サッカー馬鹿

2020.5.15

人気サッカー漫画『アオアシ』に託した日本サッカーの未来像〜指導者育成が鍵を握る〜〈アオアシ取材・原案協力 スポーツジャーナリスト上野直彦 インタビュー〉

世界におけるユース世代の現在地

――日本サッカーの現在地は世界的に見てどのあたりだとお考えですか。

(上野) サッカー文化的に言うと、日本は全然定着してないように思います。やはり日本は野球が強いのかなと思いますね。ラ・リーガの日本事務所の方と話す機会があって、その方が仰っていたのは、日本の欠点はグラスルーツの面が弱いことだと言っていました。※グラスルーツ=草の根

 

――グラスルーツですか?

(上野) はい。例を挙げると、どこかの公園で親子がサッカーしたり、人を集めてリフティング、パスをしたりだとか、何でもいいんですよ。グラスルーツ、草の根が少ない。そこが最大のポイントであり課題かなって思います。

 

――最近は、アンダー世代の活躍が目覚ましいですが、そのあたりも少しずつ変わってきているのですか?

(上野) 僕が今、注目しているのは、DMMさんが海外チームの所有権を持って、自国の選手を送り込む強化や育成方法です。あれは極めて正しいと思います。中国や韓国でも既にやっていることです。日本の場合は、指導者を海外に送り込み、それをフィードバックすることが大事だと思います。今年、ロシアワールドカップで盛り上がったじゃないですか。近年、下の世代に対する力の入れ方の質が変わってきたなと思います。世界のリアルを見てきて、それをしっかりと落とし込んでいるなと感じます。スペインで活躍する坪井健太郎さんをはじめ、若い指導者も育ってきているので、これから楽しみだなと思いますね。

 

――これから僕たちは、ユースのどういうところを見ていけば良いですか?

(上野) あんまり難しく考えず、漫画にも描かれているように、この選手気に入った!と思ったら追いかけてみる、それで良いと思うんですよ。カープ女子ならぬ、ユース女子というのがいまして。

 

――ユース女子というのがあるのですか?

(上野) ユースだけではないですけど、マリノスさん、FC東京さんにはいたんですよ。例えば、「ユース時代、武藤(嘉紀)がサイドバックの頃から目をつけてました」という人も結構いるし、「斎藤学選手のユース時代のゴールを今でも覚えています」という方がいたりしますね。そういう、未来の日本代表を探すという面白さはユースならではじゃないですか。それを皆さんに知ってほしいですね。

 

――ユースの選手が、プロ選手になれる割合はどれくらいなのでしょうか。

(上野) 1学年15人くらいの選手がいて、トップチームに上がれるのは平均的に考えて1人か、2人です。それでだめだった場合は、大学を経由してプロを目指すという選手もたくさんいます。もちろんそうやって、今活躍している選手もいますしね。そのくらいユースからトップチームに上がることは、狭き門ですね。

 

――落ちてしまった選手が、また這い上がってくるというのが面白いですよね。

(上野) そうですね。中村俊輔選手や、本田圭佑選手はユースに上がれなくて、高校経由で大活躍しています。このように10代で挫折を経験して精神力が磨かれるパターンもありますから、ルートは本当に人それぞれですよね。

 

――高校サッカー経験者が、日本代表の精神的支柱になるという説は、一昔前にありましたよね。実際のところどうですか。

(上野) 今も「ユース出身は打たれ弱いよね」などと言われていますね。高校サッカー出身の選手に話を聞いたときも、「負けても笑っているようなユースには、絶対負けたくなかった!」と言っていましたね。それくらい、高体連とユースは水と油ですよね。今も、ちょっと打たれ弱いのかなという傾向は感じますね。そうはいっても、コンサドーレ札幌ユース出身の西大伍選手のように、ユース出身の選手でACLのような大舞台で結果を出せる選手もいます。だから一概には言えませんね。

 

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