ヨーロッパとの差は20年
――これまでのお話を聞いていると、スタジアム建設は行政に委ねないと実現しないという前提を感じますが、ヨーロッパではクラブ自前のスタジアムが増えてきていますよね?
(長岡) バイエルンに関しては、行政ではなくアリアンツという金融グループの企業が主導となり『アリアンツアレーナ』が完成しました。アーセナルにしてもエミレーツ航空が、ネーミングライツスポンサーになって、スタジアムの軍資金をいただいているわけです。
日本ではガンバ大阪が『市立吹田サッカースタジアム』の建設の際に、寄付を集めることで行政の持ち出しをできる限り少なくしたという事例もありますし、今年(2018年)の4月からヴィッセル神戸のホームスタジアム『ノエビアスタジアム』もヴィッセル神戸が指定管理になって収入増のために投資するという発表もされています。
――行政頼みではなく、企業とタッグを組むという流れになってきているのですね。
(長岡) サッカーではないけれど、プロ野球のDeNAベイスターズが横浜スタジアムの経営権を買いました。そしてエンターテイメント性を打ち出し満席のスタンドを作り出すことに成功しました。そして現在、スタジアムの改修増席に80億円の投資をしている。回収の目処が立っているから投資するのでしょう。
今の時代、エンターテインメント産業への投資が盛んになってきています。例えば、ぴあが横浜にコンサート会場をつくる、そこに三菱地所が加わる。それぞれの会社が新しい収入の糸口を探している。これまでのようにマンションを建設する、分譲、あるいは賃貸するというだけでは確実に先細りする。持っている土地をどう有効活用するか、他社のノウハウとどう組み合わせるか、共用という形で新しい事業を模索しているのだと思います。
――やはりサッカー専用スタジアムでの観戦はサッカーファンにとって待望ですよね。
(長岡) やはり専用スタジアムでの観戦は楽しいですよね。グラウンドに対して並行なり真正面に観られるわけじゃないですか。そこに陸上トラックがないのですから。もう一つは選手との距離感ですね。相手のチームにとっては脅威ですよ。例えば、香川選手のいるボルシア・ドルトムントの本拠地『ジグナル・イドゥナ・パルク』あそこのスタジアムはスタンドが壁に見えますから。相手にしてみれば相当威圧されますよね。そういう効果もある。
――そしてやはり生で見る芝の美しさに惚れ惚れします。
(長岡) そうですね、私の経験でいうと96年にイングランドへ視察に行った時に、新設される『ウェンブリー・スタジアム』にハイブリッド芝を採用するというお話を伺いました。ハイブリッドと聞くと人工芝だと勘違いされがちですが、実はそうではありません。芝を引き抜かれないように人工繊維で押さえつけるようなものなんです。Jリーグでは2017年にようやく採用されたところです。20年のタイムラグがあります。彼等はどんどん先に行っていますから、もっと差は開いているかもしれません。
芝生がほじくり返らないという部分でも、ラグビーと使用をシェアできますしね。やはり観客にしてみれば、デコボコなグラウンドとか、芝生がハゲハゲなグラウンドで観たくはないでしょうから。緑の美しい、気持ち良いピッチをみなさん期待して来られるわけですから。それに当然、プレーにも影響しますよね。デコボコなグラウンドではバルサのような鮮やかなパスサッカーは観られませんからね。
――本日はお忙しい中ありがとうございました。
長岡茂(ながおか・しげる) |
Espoir Sport株式会社代表取締役。鹿島アントラーズ、アルビレックス新潟、湘南ベルマーレ、サガン鳥栖、ギラヴァンツ北九州と5つのJリーグクラブに従事。FIFAワールドカップ日本組織委員、茨城会場の運営責任者を歴任。2017年スペリオ城北(東京都2部)スーパーバイザーとして活動 |
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