常勝鹿島のチーム哲学
――浦和が例に挙がったので、話題を浦和へ移したいのですが、圧倒的な観客動員を誇る浦和ですが、その運営方法に対して揶揄する声をよく聞きます。25周年を迎えた浦和レッズについてどんな感想をお持ちでしょうか。
(ロック総統) 浦和に対する批判の半分ぐらいはやっかみだと思う。Jリーグの中で唯一プロクラブとして観客動員でメシが食えるクラブは浦和だけなので。強い者に対するやっかみです。
J リーグのことを話す時は鹿島を目線で話すのですが、この25年の中で鹿島はリーグ優勝を含めて星の数が20個近く(正式には19個)ついている。常勝鹿島と言われていると、さえない年でも『今年はナビスコカップの1個しかとれなくて恥ずかしいです。ゴメンなさい。』と最後にサポーターに詫びるという。カップ戦さえも取れないクラブがゴロゴロいるのに、そんなことを言っているクラブは鹿島だけ、これはもう別格ですよ。それは、好きも嫌いもなくサッカーマンとして冷静に評価しなければならない。
その鹿島は余所から選手を強奪してくるような、いわゆるそういうチームの作り方をしていないですよね。ストロングポイントを伸ばし、弱い所をブラジル人で補強し、若手をしっかり育てる、それがずっと続いているから大崩れしない。浦和は言うまでもなく、毎年のように余所から選手を獲ってくる、監督も余所から獲ってくる、その度に戦術も変わる、やり方も変わる、外国人も変わる。ビルド&クラッシュをずっとやってきている。ACLを獲ったことはすごいなとは思いますけど、鹿島と浦和の星の数の差を考えると、浦和はフロントが無能だと思う。金があるから知恵を使わない。そこが鹿島と浦和の大きな差です。まあ、サッカーに限らず金を持っている奴は知恵を使わないこれは世の常です。逆に金を持っていないと知恵を使わざるを得ない。ホストでも人気もあって金もあるホストより、貧乏なホストほど頭使っていろいろマメに立ち回りますからね(笑)
鹿島はJ リーグクラブがある街の中で一番人口が少ないんですよ。どんなに頑張っても、観客動員で興行収入を上げていくことはもう限界だとわかっているので、いわゆる強いサッカーをやっていくことで客を繋ぎとめていく、スポンサーを繋ぎとめていく。そこが生命線なんですね。逆に言えば常勝でしか繋ぎとめられないとも言えます。逆に浦和はあれだけのコアなお客さんをどう満足させるかという、鹿島より難しい運営を迫られてるとは思うけど、それにしても、もっとなんとかなんないのかなと思いますね。
良いクラブなんですけどね。(浦和は。)だから僕はむしろサポーターからのプレッシャーが強すぎてフロントが潰れちゃっているんだと思います。少なくとも鹿島においては、サポーターがフロントと当たっているフリはしますけど、それはあくまでもプロレスなので。お前らここはこうだからなっていう風にちゃんとやり取りはできています。だから荒れても出入り禁止になることは無いですから。出入り禁止を作っちゃうと大勢の人が抵触して一万人くらい動員が減ってしまう可能性があるので(笑)
どうして他のクラブは鹿島のようになりきれないのかと思うんですよ。今シーズンも最終節までフロンターレとリーグ優勝を争ったじゃないですか。鹿島にはビックネームといわれる選手がいないですよ、金崎か昌子ぐらいでしょ。柴崎も抜けちゃって、誰も突出してない。ブラジル人においても、90年代に所属していた、レオナルドやジョルジーニョやビスマルクのような、ぶっちぎりにうまかったブラジル人はいないんですよ。コイツに合わせれば大丈夫っていうやつもいない。それでもあの順位まで持っていけるという。何で他のクラブができないのか。本当に不思議に思いますね。なんでチームの哲学が作られないのか?それを通すことが出来ないのかということ。
鹿島の強化部長はずっと変わっていません。鈴木満さんという人が強化部長ですが、あの人は別にどこかの大きなクラブに所属していたわけじゃなく、住友金属から生え抜きなんですよ。だから鹿島の哲学はこうだというところをずっと言ってらっしゃる。
何も変わらない。これも本に書いてありますけれども、年末の『忠臣蔵』と同じようにスタイルは変わらないんです。大石内蔵助役が誰でも、吉良上野介役が誰でも、キャストが変わろうと基本、脚本は変わらないじゃないですか。いきなり吉良上野介が発狂して大石内蔵助を滅多斬りにして暴れるようなことはないですよね(笑)チーム哲学さえしっかりあればシステムに必要な役者を呼べばいい。チーム哲学が無くても、お金さえあれば、タイプが違うからと「いらね」と割り切れない。「とりあえず、アイツ取っちゃおうかなとかね」色気出しちゃうんですよね。
→新刊『KFG蹴球文化論(参)〜革命的行脚編〜』と特設WEBページ
――本日はお忙しい中ありがとうございました。
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錦糸町フットボール義勇軍 |
2014年春、日本のフットボールカルチャーに『革命』を起こすべく立ち上がった革命戦士。偉大なる伝道師『ロック総統』、その忠実なるしもべ『ライト曹長』、策士『オットナー参謀長』を中心とする、居住地域と支援蹴球団の枠に囚われない全国の同志義勇兵の総称。今夜も人知れず地下アジトで傷をなめあう非力なレジスタンス集団。その崇高なる理想は他ならぬ日本サッカー全体の『エンタメ的発展』。経費は録音用革命電池と革命飲料のみ。Podcast収録のために、都内の雑音なき録音可能スポットを求めて日夜さまよう。おじさん達。体力なし。 |
著書『KFG蹴球文化論』ラジオNIKKEIレギュラー番組『蹴球革命ラヂヲ』雑誌『フットボール批評』で連載。[ブログ]革命! 錦糸町フットボール義勇軍 |
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