日本サッカー躍進のヒント
――最後になりますが、上野さんがこれまで取材などで積み上げてきた情報から、今後の日本サッカー界の未来予想をお聞きしたいです。
(上野) 僕には3つの夢があります。1つ目は、なでしこがオリンピックで金メダルを獲得すること。2つ目は男子がワールドカップで優勝すること。3つ目が、UEFAチャンピオンズリーグの優勝監督が日本人。僕はこの3つを実現してほしいと願っています。レアルマドリードを率いている日本人監督。バルセロナを率いている日本人監督。ユベントスを率いている日本人監督。この夢を実現させるには、6・3・3制の教育制度を変える必要性もあるのではと思っています。
日本人は海外の人と比べて、考える習慣があまりないように思います。例えば、小学校で義務教育を終わりにすると、進路について考えるじゃないですか。「俺、小学校卒業したら職人になりたい!」「私は美容師になりたい!」など、このような夢を語る人が出て来るかもしれません。そうすると子供は、親や友達と議論したりして考えるじゃないですか。10歳、11歳の年齢で、考えるということは非常に大切なことです。ヨーロッパではこれが当たり前で日本にはない。それなのに親やコーチは「考えてサッカーをしましょう。」と言うのですけど、それは一部の子を除いて難しいですよね。
亡くなられた2002日韓ワールドカップ招致に尽力された元電通の広瀬一郎さんが面白いお話をされていました。「考える子供を育てましょう」という講演会での出来事です。その講演が始まる前に広瀬さんが「僕から学びたいことを3つ教えてください。5分後にランダムに当てさせてもらいます。」と言いました。そうすると会場は「そんなこと考えて講演会には来ていない」と言ってざわざわとしました。そうすると広瀬さんが「でしょ?何も考えないで来てるでしょう?その状態で、子供に考えさせるのは無理ですよ。」と言ったのが、的を射ているなと思いましたね。
じゃあどうするのが良いのがと広瀬さんに聞いたら、「質問力を子供に身に着けさせろ。どんなセミナー、講演、授業に行っても1日1回は質問するような子供に育てろ」と言っていました。そういうピッチ以外のところを変えないと、ここから上に行くのは難しいと思います。なでしこが成功したのは、自分たちで考えるしかなかったからです。
川澄 奈穂美選手は小学校時代、監督不在時は自分たちでフォーメーションを考えて、選手交代をしていました。その後、ワールドカップで優勝を決めたアメリカとの決勝戦、延長戦のギリギリのところで彼女は監督に「丸山 桂里奈選手とポジションを変えてください」と佐々木監督に直談判したことが、間接的にあの澤選手の同点ゴールに結びつきました。のちに美談として取り上げられたのですが、本人にとっては普通のことだったのです。これは1つの日本代表が躍進するヒントになるエピソードなのかなと思いますね。
――まさしく小中学生年代が大切なのですね。今後の物語の展開についてですが・・・
(上野) それはもちろんノーコメントですね(笑) なのでみなさん、小林先生の頭に広がっているストーリーを楽しみにしていてください。ユースの第一の目標は、代表に選出されるよりも、プロ選手になることです。葦人君はまだまだ粗削りですが、僕もこれからが楽しみですよ。これからも、青井葦人君の活躍に期待していて下さい!
――本日はお忙しい中ありがとうございました。
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上野 直彦(うえの なおひこ) |
兵庫県生まれ |
AGI Sports Managemet (株) 代表取締役/早稲田大学院/早稲田大スポーツビジネス研究所・招聘研究員ALiSアンバサダー |
ロンドン在住の時にサッカーのプレミアリーグ化に直面しスポーツビジネスの記事を書く。女子サッカー、育成年代、Jクラブの下部組織の取材を行っている。『Number』『AERA』『ZONE』『VOICE』などで執筆。テレビ・ラジオ番組にも出演。 『スポーツビジネスの未来2018ー2027』(日経BP) 『なでしこの誓い』(学研) 『なでしこのキセキ 川澄奈穂美物語』(小学館)など。週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)で好評連載中『アオアシ』では原案・取材担当、漫画大賞2017では4位を獲得した。一昨年から“スポーツ × ブロックチェーン”に取り組んでおり、ALIS、PoliPoli、Engateでアンバサダーに就任して活動。 また、母校である早稲田大学のスポーツビネス研究所の招聘研究員も務めている。現在はこの二つの軸に活動している。Twitterアカウントは@Nao_Ueno |
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