか。当時アマチュアという形ではイングランドやドイツやブラジルではメシが食えないんですよ。だけど当時のチェコスロバキアやルーマニアやポーランド、ソ連や東ドイツといった東ヨーロッパの国々は、国からのお給料でメシが食える。それをステートアマ、国のアマチュアという意味ですが、アマチュアの名前でカモフラージュされたプロですよ。他に仕事をしていないのですから。

当時の日本は、釜本さんがヤンマーに所属していました。それは実業団がお金を払っているプロですよね。セミプロです。だからあの時メダルを獲るということはそれほど不思議なことではない。アマチュアの名前で飯が食えていたサッカー選手は、世界で日本とソ連を中心とする共産諸国だけでした。そのことをすっかり忘れてしまっているのですよ。前にも本に書きましたけど、Jリーグが実業団からプロクラブを作った部分はサッカー振興ひとつの功績としてはあったかもしれないけれど、実業団サッカーを絶滅危惧種にしてしまった部分においては結構罪深いと思います。

実業団を残しつつ、Jリーグとの両方の発展をさせていくことをしないでJリーグだから応援するという。特に地方に多いのですが、別にアマチュアだから、実業団だから、Jリーグを目指さないから、そのサッカーがダメかといったら、当然そんなことは無いし、実業団がもっと地域に貢献できるやり方さえあればもっとできたはずです。今のJリーグを中心とする考えはそこを大きくはき違えている。

 

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