第2次専スタブームの到来
――そしてここに来て、再び“専スタ・2次ブーム”が訪れている、なぜでしょう?
(長岡)やはり一つはラグビーワールドカップ、そして東京オリンピックもそうですし、あとはJリーグの加盟クラブが25年の経過とともにU-23チームを除いて51チームまで増えました。そういう意味においてもサッカーにかけられている期待の表れではないでしょうか。
私が子供の頃は、野球をやっている子供が多くて、サッカーをやっている子供はほとんどいませんでしたが、今では子供さんのチームに、お父さんコーチを含め指導者も合わせて増えて、環境も様変わりしました。競技人口の増加も、一因になっていると思います。しかし、アマチュアの方たちにとっては、試合時の集客という部分は、あまり重要ではありませんが、プロはそうはいきません。試合がクラブを運営するための収入源です。収入を増やすために、試合数を劇的に増やすことはできませんから、そうなってくると一つの試合でどれだけ稼ぎだせるのかということになってくる。
その点でもヨーロッパのトレンドが参考になります。ドイツも昔は専用スタジアムではなく陸上競技場と併設が一般的でした。ケルンもフランクフルトもシャルケも、あのバイエルン・ミュンヘンもそうでした。ドルトムントくらいでしたね、サッカー専用は。
そしてワールドカップのレギュレーションが、変更になった影響も大きい。2002年ワールドカップ当時は、陸上トラックの中に何とか収めることができる芝生のサイズ(縦115m✕横78m)でしたが、2006年ドイツ大会の時には、芝生のサイズが縦130mという規定変更があり、それでは陸上トラックの中に収まらなくなりました。FIFAは、ウォーミングアップの場所まで、芝生にすることを指示しました。
――なるほど。
(長岡) そういう背景も含めて、専用スタジアムの会場を用意しなければいけないという流れにもなりました。それにクラブ側もチャンピオンズリーグをはじめとしたサッカーにおけるビジネス活用に力を注ぎ始めました。客単価を上げるという意味でもビューボックスやVIP席を設置するのもそうですし、あらゆる側面での質の向上を手がけるようになってきた。快適に観戦することを目指す、これがヨーロッパの現在のトレンドですね。そうすることによって、試合で得られる収入を大幅に上げて、選手を獲得し、更なるスタジアムの快適化へ投資することができるようになりました。
――日本はそこを追いかけているわけですね。昨今では市立吹田サッカースタジアム(2016年2月)を皮切りに続々と専用スタジアムが出来上がっていますよね。
(長岡) 新設したミクニワールド北九州スタジアム(2017年2月)、あとはヤンマーのキンチョウスタジアムは、元々あるスタジアムを手直しすることにしています。そして今、京都が動き出していますね。そして甲府。あとは山形、秋田ですね。自治体を交えて、検討委員会みたいなものが立ち上がって動き出していると聞いています。
――平塚(湘南ベルマーレのホーム)にも気配を感じますね。
(長岡) 検討委員会で候補地がいくつか上がっているところですね。ただニュースを見る限り、昨年(2017年11月)にホームタウンにも加わった鎌倉市がスタジアムを作るのではないかという話も挙がっています。
――やはり専スタのトレンドが追い風になっているのですね。
(長岡) ただし、50年後、果たしてサッカーのみのスタジアムでは無理が生じる可能性が懸念されます。ますます少子高齢化が進んでいくことでしょうし。地元のプロチームがフルに使用したとしてもせいぜい週に二日程度、問題は残りの五日間、試合の無い時にどう活用するのか。すでにヨーロッパではそういう方向へシフトしようとしています。
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